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【科学特捜隊】打たれない!球威落ちない!巨人・菅野の4巡目

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2年連続の沢村賞に輝いた菅野。抜群の制球力と完投能力で絶対的なエースとして君臨している  科学的なアプローチで斬り込むサンケイスポーツ東京発刊55周年企画「科学特捜隊」の第23回は、2年連続で沢村賞に選出された巨人・菅野智之投手(29)に焦点を当てる。今季は最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠に輝き、クライマックスシリーズ(CS)としては史上初のノーヒットノーランも達成。各種スポーツのデータを収集、分析する「データスタジアム社」の協力で、プロ6年目の進化に迫る。(取材構成・伊藤昇)

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 圧倒的な数字と結果で2018年を駆け抜けた。菅野は15勝、防御率2・14、200奪三振で投手3冠を獲得。投球回は6年目で初めて200回を超え、両リーグ最多の202回をマーク。誰よりも多く投げ、誰よりも抑えた。

 沢村賞は選考基準の7項目を全てクリア。「今年は去年の段階で『狙って取る』ということを自分にも言い聞かせていた。うれしさは変わらないが、達成感は今年の方が格段にある」と胸を張った。

 10月14日に行われたヤクルトとのCSファーストステージ第2戦(神宮)ではCS史上初のノーヒットノーランを達成した。直球の球速平均はレギュラーシーズンの平均よりも2キロ低い146キロ、MAXも今季最高より3キロ低い151キロだった。だが、この日の逆球率は何と1%。全113球でわずか1球のみと抜群の制球力だった。レギュラーシーズンの平均は6%で、リーグの先発平均も7%。ほぼ全ての球を捕手が構えたミットに投げきったことも大記録を後押しした。

 今季は完投数も圧巻で10完投以上は黒田博樹(広島)、三浦大輔(横浜)以来、セ・リーグ13年ぶり。8完封は1980年以降で両リーグを通じて最多をマークした。DH制のないセ・リーグで、しかも分業制が進んだ現代野球では特筆すべき成績だ。

 完投の極意はどこにあるのか。それを裏付けするデータがある。先発時の巡数別被OPS(出塁率と長打率を足した指標)では1巡目から・571→・556→・681→・515で、4巡目を最も抑えていたことが判明した。今季のセ先発投手平均は・700→・748→・772→・860。

 球速にも関係がありそうだ。直球の巡数別平均球速は1巡目が147・7キロ(17年は148・1)だが、4巡目に148・1キロ(17年は148・5)をマーク。セ先発投手の平均はマイナス0・7キロとなる中で4巡目の方が0・4キロ速かった。これはセ勝利数トップ5の中でも最速だ。一般的に、疲労が出てくる終盤に差し掛かるほど、打たれやすくなるが、最後まで球威が落ちないことも驚異的な完投数を支えているとみられる。

 総合評価指標のWAR(控え選手よりも何勝分をチームにもたらしたか)も際立った。昨季は則本(楽天)、マイコラス(巨人)に次ぐ6・1で3位だったが、今季は6・9で12球団1位。昨季より0・8勝分を上積みさせた。防御率だけみれば昨季の1・59から低下したようにも見えるが、チームへの貢献度は増している。

 抜群の制球力と完投能力を1年間キープし、文句なしともいえるシーズン。それでも、本人は「胸を張れる成績だが、満足かというと、もっと上を目指せる自信がある」とあくなき向上心を持っている。日本のエースの進化はどこまで続くのか。来季も菅野が繰り出す1球1球に目が離せない。

野村弘樹氏(サンケイスポーツ専属評論家)「今季はキャンプからシンカーを練習していたが、その影響もあってか体が開きやすくなり、外角の直球やスライダーが思うように決まらなくなっていた。開幕2戦目まで不本意な投球が続いたことで(3月30日阪神戦7回5失点、4月6日ヤクルト戦6回5失点)、シンカーを封印してからは本来の姿に戻った。その判断が素晴らしかったし、シンカーに取り組んだからこそ分かったこともあったと思う。10完投は本当に素晴らしい数字で今季は15勝だったが、20勝以上の価値がある。すでに技術は超一級。あとはそれを生かす調整さえできれば、また今年のような投球が期待できる」

★データスタジアム社・佐々木浩哉氏

 複数の球種を高い精度で操る菅野ですが、代名詞といえる変化球にツーシーム、ワンシームがあります。シュート回転をしながら小さく沈む軌道を描くことなどから、データスタジアムでは「シュート」としてまとめて集計していますが、実は持ち球の中で最も高い被打率を記録したのがこの球種でした。一般的にシュートは追い込む前のカウント球として用いられることが多く、変化量が控えめで空振りが取りづらいということもあって、被打率が高めに出る傾向の強い球種です。一分の隙もないように思える菅野ですが、カウントを悪くする前にこの球種に狙いを絞ってみると、攻略の足がかりをつかむことができるかもしれません。

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