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【科学特捜隊】ラグビーGPS革命 サントリーを王者に導いた「加速回数」アップ

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サントリーのFB松島幸太朗。何回も加速を繰り返し、トライを量産する  科学的なアプローチでスポーツに斬り込むサンケイスポーツ東京発刊55周年企画「科学特捜隊」の第6回は、ラグビーのGPS利用に迫る。カーナビゲーションなどで使われる通信衛星を利用した位置情報検索技術が、トップリーグ(TL)で昨季、2連覇を達成したサントリーの躍進を支えた。ラグビーで重視される加速回数などを練習だけでなく試合中にもGPSで測定。データを選手強化にフィードバックし、国内最強チームに上り詰めた。 (取材構成・吉田宏)

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 衛星からの電波を活用して、正確な位置情報を得るGPS。意外な感じもするが、TLと日本選手権を2連覇したサントリーの沢木敬介監督(43)はチーム強化に不可欠と断言する。

 「いまのラグビーではGPSが、勝利に欠かせないものになっている。サントリーほど細かなデータを活用できているチームはないだろう」

 実は、ラグビー界でGPSが活用され始めたのは10年ほど前。平均速度、走行距離などにとどまっていた計測データは年々進化している。その中で、サントリーが重視している項目の1つが加速回数だ。

 高強度とされる毎秒2メートルの加速。ある速度で走っている選手が、さらに秒速2メートルのスピードアップをしたことを示す。これを1分間に平均何回したかを算出する。この数値にこだわるのは、競技特有の動きのため。沢木監督はこう説明する。

 「ラグビーで必要なのは単純なスピードや走行距離じゃない。走ってタックルや密集戦に入り、起き上がり再び走るという運動量。選手が一定の時間内にどれくらいの強度で、何回スピードチェンジ(加速)できたか。これを計測している」

 試合で《ラン-静止(密集戦)-立ち上がり次のプレーに移行》というパターンを、相手より速くできれば勝てる-というのがサントリーの考え方。試合や練習で選手にGPSを着用させて測定し、データを確認しながら個々に必要な持久力やスピードを伸ばしていく。

 練習は常に試合以上の負荷をかけて行うことで、シーズン中でも体力がアップし続けるのがチームの特徴だ。加速回数の具体的な数値は「企業秘密」として公表していないが、昨季の推移を示すグラフでTL開幕時とシーズン終盤を比べるとBKで1・4倍、FWは2・3倍に増加した。

 概数でいうとBKは1分平均1回以上、体の大きなFWでも0・6回以上。1分に1回の加速は少ない印象だが、ラグビーは静止状態が多く、前後半計80分の試合で実質の走行時間は25分前後のため、BKなら走行中は1分当たり3回以上加速している計算になる。

 加速回数に着目しながら強化を図った結果、昨季のTLでサントリーの総ボールキャリー(ボールを持って走った回数)は唯一2000回を突破。パス回数も断トツだった。スピードの変化を繰り返しながらボールを何度もつなぐ、目指すスタイルがデータに表れた。

 また、シーズン中も加速回数が増え続けたことが、昨年10月末のリーグ戦では敗れたパナソニックを、1月の決勝で倒す原動力となった。

 ラグビー界でGPSとともに取り入れられているハイテクが、ドローンだ。テレビでの空撮映像などでおなじみだが、サントリーでは2013年から導入。須藤惇・分析担当(27)は「横からでは写せないプレーが、上からだと撮影できる。選手同士の距離感や位置取りを調整しやすくなる」とメリットを説く。データ分析を担うGPSと、視覚的な分析に力を発揮するドローンの活用で、ラグビーの強化は新たな時代を迎えている。

★GPS

 グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)の略称。全地球衛星測位システム。複数のGPS衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、位置を知るシステム。軍事用として米国で開発され、1990年代から航空、航海管制、カーナビゲーションシステム、スマートフォンの地図情報などの一般用途でも利用が始まり、世界規模で普及している。

★ラグビーでのGPS使用方法

 製品により違いがあるが受信機は、たばこ箱ほどで約60グラム。これを収める丈の短いビブス状の専用ウエアをジャージーの下に着用する。受信機への衝撃を防ぎ、破損を減らすため、プレー中に最も接触が少ない背中上部(肩甲骨の間)付近に装着するタイプが主流。衛星を通じて受信機に蓄積した情報をコンピューターに取り込むことで、選手のさまざまなデータを検出する。

★ラグビー、サッカーは試合中も装着可能

 多くのチームが使用する豪州製の機材「GPSPORTS」の代理店、フォーアシストの春日隆行・営業部長(39)は「2010年から扱っていますが、まずトップリーグ(TL)が積極的に導入して、Jリーグで広がり始めています」。ラグビーでは12年にTLの試合中のGPS使用が許可された。サッカーは国際サッカー連盟(FIFA)が公式戦での装着を容認した15年以降、国内チームの導入が始まった。帝京大、明大ら大学ラグビーの上位チームも導入しているが、機材が1個20万~40万円と高価なため、数個の保有にとどまっている。

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