【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】矢野監督は脱金本でチームの空気を変えることから着手、まずはじっくりお手並み拝見 - SANSPO.COM(サンスポ)

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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】矢野監督は脱金本でチームの空気を変えることから着手、まずはじっくりお手並み拝見

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秋季キャンプで笑顔を見せる阪神の矢野新監督=高知県安芸市  “金本の目”が存在しない解放感のあふれる矢野流キャンプ。その先に選手のスキルアップと勝利があることを願います。矢野燿大(あきひろ)新監督(49)就任後初の秋季キャンプが11月1日から、高知・安芸市営球場で始まりました。選手の自主性を重んじる指導や、選手とのコミュニケーションに気を配っていることがうかがえる“矢野流”。金本前監督時代にあった厳しく険しいムードからの大変革です。最下位からの逆襲を目指す新監督はチームの空気を変えることから着手したようですが、その先に明るい未来があれば幸いですね。

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 始まりは安芸タイガータウンからです。激動の監督交代劇からわずかな時間を置いて、矢野新監督は高知・安芸市営球場に立っていました。背番号88は2軍監督時代と同じですが、やはり2軍と1軍の監督では注目度も重みも全てが違うでしょう。新監督が何を話し、どう動くか…。それはファンやマスコミだけでなく、選手たちや球団関係者全ての人の関心であります。

 「みんな、いい顔で練習していましたし、充実した初日を過ごせました。いいキャンプにしたいというみんなの思いが出ているように感じました」

 --選手に直接、声をかけていましたね

 「2軍監督の時から気づいたことは言うし、聞きに行っている。1軍監督になったからといって特別にやっているわけではないので。ここにいる選手、みんなすごい可能性を持っている。選手自身が来季が楽しみだなと思えるようなキャンプを過ごしてほしい」

 秋季キャンプ初日の練習を終えた矢野新監督は熱っぽく語りました。

 さて、矢野流キャンプは一体、どんなキャンプなのか…。もう、これは昨年までのキャンプ風景と明らかに違う点があります。それは、金本前監督と片岡前ヘッドコーチがグラウンドにいないことです(笑)。

 体制が代わったのだから当たり前なのですが、言いたいことは金本前監督がいない、つまり“金本の目”が存在しない、金本前監督の存在感がどこを探してもない、キャンプということなのです。

 では、それでチームの何が変わったのか…。明らかにムードが違いますね。良く言えば明るく、笑い顔がグラウンドのアチコチに見受けられる。悪い表現で言うなら厳格さが薄れて、かなり軽く感じる。これは人によって受け取る感覚が違うかもしれません。

 こうした目に見える、肌で感じる空気感の変化は矢野新監督の意図したところでもあるでしょうね。新監督はグラウンドでも選手とアチコチで会話し、笑みを浮かべています。選手の名前を呼ぶときもニックネームやファーストネームで呼ぶことが多く、練習方法も選手の自主性を重んじています。果たしてこうした“矢野の狙い”はどこにあるのでしょうか。

 「まず秋季キャンプは体が出来上がっていて、選手の立場からすれば技術的にトライしたいことができる。だから、選手個々のテーマに合わせて練習メニューを組むことは理にかなっている。ただ、狙いはそれだけじゃあないだろう。金本前監督時代は特に打撃フォームなどは監督流を押しつけていた。理論が合わない選手たちから不平不満が漏れていた。新監督はそれを知っているから、まずは選手たちに自分たちでテーマを決めさせてやらせているんだろう」

 阪神OBの言葉です。

 さらに首脳陣が選手とのコミュニケーションを重視しているのは、やらせる側とやらされる側で考え方や意思が一方通行にならないようにして、選手側の意見を吸い上げる考えなのでしょう。選手時代のすごい実績で、あまりにも存在感の大きかった前監督時代は、選手側が思ったこと、感じたことを首脳陣に言いにくく、重い空気が漂っていました。「まるで将軍のような強権政治」とまで噂されていました。

 前体制時代にあったムードを矢野新体制は熟知しているからこそ、チームにある空気感をもっと明るく、開かれたものに変えようとしていると思われます。初めての秋季キャンプで醸し出される明るい、笑顔の多いグラウンドの舞台裏は脱金本流なのかもしれません。

 今季、阪神は2001年以来、17年ぶりの最下位に転落しました。勝てなかった。特に本拠地・甲子園球場で大きく負け越しました。選手の心の中にあるのは、屈辱と反省だったでしょう。しかし、矢野新監督は2軍監督時代から選手たちに「失敗をおそれるな。前のことを引きずらずに、常にチャレンジしていこう」と話し続けていました。“超積極野球”を貫く上で絶対に必要な前向きな精神。キャンプでの姿勢も心の持ちようは同じなのでしょう。

 ただし、こうした矢野流キャンプの先に何が待ち受けているのか。最大のポイントはそこにあります。選手の自主性を重んじ、首脳陣と選手とのコミュニケーションが豊かになったとしても、それによって選手のスキルがアップし、チームが勝たなければ意味はありません。

 「チームのムードを変えることで今季、不振だった選手がよみがえるかどうか…。藤浪や岩貞、高山、江越らが自分の描いた練習方法やテーマを消化した先に復活があるのかどうかが最大の問題や。もちろん、選手を導く側のコーチ陣の指導力も問われる。チームの空気を変えるだけで成績が浮上するほどプロ野球は甘いだろうかなぁ」

 阪神OBはそう指摘していました。

 プロ野球は試合で結果を出してこそプロセスも評価されます。それはプロ野球の世界だけの話でもないでしょう。現実の社会のあちらこちらで同じような競争が繰り広げられています。果たして矢野阪神は結果も勝ち組になって、プロセスを評価されるのか-。

 もちろん、結果を出すにはグラウンドの激しい練習による選手個々のスキルアップだけでは足りません。これから始まるFA戦線や新外国人選手の補強で戦力層を厚くしなければなりません。すでに球団はロサリオ、マテオ、モリスの3人の外国人選手の戦力外を発表しています。一塁が守れて4番を打てる新外国人選手の獲得や、FAによるオリックス・西投手の獲得などが矢野体制をバックアップする球団の大きな責務になるでしょうね。

 まだ始まったばかりの矢野阪神。これからも中身をじっくりと見ていきましょう。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」『今日のトラコーナー』」や土曜日午後6時45分からの「まさとと越後屋のスポーツ捕物帖」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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