【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】矢野監督の力強い「来季必勝宣言」を分析すれば“キモ”は脱・金本采配に尽きる - SANSPO.COM(サンスポ)

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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】矢野監督の力強い「来季必勝宣言」を分析すれば“キモ”は脱・金本采配に尽きる

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阪神の球団納会であいさつする矢野監督=21日、大阪市  「優勝してファンを喜ばせたい」-。阪神・矢野燿大新監督(49)の「来季必勝宣言」は大風呂敷なのかそれとも自信があるのか。分析するとそこにあるのは…。阪神は21日に大阪市内のホテルで球団納会を行い、矢野新監督は「2019年シーズンはみんなで勝って、優勝してファンを喜ばせたい」と語りました。優勝を目標にするのはペナントレースを戦う球団として当然ですが、肝心要はチームに優勝を狙える力があるのかどうか…です。今季は62勝79敗2分で最下位。どん底から頂点への“キモ”は脱・金本采配に尽きるのかもしれません。

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 力強い発言でした。矢野燿大新監督が就任して初めて迎えた球団納会。藤原次期オーナー(12月1日就任予定)や揚塩球団社長、平田二軍監督ら一、二軍コーチ陣、全選手や球団職員を前に壇上に立った矢野新監督はこう語りました。

 「タイガースファンは勝って喜んで、その結晶が優勝になっていくんです。2019年シーズンはみんなで勝って、そして優勝してファンを喜ばせたい。勝つこと、優勝することだけでは足りない。勝つこと以外のプラスワン。何か、みんなの中で考えてもらいたい。一番大きな目標、優勝は大変、難しい目標ではありますけど、さらに上のファンを喜ばせるところを目指してやっていきたい」

 矢野新監督は最大の目標として「来季の優勝」を掲げました。さらに(2)選手に自己アピールを求め(3)喜怒哀楽を表に出し(4)打撃投手や裏方への感謝を求め(5)球団フロントとの一致団結-をアピールしたのです。

 情熱がほとばしる所信表明となった納会でのスピーチですが、まずペナントレースを戦う球団として、その現場の責任者として「優勝を目指す」と語るのは当然のことです。最初から2位でいい…なんて言う指揮官ならば、それは最初から指揮官失格であり、阪神監督としての資質さえ問われるでしょう。

 ポイントは言葉の信憑(しんぴょう)性です。表向きの発言として「優勝を目指す」と言っているのか、本当に「狙える」と確信しているのか…は矢野新監督の胸の内を全部、さらけ出してもらわないと分かりません。新監督としてまだ1試合も公式戦を戦っていない、今だからこそ言える大風呂敷かもしれないし、逆に「勝てる」と思っているのかもしれません。本音は矢野新監督だけが知りうることでもあります。

 今季は62勝79敗2分で17年ぶりの最下位。金本前監督が指揮を執った3シーズンは初年度の16年が64勝76敗3分の4位、昨年の17年が78勝61敗4分の2位。そして今季が最下位でした。16年と17年のシーズンは矢野新監督も一軍コーチとして金本前監督と一緒に戦っていて、今季も二軍監督として一軍の戦いぶりはずっと見ていました。野球評論家として外から金本阪神を見ていたわけではなく、中から一緒に戦いながら、つぶさに内実も見てきたわけですね。

 そうした状況下で発言した「優勝したい」は果たして大風呂敷なのか、裏付けがあるのか…。

 今季のチーム成績を分析すると、投手陣の防御率4・03はリーグ2位なのに、チーム打率2割5分3厘、チーム本塁打85本は他球団に大きく後れをとっていました。特に本拠地の甲子園球場では球団ワーストのシーズン39敗を喫しました。こうした数字を見ると投手陣を打撃陣がカバーできず、疲弊した投手陣もシーズン終盤はバテた、と見るのが普通です。

