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森保ジャパン、決して忘れることのできない紅白戦

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森保ジャパン、決して忘れることのできない紅白戦 ■地震の影響が残る中

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 火花が散るような激しい紅白戦を終えた後、クールダウンを終えてクラブハウス前で休む選手を横目に、槙野智章が代表チームスタッフに何かを相談し始めた。

 そして「いいよね?」、「いいよ」という簡単なやり取りのあと、手を大きく振りながらチームメートに「いこう!いこう!」と声を掛けて立ち上がるように促す。そうして向かった先は、練習グラウンドのバックスタンド側にあった観覧席。地震の影響で大変な状況にもかかわらず、日本代表チームの練習見学に足を運んだ約200人のファンのところだった。

 「みんなもまだグラウンドにいましたし、嫌だという選手は一人もいなかったので。『じゃあ、みんなでいこう!』ってチームメートのみんなも言ってくれました」

 槙野の呼び掛けに応える形で座っていた選手たちが立ち上がり、森保一監督も一緒になって観覧席へ向かう。代表チームは大歓声と笑顔で迎え入れられ、広がって座っていたファンが中央へ集まり、オフィシャルカメラマンによる記念撮影が行われることになった。

 この日、本来であれば札幌ドームで森保ジャパンの初陣となるチリ代表戦が行われるはずだった。だが、6日未明に発生した平成30年北海道胆振東部地震の影響で試合は中止。急きょ練習場所を確保してトレーニングを実施することになったが、北海道中が停電に見舞われている状況にもかかわらず、試合を楽しみにしていたであろう多くのファンが練習を見に来てくれた形だ。

 即席撮影会の発起人になった槙野が、その理由と想いを明かす。

 「まずは自分たちが置かれている状況を理解して、代表選手として何ができるのかを考えていました。そしてプレーを見せることで被災された方々にメッセージを届けていければと個人的には強く思っていました。最後にああやって触れ合う時間の中で一緒に写真を撮ったり、ひと言、ふた言話すことで一歩を踏み出せる勇気を持つきっかけを作れればと思ったんです。逆に僕らが元気を分けてもらっているのもおかしいですけど、今日は本来ならば札幌ドームで見せるはずだったプレー。練習試合を見に来てくれた方々には何かしら伝わっているんじゃないかなと思います」

■ピッチ内で見せた強い気持ち

 ファンの歓声に迎えられた選手たちは一様に笑顔を浮かべ、そして自分たちがやるべきことを再認識して気を引き締めていた。

 初めて日本代表に選出された天野純も「紅白戦ではありましたけど、今日は僕らが一生懸命プレーすることで(被災された)皆さんに勇気を与えたいと思いながらプレーしました。最後も一緒に写真も撮りましたし、すごく喜んでくれたので非常に良かった」と早くも意識を高めている様子がうかがえた。

 森保監督からキャプテンに任命されたことを明らかにした青山敏弘も、選手たちがピッチ内で見せた強い気持ちを感じ取っていたという。

 「本当は札幌ドームで試合をしたかった。でも、今日は誰一人歩いている選手はいなかったし、本当に集中したいい練習になった。紅白戦も思っていた以上にハードでテンポの早い試合になったし、練習でこれほどテンポが上がることはなかなかない。自然と集中してそうなったし、気持ちがこもっていたって言っていい。みんながそういう気持ちを持ちながらプレーできたと思う」

 試合を見ていたのは、札幌ドームを埋め尽くす4万人の大観衆ではなかった。だが、大変な状況を差し置いてでも日本代表を見に来てくれた人がいる--。

 プロサッカー選手として、日本代表としてやるべきこととは何か。選手たちは、それを改めて考えたはずだ。森保ジャパンが初めて公開した11対11の紅白戦は、テレビ中継もされず、わずかな観客だったかもしれない。だが、この試合が選手たちの意識に与えたものは大きかったはず。森保監督にとって、そして合宿に参加していた選手たちにとって、決して忘れることのできない紅白戦になったのではないかと思う。

 文=青山知雄 写真提供=日本サッカー協会(Goal.com)

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