【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】ともに捕手出身…矢野監督の考えはノムラの考えと一致 チーム再建の起爆剤は機動力にあり - SANSPO.COM(サンスポ)

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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】ともに捕手出身…矢野監督の考えはノムラの考えと一致 チーム再建の起爆剤は機動力にあり

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ドラフト指名あいさつに訪れた阪神・矢野監督からサイン入りのドラフト会場IDを受け取るの阪神D1位の大阪ガス・近本光司=兵庫県西宮市の大阪ガス今津総合グラウンド(撮影・松永渉平)  矢野の考えはノムラの考えと着眼点が同じですね。阪神・矢野燿大新監督(49)は25日に行われたドラフト会議で1位指名の近本光司外野手(23)=大阪ガス=ら走れる野手を3人獲得。今季は2軍監督としてウエスタン・リーグで163盗塁という“超積極野球”を貫きました。来季は1軍でも機動力重視の野球を推し進める、矢野野球の輪郭が見えてきます。19年前の1999年、阪神監督に就任した野村克也監督も前年最下位のチームを立て直す起爆剤として機動性の重要性を説きました。同じ捕手出身監督の2人はチーム再建への第一歩も同じです。

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 来季の矢野野球の輪郭が見えてきました。監督就任後、初めてのドラフト会議で矢野新監督は1位指名に近本光司外野手を指名しました。イの一番で藤原(大阪桐蔭→ロッテ)を指名し、クジで外れるや辰巳(立命館大→楽天)を指名。またもクジで外れて3度目の1位指名として近本を指名したのです。3人の共通項は打って、走れる俊足の外野手ですね。

 「センターラインを課題としてね。辰巳君は獲れるチャンスはなかった(すでに当たりクジを引かれていた)からアレやけど、藤原君は俺がひくチャンスあったから、本当にタイガースファンの方に申し訳ない。藤原君は球界を背負うぐらいの素材と思うから、個人としては頑張ってもらいたい。その中で近本君を獲れた。1回試合もやっているし、自分の目で見たんで、よかったかなと思います」

 ドラフト会議終了後、感想を話した矢野新監督は、「自分の目で見た」ことをかなり強調していました。阪神の2軍と大阪ガスは9月15日、鳴尾浜で練習試合を行いました。そこで近本は2番センターで出場。5打数2安打を放ち、存在感を見せていたのです。

 1位指名の近本だけではなく、2位の小幡竜平内野手(18)=延岡学園、3位の木浪聖也(24)=ホンダ=も攻走守揃った内野手で、3人の共通項は走れるということです。

 矢野新監督は今季、2軍監督としてウエスタン・リーグで優勝。ファーム選手権でもイースタン・リーグ優勝の巨人に勝ち、ファーム日本一に輝きました。采配の大きな特長は機動力野球です。ウエスタン・リーグ163盗塁は今までの阪神のチームカラーにはなかった記録です。超積極野球として脚光を浴びましたね。そして、今回のドラフト指名に見る傾向も走れる野手重視ですね。

 1軍での采配は来年のシーズン開幕まで見ることはできませんが、今季の2軍の戦いぶりや、ドラフト補強の方向性を見ると矢野野球の輪郭は見えてきます。それは今季の2軍と同じで走って、走って、走りまくる機動力重視の攻撃パターンでしょう。

 これはもう、どうしても19年前のノムさんを思い出します。1998年オフにヤクルト監督を退任したばかりの野村克也監督が阪神監督に就任。99年から采配を振るいました。その時のノムラの考えは機動性の重視だったのです。

 「このチームのデータをよく見ると、これはもう機動性が全くといっていいほど使われていないんや。走者を動かして、打者有利の攻撃パターンを築かないと、得点能力は上がってこない」

 野村監督がぼやくように話しているのを今でも思い出します。

 確かに前年、吉田阪神は52勝83敗でダントツの最下位でした。チーム防御率は3・95と悪くはないのに、何しろ点が取れなかったのです。チーム本塁打は86本と少なくチーム盗塁数も28。長打力もなければ、信じられないほど動きもない攻撃でした。

 それから3年間、野村監督は機動性重視の野球を展開しました。ただ、何しろ中軸打者が不在で得点能力は上がってきませんでした。3年連続の最下位に終わったのですが、チームに走る姿勢は植え付けました。

 昨年の金本阪神は62勝79敗2分の最下位。チーム防御率4・03はそれほど悪くはありませんでした。盗塁数77はリーグ2位ですから、98年ほど機動性を使っていないわけではないですね。しかし、本塁打数85本で得点も伸びませんでした。最下位に終わったのは打撃陣が投手陣をカバーできなかったことに尽きるでしょう。

 そして、来季への戦力構成を見ると、今季の本塁打数85本が飛躍的に伸びる可能性はあまり感じられません。広い甲子園球場を本拠地とする阪神はどうやって得点能力を上げるか。いくつかある方法論の中で現状の戦力と本拠地の特性を考えたとき、出てくる答えはひとつです。

 「4番には新外国人選手を据えるだろうね。でも、やはり甲子園球場で60試合以上戦う阪神はチーム本塁打数が少ないだろう。いきなり130本とか140本とかにはならないはずだ。ならば、どうやって点を取るのか…。それは機動力を使って、足で点を稼ぐしかないよな」とは阪神OBの言葉です。

 今季のリーグトップの盗塁数は広島の95です。それを上回る100以上の盗塁数が記録できるのなら、長打力不足はかなり補えるでしょう。矢野新監督の見据える攻撃パターンは今季の2軍の攻撃パターンの継続でしょうね。

 まさに野村監督が19年前に目指した機動性重視の采配と同じです。なぜ? これほど似るのか? その答えと思われるのが2人とも「捕手出身」というキャリアです。

 「野村さんも矢野も捕手だった。やはり相手にやられて一番、嫌な攻撃は盗塁だったんや。走者が出ても走ってこなければ楽だったんやろう。自分たちが現役時代にやられて一番、嫌だった攻撃を自分たちが相手にやろうと思ったんだろう」

 阪神OBはそう語りましたね。なるほどです。

 矢野新監督が誕生してから早いもので10日がたちました。現状の戦力補強策を見ると、ドラフト以外の補強はFAによる西(オリックス)獲りと新外国人投手&野手の獲得に絞られています。野手のFA補強に動く気配はありません。となれば今季のチーム本塁打数が来季、見違えるほどになる…ことはあり得ませんね。矢野新監督も戦力分析をした上で機動性重視に視点を定めているのでしょう。

 矢野の考えとノムラの考えがピタリと一致するチーム再建の第一歩。果たしてその先には何が待ち受けているのでしょうか。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として、阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時からの「NEWS TONIGHT いいおとな」、土曜日午後6時半からの「ニュース・ハイブリッド」に出演中。

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