【虎のソナタ】当たってほしくない予想が見事に 井上長期離脱も雨予報も外れてヨカッタ
更新
練習がまもなく始まろうかという宜野座の朝のことだった。
「う~ん、これはまた降るぞ」
トラ番サブキャップ・新里公章が空を見上げながらつぶやく。そのゆっくりとした口調が、言葉に真実味を加える。
「えっ、マジですか? 雨だけはやめてほしいなぁ」
後輩・原田遼太郎がすかさず反応した。
ちょうど宿舎を出発する頃、沖縄北部方面は一瞬、土砂降りになった。すぐに止んだのだが…。
以前にも書いたが、ことしのトラ番たちにとって最大の敵は雨。降ってきたら練習はドーム内に移動。ドームはシャッターが閉じられる。密を防ぐ意味で報道陣は原則、立ち入り禁止。中の様子がほとんどわからなくなる。沖縄まで行って、練習が何も見えない状況で、原稿なんて思い浮かぶはずもない。
降らないでほしい。でも、沖縄生まれ、沖縄育ち、沖縄のことを知り尽くしている新里先輩の予言だから、やっぱり降ってくるんだろうなぁ。悲嘆に打ちひしがれながらトラ番後輩たちがおそるおそる確認した。
「雲の動きで分かるんですか? それとも風向きとか? 湿度も判断材料ですか?」
“琉球のにわか気象予報士”に、他紙のトラ番記者までが集まってきた。すると、わがサブキャップが再びゆっくりした口調で…。
「いや、テレビの天気予報で言っていた」
ガクッ!! 全員がズッコケた。天気予報の内容を、わざわざ空を見上げながら言う必要はないやろ、の突っ込みの嵐が新里に集中したのは言うまでもない。
新里の予想のように、世の中には、当たってほしくない予想ってのが山ほどある。その1つが無事、当たりませんでした。虎党のみなさん、最大の心配事はなくなりましたよ!
そう、井上広大であります。23日の練習中に故障。かなり痛そう。患部は左膝。悲壮感漂う松葉杖での歩行。長引くんじゃないか? 悪い予感ばかりが脳裏を過った。が、朝の広報発表が「打撲」。矢野監督のコメントも「大事に至っていないので」を繰り返していた。若き大砲候補は、そう遠くない時期に戦列に戻るはず。ホッ。
西勇の帰阪も心配事の1つ。こっちも長引いたら困るなぁとマイナスの予感をしているファンもいることでしょう。開幕がエース西勇でなかった時に不安を抱く読者も多いのでは。
そんな空気を打ち消そうと立ち上がった男がいる。ベテランのトラ番・三木建次だ。
「早期に戻ってきてほしいけれど、俺は青柳の開幕志願がうれしい。そういう気概というか、男気というか、気持ちを前面に出す選手が好きだし、俺はことしは青柳で開幕を迎えることに大賛成なんや。西勇も間に合って、強力ローテができあがることが理想やね」
三木記者の熱意がこもった「青柳推し」の1面記事を、もう一度読み直してください。「開幕・西勇」が外れても、大丈夫な気がしてきますよ。この手の大胆発言をする虎戦士が少なくなってきた昨今だから、余計に青柳が頼もしくみえる。
ちなみに、冒頭の新里“にわか気象予報士”の天気予報だが…。その後、宜野座に1滴の雨も降ってこなかったことを付け加えておこう。