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【科学特捜隊】ウッズ復活の“なぜ” SGが証明

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9月23日、プレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」で5年ぶりの優勝を飾ったウッズ。米男子ツアーならではの詳細なデータが復活劇を証明していた(USA TODAY)  科学的なアプローチでスポーツに斬り込むサンケイスポーツ東京発刊55周年企画「科学特捜隊」の最終回は、米男子ゴルフツアーの昨季(2017-18年)最終戦「ツアー選手権」(9月)で5年ぶりの復活優勝を遂げたタイガー・ウッズ(42)=米国=を取り上げる。世界的にも同ツアーのみで採用されている詳細な統計データ「ストロークス・ゲインド」を通して、ウッズがなぜ復活できたのかを探る。(取材構成・稲垣博昭)

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 今年のゴルフ界の世界的な話題といえば、なんと言ってもウッズの復活劇だった。持病の腰痛などに苦しみ長期離脱。昨年11月末時点で世界ランキング1199位まで落ちた。42歳になったスーパースターは同12月に実戦復帰し、今年9月の昨季最終戦で5年ぶりの通算80勝目を挙げた。

 現時点で世界ランキング13位。トップ10に7度入り賞金ランキングが8位だった昨季を、スタッツ(統計数値)で振り返ってみる。平均飛距離34位(303・4ヤード)、フェアウエーキープ率129位(58・98%)、パーオン率67位(68・1%)、平均パット数27位(1・743パット)…。意外にも、特筆すべき数値が見当たらない。

 次に、米男子ツアー(PGA)のみで算出している「strokes gained(ストロークス・ゲインド)」(以下、SG)という数値ではどうか。この中で「アプローチ・ザ・グリーン」の数字「0・938」が、全体の1位となっている。

 「SG」は米国の研究者が独自に開発した指標。出場選手全員の平均値と比較して、「稼いだ(スコアを縮めた)打数」を膨大なデータからはじき出したものだ。

 フェアウエーキープ率などは、選手個人のみの数字。フェアウエーが狭い、グリーンが速いなど高難度のコースで行う大会に多く出場する第一線級の選手の数値は、必ずしも良くはない。「SG」では同じコースでプレーした他の選手との比較で、どれだけ優位にスコアを作ることができたかを知ることができる。

 ウッズが1位だった「アプローチ・ザ・グリーン」は、パー3の第1打を含むグリーンを狙ったショットのデータ。このショットで、ウッズは平均より「0・938」打を稼いでいた。この数値がマイナスだと、平均より悪かったことになる。ウッズは、“グリーンをとらえる技術”がPGAの中で最も優れていたことが分かる。

 「アプローチ・ザ・グリーン」では25ヤード刻みの距離別データもある。ウッズは50-200ヤードを25ヤードごとに刻んだ6部門のうち、175-200ヤードで4位となるなど計4部門で15位以内に入っていた。

 「SG」には「アラウンド・ザ・グリーン」(グリーン周りのショット)、「パッティング」などの数字もある。この2つに関してもウッズは年に複数回勝っていた2012、13年頃と比べると、ピン位置やコース難度が上がり全体的なスコアが悪くなったことで数値は必ずしも戻っていないが、順位は当時並みか、それより上をいっている。トータルで全体の4位と、“復活”していることが明らかだ。

 PGAは、レーザー技術を駆使した計測器で全選手のボールの軌跡を追うシステム「ショットリンク」を2003年に導入した。機器を全ホールのグリーン奥のほか、パー5のホールの途中に2台配置するなどして細かく計測。大会によっては400人にも及ぶボランティアを動員してデータ収集、記録をしている。このデータが「SG」算出の基礎になっている。

 「SG」算出には莫大(ばくだい)な資金と高度な技術が必要なため、公式に採用しているのはPGAのみ。PGAのサイトではこれらのデータが公開されている。新シーズンでのウッズのさらなる活躍を、世界最高峰のデータをチェックしながら見守ろう。

★水巻善典氏

 昨季のウッズで話題になったデータは、ヘッドスピードと飛距離に関するものだった。2013年に比べて約10ヤードも伸びたとされた。ただ、当時は300ヤード以上を飛ばす選手は13人だったが、今は61人。ウッズの復活は飛距離よりも「グリーンを狙うショット」が支えていたことが、「SG」の数字から分かる。

 飛距離を伸ばすことに比べて、アプローチのような一定の距離に打つ技術は色あせない。練習場でのウッズはウエッジからロングアイアンまで簡単にボールリフティングしたり、5-10ヤード曲げながらピンに寄せたりしていた。遊びながら、クラブの芯に当てる感覚を育んできたのだろう。

 昔は7Iで打っていた距離で今は6Iを持っているかもしれないが、精度の高い技術が衰えていないことを証明した。来年のメジャー制覇を信じて疑わない。(プロゴルファー)

ストロークス・ゲインド(strokes gained)

 米コロンビア大学ビジネススクール教授のマーク・ブローディ氏が提唱した指標で、略称はSG。大きく分けてティーショット、グリーンを狙うショット、グリーン周りのショット、パッティングの4項目がある。ある選手のデータが出場選手全員の平均値に比べて、何打良かったか、悪かったかを数値化したもの。例えば「SG・パッティング」は、パッティングによって他の選手に比べてどの程度良いスコアを得られたか=パッティングのスコアに対する貢献度が示される。米男子ツアー(PGA)で2011年に「SG・パッティング」を公式データとして採用。その後、徐々に項目が増えていった。

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