【虎のソナタ】「ドウ・ノット・コーチ」必死トラで思い出したV9監督・川上の長嶋指導法 - SANSPO.COM(サンスポ)

【虎のソナタ】「ドウ・ノット・コーチ」必死トラで思い出したV9監督・川上の長嶋指導法

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長嶋(左)と握手をする川上監督。ミスターのひたむきな姿勢を信じていた  甲子園には1万1384人が詰めかけた。

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 試合前、トラ番キャップ代行の安藤理は「天気もいいし、思わずワクワクしてきまして」と話し、「やはりアルプス席や外野席の上段にファンが入るとグッときました。こうでなくっちゃ」と興奮していた。

 球場の関係者の方に聞くと「まだまだこれからですョ」という。思わず安藤は「これから“夏本番”という雰囲気でした」とたとえた。そう、まだ、これからなのだ。

 当番デスクの阿部祐亮は大学の同窓でもあり、今季初登板だった先発岩田稔に力を入れていた。

 「実は最近、電子ピアノを買いましてね」だと。なんでや? 「そりゃ子供の情操教育ですョ」。え、ジョーソー教育って…キミに似合うか!? 「放っておいてください。実は僕は子供の頃、10年以上ピアノをやっていたんです」だと。どうせ、阿部はどこかの『駅ピアノ』などで、さりげなく「愛の賛歌」などを弾いて立ち止まった美女によからぬウインクなどする予定なのだろうが、おいおい肝心の岩田投手が力んでいるぞョ。心配だ。

 ま、この日は甲子園の景気づけに♪猛虎快勝ラプソディーぐらいをアテにしとくヮ、といったら阿部はマジでうなずいていたが、残念ながら岩田は京山より先に降板した。

 ま、六回にボーアの同点弾がバックスクリーンに飛び込み試合は振り出しに-。これが虎の聴かせどころなのだ。一進一退の好ゲームとなった。

 それで思い出した。1958年、巨人の新人・長嶋茂雄は開幕戦で国鉄の金田正一に4打席4三振で散々だったことは有名だが、そのとき、先輩の川上哲治は愛車に長嶋を乗せて帰路についた。川上はひたすら無言を貫いたそうだ。

 その年の9月19日、広島戦(後楽園)で長嶋は中心打者として左中間に大きな本塁打を放つ。

 ところが、アウト! なぜか。一塁を踏みそこなっていたのだ。

 このときも川上は何も言わなかったそうである。普通なら「キミなぁ」と少しは辛辣なことはいわなくても何かアドバイスがあるはずだが。

 やがて長嶋が「巨人の4番」となり川上がV9監督として名を残して、単なるゴルフ好きの無口なおじさん!? となってから、筆者は「あんなエッということがあったときに川上さんは長嶋さんにどんなアドバイスしたんですか?」としつこく聞いたら、やっと打撃の神様は重い口を開いてこういった。

 「別に何も言わなかったし、それ以後も何もいわなかった」

 エッ…と思った。つまり打撃の神様・川上は本当に無言だったのだ。彼はポツリとこういったのである。

 「長嶋クンはこの現実を120%自分で受け止めようとしていた。だから自分で悩み、苦しみ、考えようとした。それ以上、私がアドバイスすることがあるかね」

 その後のミスターの野球への姿勢、練習態度などをみると長嶋という素材がいかに常に前向きだったかわかる。

 川上の無言はメジャーの「ドウ・ノット・コーチ(教えすぎるな)」ということにつながる。

 勝敗の明暗が分かれたから書くわけじゃないが、この日の甲子園、終盤のチームプレーは阪神が必死だった。DeNAはラフだった。それを阪神の中盤からの“ほころびの少ない野球”を比較するとき、巨人はどちらを警戒するかは明白だろう。まだ終わってないんだ。

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