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切ないエピソードに涙 映画「コーヒーが冷めないうちに」/週末エンタメ

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映画「コーヒーが冷めないうちに」劇中写真9月21日(金)より全国東宝系にて公開(C)2018「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会  もし、過去に戻って、やり直すことが出来るなら、自分は誰に何を言うだろう。21日公開の映画「コーヒーが冷めないうちに」は、見終わった後に、そんなことを強く感じさせる作品だ。

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 舞台は、“ある席”に座ると望んだとおりの時間に戻ることが出来るという不思議な喫茶店。だが、それにはいくつかのルールがある。

 (1)過去に戻って、どんなことをしても現実は変わらない

 (2)過去に戻っても、喫茶店を出ることはできない

 (3)過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから冷めてしまうまで

 (4)過去に戻れる席には先客がいる。席に座れるのは、その先客が席を立ったときだけ

 (5)過去に戻っても、この喫茶店を訪れたことのない人には会うことができない-。

 冒頭、この説明を聞いて、とくに引っかかったのが(1)と(5)。何も変わらない上に、喫茶店を訪れたことがない人に会うこともできないなんて…。さらにコーヒーが冷めるまでに現実へ戻らないと大きなリスクがあることも知り、自分なら行かない、と最初は思った。

 劇中の人物たちも同じだ。この説明を聞いて戸惑う。それでも、最終的に過去に戻りたいと思ってしまうのは、心のどこかに過去の自分への後悔を引きずっているからだろう。

 とくに若年性アルツハイマーに侵された妻と、優しく見守る夫のエピソードには泣いた。いまや夫のことさえ分からなくなった妻。少しずつ記憶が薄れていってしまう中、本当はどんなことを考えていたのか。どうしてほしかったのか。そこにあった究極の夫婦愛を、薬師丸ひろ子と松重豊がベテランの演技で見事に表現している。

 ほかにも波瑠、吉田羊ら芸達者が出演。それぞれ、やはり過去に戻りたい理由がある。主演の有村架純は、いつもの“元気印”を封印し、過去に戻れるコーヒーを注ぐ喫茶店店員役を“静”の演技で披露。そんな主人公の過去も終盤で明らかに。切ないエピソードに涙が止まらなくなる。

 きっと、子供を持つ人、いま恋愛をしている人、年を重ねた人など、観客の境遇、年齢によっても泣きのポイントは変わるだろう。

 冒頭の説明にもあった通り、過去に戻っても現実は変わらない。それでも、過去から戻ってきた人々の顔は明るい。それはきっと、過去をぬぐい去り、未来へ向かって歩き出せたからだ。

 一杯のコーヒーが冷めてしまうまでの時間は短い。それでも気持ちの持ちようで未来は変わる。温かい気持ちになれる映画だった。コーヒーを飲んだ後のように。

    (古田 貴士)

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