【イチロー新たなる挑戦(1)】イチローは変わらず選手目線
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米大リーグ、マリナーズのイチロー外野手(45)は昨季途中に球団会長付特別補佐に就任し、プレーをやめた。その後はチームに同行しながら練習し、日本で開幕カードのアスレチックス2連戦(3月20、21日、東京ドーム)が開催される今季の選手復帰に備えた。異例の挑戦を全7回にわたって取り上げる。
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マリナーズの本拠地一塁側ベンチ裏の室内ケージは選手たちのさまざまな思いが行き交う。ケージは奥行き約25メートル、幅約15メートル。むき出しのコンクリートとすり切れた人工芝に囲まれた空間では、出番を待つ選手が粛々と準備する。凡退した打者、打ち込まれた投手の怒り、殊勲打や好守の歓喜。生々しい感情が渦巻くそこは、2018年のイチローが最も汗を流した場所でもあった。
ケージには6台の専用トレーニングマシンが整然と置かれている。昨年5月3日に会長付特別補佐に就任後、試合出場が許されなかったイチローはそこで黙々と体を整え、バットを振った。
自宅での起床時間、食事内容やその順番は選手時代と変わらなかった。本拠地での球場入りは以前と同じプレーボールの約4時間半前。全ての遠征に同行し、全体練習にも参加した。肩書が変わってからの違いは専用マシンからよく見える位置に試合観戦用のモニターテレビが設置されたことくらいだった。
公式戦終了から数週間後、マシンで下半身を鍛えながら「ここからの角度が一番好きだった」とモニターテレビを見上げた。「自分ならどうするか。それを常に考えながら(試合を)見ていました」。選手だったときのようにチームメートと同じ目線で過ごし、実戦の空気を可能な限り、感じようとした。そこには現役復帰への強固な意志と、確かな意図があった。