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【科学特捜隊】プロゴルファー・近藤智弘、復調の裏に「トラックマン」 

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近藤智弘  科学的なアプローチでスポーツに斬り込むサンケイスポーツ東京発刊55周年企画「科学特捜隊」の第11回は、近年プロゴルファーの多くが練習で導入している弾道計測器「トラックマン」を取り上げる。記録される26種類の詳細なデータをもとに自身の調子や使用クラブとの相性などを見極め、微妙な調整を施していく。男子プロ、近藤智弘(41)=ネスレ日本=の「スピン量」の例から、機器がどのように活用されているかに迫る。 (取材構成・稲垣博昭、阿部慎)

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 大会会場の練習場でスイングする選手たちの背後に、30センチ四方の正方形の機械が置かれている。選手たちはこの機械に接続したパソコンに映し出される数字を確認して、さらに練習を重ねる-。

 この機械が「トラックマン」だ。重さは3キロ程度。高感度のレーダーで球の弾道を追いかけ、クラブのヘッドスピードからボールの初速、飛距離など26ものデータを瞬時に計測する。日本では10年ほど前に各大会がテレビ放送でデータを表示するために導入。2015年頃から、松山英樹(26)や石川遼(26)ら選手個人も所有するようになった。

 選手は、この“オレンジ色のスゴいやつ”を実際にどう活用しているのか。プロ19年目でツアー通算6勝の近藤は「自分の調子をチェックするためにクラブスピードを、クラブの性能を見るためにボールスピード(初速)などを確認しています」と話す。

 2014年には賞金ランキング3位に入った近藤は昨季、16年間維持した賞金シードを喪失。腰痛などの影響もあったが、悩みの種の1つはスピン量の多さだった。

 「スピンレート(スピン量)」は、インパクト直後にボールがバックスピンで毎分何回転するかを示す数値。ボールを浮かせる力の源で飛距離を出す重要な指標だが、多いと高く上がりすぎて風の影響を受ける。少なすぎると途中で失速する。トラックマンによる昨年8月の練習時の計測で、近藤のスピンレートは毎分2669回転。男子プロの理想は2000-2500回転とされる。

 今季はブリヂストンスポーツのドライバー「TOUR B プロトタイプ」を導入。スイングを崩さずにスピン量を減らすため、ヘッドのフェース面上の重心位置を0・1ミリ単位で下げる調整を施した。今年7月の練習時に測定したスピン量は2199回転に。球は低弾道となり、ランを含めた総飛距離も伸びた。練習での平均値で、昨年と比べてスピン量は200-300回転減少。飛距離は3-4ヤード伸びているという。

 近藤は今季、昨季は1度もなかったトップ10入りが2度。調子を取り戻した背景に、トラックマンによる科学的分析があったことは間違いない。近藤自身も「どんどん振っていける」と自信を持って今季に臨んでいる。

 ブリヂストンスポーツでクラブ開発に携わる升川泰祐氏は「トラックマンで集積した選手個々の膨大なデータをもとに、毎週微調整している」。トラックマンのデータは、選手にとって貴重な“カルテ”。プロの厳しい競争を勝ち抜くため、科学的分析は今や欠かせないものになっている。

★アマも体験できる

 アマチュアゴルファーもトラックマンを体験できる機会はある。実際に使用できるゴルフスクールや練習場があるほか、クラブ購入の際に試打で活用できるショップも増えている。飛距離に関してはボール初速、スピン量、打ち出し角の3要素に注目。例えばスピン量が2000回転に満たないのに、ロフト角を立て打ち出しを低くしていると球は失速する。「シングルの腕前でも知らない人もいる」(升川氏)というから、要チェックだ。

★米ツアーでは

 公式ホームページ上で2007年から各選手のトラックマンのデータが蓄積されている。世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(34)=米国=のスピン量は、16年シーズンは平均2610回転。近藤はドライバーの調整で減少させたが、D・ジョンソンはスイングを修正。ボールを上から押さえつけるようなダウンブローから下からすくうアッパーブローに変え、昨季は平均2485.9回転に減った。

トラックマン(TrackMan)

 デンマークのTRACKMAN社が2003年に開発したゴルフ用弾道計測器。元々は軍事用の弾道ミサイルを迎撃するために用いられた弾道追尾システムを利用して、打ち出しから着弾までを追尾計測する。日本のツアーで初めて導入されたのは2008年の「日本ツアー選手権」。プロ野球の大半の球団やサッカー、テニスなどでも活用されている。最新式の「トラックマン4」は定価303万4800円(送料税込み)。

近藤 智弘(こんどう・ともひろ)

 1977(昭和52)年6月17日生まれ、41歳。愛知県出身。専大卒。12歳からゴルフを始める。千葉・東京学館浦安高時代の1994年に「日本ジュニア選手権」で優勝。2000年にプロ転向。06年の「日本プロ選手権」で初優勝などツアー通算6勝。今季は登録名を共弘から本名の智弘に戻して臨む。今季賞金ランキングは874万9272円で42位(9日現在)。得意クラブは1W。1メートル67、64キロ。

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