【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】桑田氏の電撃復帰で巨人が狙う藤浪獲得プラン - SANSPO.COM(サンスポ)

【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】桑田氏の電撃復帰で巨人が狙う藤浪獲得プラン

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 阪神・藤浪晋太郎投手(26)の“獲得&再生シフト”の完成-。これこそが巨人の桑田真澄投手チーフコーチ補佐(52)の超異例の就任劇の隠された狙いではないですか-。球界のみならず、全国野球ファンを驚かせた年始の桑田氏の巨人電撃入閣(12日発表)。さまざまな臆測が流れる中で注目したのは、江本孟紀氏(73)と、巨人・原辰徳監督(62)の対談(サンスポコム=1月6日)の中にあったくだりです。原監督は「何年か藤浪を出してよ、と阪神には言っている」と発言。阪神に藤浪譲渡を迫っている舞台裏を初めて明かしました。そして桑田氏と藤浪の接点とは…。藤浪がもし今季も序盤から2軍生活ならば、阪神は交渉のテーブルにつかざるを得ない背景とは…。年始から物騒な推測を書いてみたいと思います。

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 阪神のライバル巨人が年始から、球界のみならず全国野球ファンをアッと驚かせました。球団OBで現役時代に通算173勝をマークした桑田氏が、1軍のチーフ投手コーチ補佐に就任すると発表したからです。桑田氏が古巣のユニホームを着るのは、2006年の退団以来、実に15年ぶり。プロ野球の指導者になるのは初めてです。

 桑田チーフ投手コーチ補佐は試合中はベンチ入りしない見込みで、主に投手の技術面などを指導する役割だそうです。1軍の枠にとどまらず、2軍や3軍にも指導の幅を与える“巡回コーチ”的な仕事も期待されそうですね。同コーチは早速2日後の14日には、川崎市のジャイアンツ球場で初日を迎えた新人合同自主トレを視察しました。

 「自分が新人として(35年前に)初めて、よみうりランドに足を踏み入れたときのことを回想しました。久しぶりに中に入ると、勝負の世界の緊張感を少し感じました」と話し、原監督の傍らでずっと話し込む姿もありましたね。

 今回の桑田氏の電撃入閣は、さまざまな面で超サプライズでしょう。巨人の組閣は昨季終了後に一度、発表されていて、原監督、元木大介ヘッドコーチ(49)の下、1軍の投手部門は宮本和知チーフ(56)と杉内俊哉コーチ(40)の2人制でしたね。それが昨年12月28日、原監督自らが山口寿一オーナー(63)に「気になる後輩がいる。戦力になってもらいたい」と相談を持ち掛け、桑田氏の入閣の了承を取り付けるや、まだ年明けの余韻が冷めやらぬ5日に同氏と接触。「『ぜひ野球界、ぜひジャイアンツのために!』と一寸の迷いもなく話を聞いてくれた」と入閣を要請し、快諾を得ました。

 一度、発表したコーチ人事を年を越した年始に手直しすることは前代未聞で、長く野球界を取材している身でも、過去にそんなことがあったかなぁ…と首をひねるばかりですが、さらに驚くのは原監督と桑田氏の人間関係です。

 桑田氏は大阪・PL学園高では1年夏から5季連続で甲子園に出場。2度の全国制覇(1983年夏、85年夏)を果たし、戦後最多の甲子園通算20勝をマーク。86年にドラフト1位で巨人に入団するとMVP、沢村賞、最多奪三振各1度、最優秀防御率2度など多くのタイトルを獲得しました。原監督とはエースと4番という立場でチームを支えていた時期もありました。しかし、原監督の親しい人脈に桑田氏がいたか…といえばそうではなく、むしろ2人の間には距離感があったと思います。それがなぜ?

 桑田氏の電撃入閣で、早くも球団周辺ではコーチ陣の人間関係を危ぶむ声や、阿部慎之助2軍監督(41)との間に“ポスト原”の抗争が激化するのでは?などと、さまざまな臆測情報が流れています。当然ながら桑田氏を招いた原監督や巨人軍はこうしたネガティブな捉え方をされることも承知の上で、それでも「桑田真澄」という人材を急遽欲しがった…ということでしょう。その舞台裏に何がうごめいているのか。

 ここからは、あくまでも勝手な臆測です。桑田氏の巨人電撃復帰と聞いて、まず頭に浮かんだのは1人の選手の顔でした。それは巨人の選手ではなく、阪神の藤浪です。

 あれは、2018年3月でした。藤浪が16年から7勝11敗、3勝5敗と低迷期に差し掛かった時期に大阪・読売テレビの企画で桑田氏と藤浪は対談しています。当時、右打者の頭部付近にボールがすっぽ抜ける制球難が出始めた頃でした。悩む藤浪に対して、桑田氏は「それはメンタルではなく、技術の問題にある」とズバリ指摘。イップスになった…と騒がれていた右腕に対して「精神的に強くなければ、甲子園では勝てていないはず」という言葉に、藤浪は「わが意を得たり!」という表情を浮かべていました。