 ならばシーズン終了後の戦力補強も打撃陣の補強を重視しなければならないはずですね。ところが、実際はFA補強でオリックスから手を挙げた西勇輝投手(28)の獲得を目指してはいるものの、浅村(西武→楽天)や丸(広島)の獲得には全く動きませんでした。外国人補強で一塁を守れる4番候補を調査中ですが、今季の投高打低の現象から見れば何とも物足りなく感じます。

 しかし、こうした補強に対する球団の姿勢はすなわち矢野新監督が観察したチームの状況&見通しと表裏一体であるはずです。ではなぜ投手補強が前に出て野手補強は消極的なのか。

 来季の先発投手陣の顔ぶれを見るとメッセンジャー(今季11勝7敗)、秋山(同5勝10敗)、岩貞(同7勝10敗)、小野(同7勝7敗)、才木(同6勝10敗)、藤浪(同5勝3敗)青柳(同1勝1敗)らが中心ですね。これに望月や浜地がどこまで迫れるか。

 一番、計算できるはずのメッセンジャーは来季で38歳です。FA残留で来季から日本人扱いですが、今季通りの活躍が継続できるか不安は大きいです。なので球団はすでにリリーフ投手としてピアース・ジョンソン投手(27)=SFジャイアンツ=を獲得。さらに先発型の外国人投手の補強を目指しています。これにFAで西が獲れれば、投手陣は質量ともに分厚くはなります。現役時代は捕手だった矢野新監督はチーム造りの原点を投手陣を中心とするセンターラインの強化に置いていることが伺えます。

 一方の野手は? 糸井(今季119試合、打率3割8厘、本塁打16、打点68)と福留(123試合、打率2割8分、本塁打14、打点72)が中心となるのでしょうが、糸原や大山、高山、中谷、北條らの若手野手陣がどこまで伸びるか、いや不振から復活できるか、が大きな鍵を握ります。

 そして、今季は成績が伸びなかった若手野手の起用法を見て、ここに大きな改善の余地があることが分かります。糸原は143試合に出場し、打率2割8分6厘、本塁打1、打点35で得点79を記録しましたが、糸原以外に若手と呼ばれる選手たちで130試合以上の出場を記録したのは132試合の梅野だけ(打率2割5分9厘、本塁打8、打点47)なのです。大山は117試合で北條は62試合、中谷は77試合、高山も45試合。

 球団内にはこんな声があります。

 「金本采配では打撃の調子でスタメンを決めていた。だから打撃の好不調でスタメンが変わり、ずっと起用される若手選手がいなかった。打撃の好不調で起用法を決めると守備が固定されず、安定した戦いはできない」 この言葉に大きなヒントが隠されています。つまり、矢野新監督は野手の起用法を金本采配のような「打撃重視」ではなく「守備重視」に変えるのでしょう。ならば、選ばれた若手野手は好不調にかかわらず、スタメンで起用される試合が多くなり、チームの戦いにも安定感が出てくる。そう見ているのではないでしょうか。

 金本采配のように選手を取っ替え引っ替えするのではなく、地に足をつけたドッシリした起用法に転換するならば、もっと若手野手の成績も向上する。それが攻守の安定感に結びつく。センターラインの強化にもつながり、投手陣をもり立てる→そしてチームは勝つ。 これが青写真と見てもいいのではないでしょうか。つまり、矢野新監督の「優勝したい」は脱・金本采配を原点としているのかもしれません。

 金本前監督は厳しい指導で若手野手を鍛えましたね。それは財産です。血となり肉となっていくでしょう。ただ、試合で結果を出すところまでには至らなかった。矢野新監督の「守備重視」の采配、選手起用が溜まりに溜まったマグマを一気に吐き出させるなら、どん底から頂点へ…もまんざら夢ではないかもしれません。いずれにせよ、優勝を口にした矢野新監督は有言実行を果たすのみですね。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」『今日のトラコーナー』」や土曜日午後6時45分からの「まさとと越後屋のスポーツ捕物帖」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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