【平成の真実(12)】平成16年「『冬ソナ』ヨン様と韓流ブーム」
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平成16(2004)年、空前の韓流ブームが日本列島を包んだ。火付け役となった韓国ドラマ「冬のソナタ」の主演俳優、ヨン様ことペ・ヨンジュン(46)は瞬く間に時の人となり、初来日した羽田空港には約7000人が詰めかけて大パニックに。30代以上の女性を中心に熱狂するファンが続出した。“冬ソナ現象”の陰の立役者で主人公の声を務めた俳優、萩原聖人(47)ら日本語吹き替え版の声優陣が爆発的ブームを振り返った。 (取材構成・納村悦子、小山理絵)
空港からホテルまで人、人、人…。ヨン様の行く先々で中年女性の悲鳴が上がる。大スターを生み出した「冬のソナタ」は、韓国の俳優や作品に注目する人々を急増させ、日本のエンターテインメント界に韓流という新しいムーブメントを巻き起こした。
その一端を担った萩原は「まさか、あんなブームになるとは…。韓国ドラマは当時、日本に全く浸透していなかったし、恋愛の価値観は国や文化によって変わると思っていたので、このドラマが当たったのはビックリしました」と本音を吐露する。
「冬ソナ」は、山口百恵さん主演の「赤いシリーズ」で知られる1970年代の大映ドラマを思わせる波乱に満ちたストーリー展開と、雪景色の映像美が魅力の純愛物語。
ヨン様が演じた自己犠牲と思いやりのあふれる男性像は、愛情表現が希薄で苦手な日本の男性に飽き飽きした中年女性たちを夢中にさせた。
実際のヨン様も初来日時、熱狂的な歓迎に対して胸に手を当てて喜び、ファンを“家族”とまで呼んだ。そんな姿を見せられた女性たちの熱気は一気に過熱した。
「冬ソナ」がヒットした理由について、萩原は「繰り返し障害に立ち向かい、幸せになるのを願いながら見るのは大映ドラマのよう。時代背景が放送当時より少し前で、日本人にとっては衣装やメークも懐かしかった。『冬ソナ』は意図せずして誰もが好む普遍的なものに触れるタイミングだった」と分析した。
ヨン様に会ったことはなく、「『冬ソナ』のときは魅力が分からなかった」と素直に明かすも、ヨン様が肉体改造して撮影に挑んだ07年のドラマ「太王四神記」の声を務めた頃には「男としてカッコいいと思いました」。
アフレコでは俳優の感性を生かし、ヨン様の表現力を何よりも大切にして影武者になりきった。「表現の邪魔にならないようにしました。萩原聖人をいかに忘れさせるか。本当のペ・ヨンジュンの声だと思ってもらえるようにやりました」。その甲斐あって吹き替え版は自然と受け入れられた。
「同じアジア人の作品なので、日本語でも違和感が意外と出ない。再販の度に録り直したので、最初と再放送の声は僕自身も成長して違ったものになっていると思う」と笑顔を見せた。
「冬ソナ」に携わったことで、決意も新たにした。「僕のキャリアの中でターニングポイントになった。『冬ソナ』のように、日本の作品がもっとはやるよう頑張らないといけないと思います」。世の女性のみならず、日本の俳優たちにも影響を与えた。
★目にも耳にも残る名作
「冬ソナ」でチェ・ジウ(43)が演じたヒロインの声優を務めた女優、田中美里(41)は「映像も絵のようにきれいで、せりふの言葉も素敵。目にも耳にも残る作品です。今も色あせませんね」と作品の魅力を語った。
田中は同作以降、ほかの作品でもジウが演じる役の声を担当。ブーム当時、知人が目をつむって「チェ・ジウがいる」と田中の声に耳を傾けたことがあり、「自分の声がコンプレックスだったのに、『冬ソナ』で褒めてもらえる機会が増えました」と笑顔で振り返る。
声優陣とはチームワークで作品を作り上げた。東京・赤坂のスタジオでアフレコを行った後、お酒を飲みに行くのが定番で「舞台の仲間のような空気でした」。ジウとはテレビの特番で1度だけ対面。「とてもきれいで気さくな方でした。『あなたの声で良かった』と言ってくださって、ほっとしたことを覚えています」。本人からの最高の賛辞は、今も誇りだ。
★ヨン様と親交
ヨン様と親交があるフリーアナウンサー、大村正樹(51)は彼の人柄について「初対面で顔を覚えてくれた。圧倒的なオーラがあって律義な人ですね」と証言する。
08年6月にヨン様の主演ドラマ「太王四神記」のイベント司会を務めた際「終演後すぐに楽屋に呼ばれて『本当に助けてもらいました』と感謝してくれました」。以来「サフェジャ(韓国語で司会者)大村」と呼ばれ、「会うといつも一緒に写真を撮ってくれて、『またお会いできる日を楽しみにしています』などの直筆メッセージとサインをいただく。家族(ヨン様ファンの愛称)が多いのも分かります」。
大映ドラマ
映画会社、大映から分社化された大映テレビが1970~80年代に制作したドラマ。オーバーなせりふまわしや過剰な演出で「スチュワーデス物語」「スクール・ウォーズ」などが話題に。特に主人公が試練や困難に立ち向かいながら幸せを手に入れようとする山口百恵さん主演の「赤いシリーズ」は大ヒットした。「冬ソナ」は出生の秘密や三角関係、不慮の事故など波乱に満ちた展開が似ていることから、若い頃に「赤いシリーズ」を見て育った中高年層の共感を呼んだ。
冬のソナタ
高校生のユジン(チェ・ジウ)は転校生のチュンサン(ペ・ヨンジュン)とひかれ合うも、チュンサンが事故死する。10年後、幼なじみのサンヒョク(パク・ヨンハさん)との婚約式を迎えたその日、ユジンの前にチュンサンとそっくりなミニョン(ペ・ヨンジュン)が現れて…。2002年1月から韓国のKBSで放送され、映像や音楽の美しさ、劇的なストーリー展開が話題に。日本では03年4月からNHK BS2で放送されるや大反響を呼び、04年4月からNHK総合でも放送された。
ペ・ヨンジュン
1972年8月29日生まれ、46歳。韓国・ソウル出身。94年にドラマ「愛の挨拶」で俳優デビュー。「初恋」「愛の群像」などドラマを中心に活躍し、2003年に「スキャンダル」で銀幕デビュー。日本では同年の主演ドラマ「冬のソナタ」で韓流ブームを巻き起こし、映画「四月の雪」、ドラマ「太王四神記」など主演作が次々と公開された。11年のドラマ「ドリームハイ」に出演後は実業家として活躍。私生活では15年に女優、パク・スジン(33)と結婚し、1男1女をもうけた。身長1メートル80。
萩原 聖人(はぎわら・まさと)
1971(昭和46)年8月21日生まれ、47歳。神奈川県出身。87年に日本テレビ系「あぶない刑事」で俳優デビューし、95年に映画「マークスの山」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。テレビ朝日系「あなたには渡さない」(土曜後11・15)に出演中。28日に出演映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」が公開される。趣味が高じて日本プロ麻雀連盟に入会し、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」で活躍中。
田中 美里(たなか・みさと)
1977(昭和52)年2月9日生まれ、41歳。石川県出身。96年「第4回東宝シンデレラオーディション」で審査員特別賞を受賞し、芸能界入り。97年、NHK連続テレビ小説「あぐり」のヒロイン役で女優デビュー。代表作はドラマ「緋が走る」、映画「一本の手」など。来年2月1~17日に大阪松竹座公演「天下一の軽口男 笑いの神さん 米沢彦八」に出演する。