 桑田氏と藤浪には同じ高校野球の甲子園大会で大活躍した親和性があり、同じ大阪の激戦区を勝ち上がった自負やプライドも共有しているでしょう。藤浪は当時、桑田氏の言葉に対して「初めて胸にストンと(納得するものが)落ちた」と話していたようです。

 そして、その桑田氏に指導者の道を切り開いた原監督は今年の年始に驚くべき秘話を公開しています。江本氏(サンスポ専属評論家)との対談で「阪神の藤浪がもしトレードで巨人に、となったらどう?」と聞かれた原監督は-。

 「いや、藤浪はいつでもいいと思いますよ。何年間か藤浪を(トレードで)出してよ、と阪神には言っているんですよ。俺がちゃんと男にするから、と。去年はコロナに感染し、罪人みたいになってかわいそうだった。選手は球界の宝物です」

 なんと、原監督は3度目の監督復帰を果たした18年オフ以降、阪神側に藤浪の譲渡を迫り続けていることを初めて、公にしたのです。入団から3季は連続で2桁勝利(10勝、11勝、14勝)をマークしながら、その後は7勝、3勝、5勝で、2年前は1軍で勝ち星なし。昨季も1勝6敗、防御率4・01の藤浪を巨人が預かるならば、必ず復活させて「男にしてみせる」と原監督は言い切ったのです。

 藤浪復活プランに欠かせぬ人材は誰? 原監督は同じ激戦区の大阪出身で、同じ甲子園のスターであり、投球フォームの解析やメカニックにたけている桑田氏の名前が頭をよぎったのではないでしょうか。つまり原監督の桑田氏抜擢(ばってき)の狙いのひとつに、藤浪再生プランが潜んでいませんか。

 でも、巨人で再生となれば、まず阪神が巨人とのトレードに合意しなければなりません。普通に考えるならば、巨人に藤浪を手渡した後に活躍されれば、阪神は面目丸つぶれです。どのようなトレード交渉にも、応じるはずはないように思われます。しかし、そうとも言えないキーワードを巨人は最近、しきりに公言しています。

 「ウチは飼い殺しはしない」

 巨人の球団首脳や原監督が、事あるごとにマスコミに伝える言葉です。実際、昨季は楽天との間に2件のトレード(池田駿放出-ウィーラー獲得、高田萌生放出-高梨雄平獲得)を成立させ、千葉ロッテには沢村拓一投手を出して、香月一也選手を獲っていますね。シーズンオフには山本泰寛内野手を金銭トレードで阪神に渡しました。一連のトレード劇の際、原監督が口にするのは「選手は球界全体の宝なんだ。活躍できる時期は短いのだから、活躍できる場所があるなら、そのチャンスを与えるべきだ」という趣旨の話ですね。

 背景にあるのは現在、選手会が要求している「現役ドラフト制度(ブレークスルードラフト)」ですね。選手会が参考にしているのは、大リーグで導入されている「ルール5ドラフト」です。有望な選手をマイナーで飼い殺しにするのを防ぐために毎年、ウインターミーティングで行われます。メジャー40人枠から漏れている選手の中で、18歳以下で入団した選手ならば在籍5年以上、19歳以上の入団ならば在籍4年以上の選手を、他球団が指名できるシステムです。

 日本でも2年前頃から選手会が要求し始め、昨季にコロナ禍がなければ導入されていたかもしれません。そのブレークスルーに最も反対しているのが巨人でした。せっかく選手をドラフトで獲得し、育てているのに横から奪われるルールは賛同できない…という主張でしたね。なので、活発なトレードを展開した理由の中には「巨人は飼い殺しなどしていない。ルール化の必要性などない」という主張が隠されているのではないでしょうか。

 そして、阪神です。谷本修球団副社長兼本部長は選手関係委員会の委員長として、このブレークスルードラフトの導入を牽引(けんいん)する役目です。つまり「飼い殺し防止ドラフト」の経営者側の旗振り役です。ここに藤浪の処遇がからんできますね。

 もし、今季も藤浪が開幕から先発起用され、結果を出せなかったら、矢野監督は1軍に置いておきますかね。アルカンタラやチェンを獲得し、西勇輝、青柳晃洋、高橋遥人、秋山拓巳らが先発陣でそろっている中で、藤浪の処遇は2軍落ち!? となれば、再度の巨人からの譲渡申し込みに背中を向けたままではいられなくなりませんか…。それこそ「飼い殺し」の典型的な例としてやり玉に挙げられ、球団副社長の顔を潰す事態にもなりかねません。

 原監督の藤浪獲得プランは決して絵に描いた餅ではないのです。

 ただし、ここまで書きつづってきてこう言うのも申し訳ないですが、もし藤浪が今季、シーズン序盤から完全復活し、先発ローテーションで活躍するならば、こうした巨人の思惑?などどこかに吹き飛ぶでしょう。阪神は藤浪を大事に使い切るはずです。阪神ファンは今季こそ藤浪の完全復活の姿が見たい…と切実に願っています。期待していますよ、藤浪君!(日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

 1990(平成2年)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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