【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】矢野新監督の命運握るオリックス・西獲り、立ちはだかるのはソフトバンクの“上乗せ戦術” - SANSPO.COM(サンスポ)

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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】矢野新監督の命運握るオリックス・西獲り、立ちはだかるのはソフトバンクの“上乗せ戦術”

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秋季キャンプで指導する阪神・矢野監督=安芸市営球場  フリーエージェント(FA)での「西獲り」は事前調査では好感触ですが、ソフトバンクの“上乗せ戦術”を打ち破れるか-。ポイントはそこに尽きます。阪神はオリックスから国内FA宣言した西勇輝投手(28)の獲得参戦を表明。交渉解禁の15日にも速攻アタックする方針です。残留交渉継続のオリックスとソフトバンクがライバルですが、中でも争奪戦で中田賢一投手、五十嵐亮太投手と2連敗中のソフトバンクが最大の強敵です。事前調査では好感触を持つ阪神は、ソフトバンクの“常套(じょうとう)戦術”の壁を乗り越えられるのか…。厳しい戦いですね。

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 いよいよFA市場の扉が開かれます。今オフにFA権取得した各球団の選手たちが日本シリーズ終了後、次々と宣言しましたね。広島・丸や西武・浅村、炭谷、オリックスの西…。獲得に向かう球団も即応し、丸には巨人、ロッテが、浅村にはソフトバンクや楽天、オリックスが手を挙げ、争奪戦を展開する様相です。そして、矢野阪神は野手のFA選手には目もくれず、西の獲得参戦を表明しました。

 今季は打撃陣の不振で17年ぶりの最下位。本来なら野手の大物選手を獲得に向かわなければならないはずですが、そこは金本前監督時代からの流れが続いています。生え抜きの若手野手育成という球団の大原則を継続する中で、若手野手の出場機会を奪う、丸や浅村には背を向けています。金本前監督の在任中から先発投手の補強を目指して西の一本釣りに絞ってきましたね。

 「FAというのはシーズンオフに調査が始まるわけではないからね。もうずっと前からターゲットを絞り、事前調査という名の“勧誘”を行っている。FA資格者も他球団からの声がかかっているからFA宣言に踏み切るんだ。事前に何もなければFAなんてできないよ」

 球界関係者の言葉ですが、それは当然ですね。タンパリング(保有権の侵害)を恐れて、事前調査をしなければ、どこの球団のどんな選手でも獲れません。それが現実です。そして阪神は事前調査で西に絞ってきたわけです。今更、丸や浅村獲りに向かっても、事前調査の遅れは致命的です。なので「西一筋」となっているわけですね。そして、肝心要の事前調査の感触はどうだったのでしょう。

 どうせダメ? いやいや阪神には少し失礼な表現になるかもしれませんが、球団関係者の話を総合すると意外や意外、これが好感触なのです。

 「球団は前から西に絞って調査してきた。当然ながら本人周辺の意向を確認している。感触? まあまあいいんと違うかな。悪ければ(FA獲得には)行かないやろ」

 西がFA宣言するや、なんら躊躇(ちゅうちょ)なく参戦を表明した舞台裏には、水面下の事前調査による「好感触」があるからです。

 今季の阪神は昨季はリーグナンバーワンだったチーム防御率3・29が2位の4・03に落ちました。先発陣を見ても2桁勝利はメッセンジャーひとりだけ。そのメッセも来季には38歳を迎えます。藤浪の復活も保証できず、岩貞や小野も安定感に欠けますね。才木や青柳、望月らを計算するわけにはいきません。新外国人投手の先発タイプを1人か2人、獲得する方針ですが、このままでは先発ローテーションは不安だらけです。

 今季もオリックスで10勝マークし、162回1/3を投げた西が加われば、先発陣も厚みを増します。矢野新監督への最高のプレゼントになるでしょうね。一説によると4年契約で総額10億円の資金を用意して15日にも西にアタックする方針です。

 ここまで書くと、なんだか西はもう阪神に決まり!? なんてな勢いですが、阪神球団が「好感触です」と言いながら全く安心していないのは強敵が目の前にいるからですね。もちろん、残留交渉を継続中のオリックスも大型契約を用意して、西の心を揺さぶっていますが、それよりも強敵はソフトバンクです。なぜか?といえば阪神は現在、投手争奪戦でソフトバンクに2連敗中だからです。

 中日からFAした中田とヤンキースから帰国した五十嵐。2投手を巡る阪神とソフトバンクの争奪戦はいずれもソフトバンクの勝利に終わっています。今回もオリックスや獲得参戦を検討中の中日よりも、あのソフトバンクと競って勝てるのか…。これが最大の不安要素なのです。

 「中田の時も五十嵐の時も戦法は同じ。ソフトは『阪神が提示する条件の年俸より5000万円多く出す』とか『阪神が2年契約ならウチは4年契約にする』と選手に伝えるんだよ。つまり阪神の条件を聞いた上で“上乗せ戦術”をとる。選手だって条件がいい方に傾くに決まっている」

 球界関係者の話です。阪神はソフトバンクの“タイガースの条件に上乗せ戦術”にいつも負けているわけで、両球団の資金力の差が結果に付いてまわっているわけです。

 「今回もソフトの戦法は同じだろう。それに勝つには慣れ親しんだ関西の生活面とか、タイガースのチーム環境の良さとかを訴えることになる。まともに札束の攻防になっては勝ち目はない」

 ソフトバンクやオリックスとの争奪戦に勝てるのか否か…。戦いの雰囲気を推し量るポイントはひとつです。阪神球団は西獲得の交渉に矢野新監督の出馬を明言していません。なぜかと言えば、矢野新監督に“負け戦”をさせられないからですね。

 「せっかく新監督に就任したのに、初采配を振るう前のFA交渉でいきなりダメだったら、ケチがつくだろう。矢野監督が交渉に出馬する時は西を獲得できる、と確信した時だけだよ」とは阪神OBの話ですが、その通りですね。せっかく矢野新体制で明るいムードに変わってきたのに、FA交渉にかり出して失敗すれば雰囲気も変わってしまいます。矢野出馬の時は“勝ち戦”でなければなりません。なので、矢野出馬が現象面で出てくれば、阪神は勝利宣言したも同然なのです。

 阪神は10月25日に行われたドラフト会議で1位指名から3位指名まで野手を獲りました。球団内には即戦力投手の指名を訴える声がありましたが、全く耳を貸しませんでしたね。結局、投手陣は新外国人投手とFAでの西獲りだけが残された補強策です。つまり、西獲りに向かう阪神球団はある意味、自らを背水の陣に追い込んでしまったとも言えます。もし、西獲りが失敗すれば、投手陣の弱体化をどんな方法で防ぐのか。とても代替案など浮かびません。それほど西勇輝投手の獲得からは一歩も引けないチーム状況ですね。矢野新監督の命運を握る交渉が15日、始まります。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」『今日のトラコーナー』」や土曜日午後6時45分からの「まさとと越後屋のスポーツ捕物帖」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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