【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】走って守れるD1位・近本、「中堅・1番」固定なら矢野流機動力野球が理想に近づく - SANSPO.COM(サンスポ)

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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】走って守れるD1位・近本、「中堅・1番」固定なら矢野流機動力野球が理想に近づく

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阪神入団選手発表会で握手を交わす矢野監督(左)と近本  「近本センターは決定的」ー。このスカウティングリポートが実現すれば矢野阪神の野球は理想像に大きく近づくでしょう。さあ矢野燿大新監督(50)の1年目のシーズンが始まります。昨季は二軍で163盗塁を成功させ、68勝40敗7分でウエスタン・リーグV。ファーム選手権で巨人を破り日本一に輝いた手腕を一軍で発揮する時がやって来たのです。成功の鍵を握るのはドラフト1位・近本光司外野手(24)。スカウト陣の評価は「必ずセンターのレギュラーを奪える」。この評価が本当か否か…で矢野流の機動力野球は大きく左右されるでしょう。

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 さあ新年が始まりましたね。平成から新しい元号に移りゆく、まさに節目の年です。阪神も金本前監督から矢野新監督へチームの顔が変わり、初めて迎えるシーズンとなります。

 「1年目から勝負していく」

 矢野新監督は監督就任後から何度も周囲に語っていました。契約期間は3年ですが、プロ野球の世界で監督の契約期間はあってないようなモノです。金本前監督を見れば一目瞭然。新たな3年契約を結んだ1年目のシーズン最終試合の翌日に事実上の解任(辞任表明)に追い込まれました。最下位の責任をとったわけで、改めて勝負事の厳しさを見せつけられました。矢野新監督も盟友の“末路”を目の前で見たばかりで、契約期間が3年ある…なんて悠長な考えはないでしょう。

 オフには投手陣を中心とする補強にも成功しました。FAで西勇輝投手をオリックスから獲得。中日を退団したガルシアも獲りました。昨季に残した西の10勝とガルシアの13勝が加わるわけで、虎の先発投手陣はグッと厚みを増したと思いますね。さらに4番・一塁としてマルテを獲得し、これで今季への戦力補強は一応、完成したわけです。

 矢野新監督は捕手出身です。補強策のベクトルを見ても、投手陣を中心とするセンターラインの強化に力を注いでいました。打力の好不調で先発メンバーを決めていた傾向のある金本前監督と大きな違いが見えてきましたが、果たして昨季は二軍で大成功した矢野流の野球が1軍を舞台にして同じように大成功するかどうか…です。

 大きな鍵を握る選手を一人、挙げるならドラフト1位の近本光司外野手(24)=大阪ガス、1メートル70・72キロ、左投げ左打ち、背番号5=の名前を挙げたいと思います。

 なぜか? それは阪神球団が昨年10月のドラフト会議でセンターの守れる外野手の1位指名にとことんこだわった舞台裏を知るからです。阪神は藤原(大阪桐蔭→ロッテ入団)、辰巳(立命館→楽天入団)の1位指名がいずれも抽選クジから外れ、3度目の1位指名で近本を獲得しました。その時の経緯を知る関係者はこう話しました。

 「ある意味、筋が通った指名。どうしてもセンターが欲しかった。高校のセンターNo.1、大学のNo.1、社会人のNo.1と行ったんだ。それほどセンターが欲しかったということ」

 藤原、辰巳…。二度の失恋の結果、射止めた近本についての阪神球団のスカウティングリポートをのぞくと…。

 「近本はセンターのレギュラーポジションを必ず奪える素材」

 群雄割拠の外野戦争を勝ち抜いて、プロ1年目の今季から開幕センターを守っているはず、という高い評価を下しているのです。

 そして、近本のスカウティングリポートが現実のモノとなるのかどうか…がすなわち矢野流の野球の成否に大きく関わる-と見るからこそ、近本を「鍵を握る選手」と位置付けるわけです。

 どうしてか? 矢野監督が昨季、2軍で成功した原動力は眠っていた機動性を活性化させたからです。シーズン163盗塁は球団史上最高の数字でした。たくさん盗塁した選手の名前を挙げると→島田海26、江越25、熊谷23、板山14、荒木13、高山10、陽川9、植田海7…。ここで皆さんはアレッ!? と思いませんでしたか。昨季、二軍で走りまくった選手たちで今季、1軍のレギュラーを奪える選手はどれだけいるのでしょう。

 逆に今季、1軍でレギュラーの座に近い選手たちの昨季の盗塁数を見てみましょうね。

 糸井22、糸原6、梅野5、大山5、福留2、北條1…。一時は先発出場が多かった植田海は19でしたが、彼は今季の遊撃のポジションを果たして奪えますか? つまり、昨季に2軍で走りまくった選手たちで今季、1軍のレギュラーを奪えそうな選手の数は極めて未知数で、仮に昨季と同じメンバーが今季も1軍のスタメンならば「走れる選手」は糸井ぐらいしかいない-というのが直面する現実なのです。

 ならば、昨季115試合で163盗塁した矢野流の機動力野球はどうなるでしょう。走らせたくても、レギュラーメンバーには走れる駒がいない…という現実に即、ぶち当たりますね。当然ながら、糸原や大山、北條、梅野らの機動性を磨こうとするでしょうが、大きな前進が見込めるでしょうかね?

 そこで近本です。50メートル走で5秒8をたたき出す走力がレギュラーに加わればチーム盗塁数は大きく向上するでしょう。同じセンターのポジションを争う高山、中谷の昨季の1軍での盗塁数は0。島田海も1軍では0。俊介は1ですから、逆に表現するなら、近本がレギュラーを奪わないとチーム盗塁数の向上は絶望的となるわけです。

 今季の阪神は明らかに投高打低です。投手陣が少ない得点を守りきる野球になるはずです。しかし、マルテ、糸井、福留の中軸だけではそう得点能力は上がってこないでしょう。昨季の2軍のように走って、走って、ガメつく点を奪い、豊富な投手力で競り勝つ野球を目指すはずです。こうしたチームの戦力バランスを見れば見るほど、走れるセンター・1番打者の出現が渇望されます。阪神球団のドラフト戦略はまさにその1点を見据えて藤原→辰巳→近本となったのでしょう。3人とも走れるセンターです。

 後は近本がスカウティングリポート通りの選手であるかどうか…です。高山や中谷、島田海、俊介に競り負けるなら、矢野流の機動力野球は頓挫の危険性すらあるでしょうね。ならばチームの得点能力は上がってこず、投手陣は援護がなくて疲弊するでしょう。昨季と同じパターンに陥るかもしれません。打破するには近本のセンター1番の実現が何よりも望まれるわけですね。

 さあ、いよいよ今週から各地で自主トレがスタートします。2019年に向けて選手たちが動き始めるのです。なんだかワクワクします。1年目から勝負する矢野阪神には頂点を目指してほしいものです。今年もトラ漫遊記は熱く、愛情をタップリ込めて阪神タイガースを追い続けますので、どうかご愛読くださいませ!!(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」『今日のトラコーナー』」や土曜日午後6時45分からの「まさとと越後屋のスポーツ捕物帖」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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