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【五輪を語る 産経新聞特別記者・佐野慎輔】日本の思いをしっかり世界へ

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リオデジャネイロ五輪の閉会式で行われた「フラッグ・ハンドオーバー・セレモニー」。国際オリンピック委員会のバッハ会長(中央)から五輪旗を引き継いだ東京都の小池知事  順当な、というか、いい選択だなと思う。

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 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開会式、閉会式を企画演出する8人のチームである。昨年暮れから式典コンセプトを検討してきたメンバーが横滑り。引き続き盛り上げを図る。

 このうち5人は、評価の高かった2016年リオデジャネイロ大会のオリンピック、パラリンピック閉会式での「フラッグ・ハンドオーバー・セレモニー(旗の引き継ぎ式)」の企画演出に携わった。継続と経験にチームワークが加わった強力な布陣である。

 学生時代、能のサークルにいた。卒論は「世阿弥の修羅能」。一日の大半を部室で過ごし、少ない生活費を工面しては能楽堂に通い詰めた。

 能に限らず狂言もよく観た。折り目正しさのなかにある飄逸と洒脱(しゃだつ)、歯切れのよい口跡。野村万蔵さんが好きだった。

 芸風は萬、万作という人間国宝兄弟に受け継がれ、万作の長男、萬斎に面影をみる。いや、あの当時すでに、武司という本名で舞台に立っていた少年狂言師の非凡な才能に、目を見張ったことを覚えている。

 その萬斎が2020年大会の式典を総合統括する。早くから「萬斎プロデューサー」を口にしていた者としては、より期待が膨らむ。

 彼は野村家当主、万蔵の隠居名跡、萬斎を襲名したあと、1年間、ロンドンでシェークスピアを学んだ。その後は成果を試すべく、日本伝統の芸と西洋の舞台芸術との融和に取り組んでいる。

 東西舞台芸術の融合に関しては当時も、「世阿弥以来の」と形容される天才能役者、観世寿夫を中心に、父の万作や伯父の萬(当時は万之丞)たちが、さまざま意欲的な試みを行っていた。武司少年にも少なからず影響を与えたように思う。

 「鎮魂と再生の精神を生かし、シンプルかつ和の精神に富んだものにしたい」。萬斎は記者会見で抱負をそう述べた。

 いうまでもなく、能狂言は「鎮魂」と「再生」が根底にある。そこにシェークスピア劇の人間観察をどう生かすのか。

 式典演出では災害からの復興が平和や共生とともに大きなコンセプトとなる。期間中の8月6日は広島、閉会式にあたる9日は長崎に原爆が投下された日でもある。

 演出チームには、日本の思いをしっかり世界に伝えてもらいたい。

佐野 慎輔(さの・しんすけ)

 1954(昭和29)年生まれ、64歳。富山・高岡市出身。早大卒。スポーツ記者歴30年。五輪を5大会取材。産経新聞運動部長やシドニー支局長、サンケイスポーツ代表などを経て、2014年6月から現職。日本オリンピックアカデミーや笹川スポーツ財団の理事も務めている。

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