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【虎のソナタ】新井、小林繁…それぞれの「引き際の美学」

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巨人から移籍した小林繁は、阪神の5年間で自分の命を削っていた  (セ・リーグ、広島3-11阪神、19回戦、広島12勝7敗、5日、マツダ)

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 若いトラ番竹村岳がマツダスタジアム入りして、通路で広島の丸選手と偶然にスレ違った。

 実は竹村は丸選手をまだ単独取材はしたことがない。球場で顔は合わせるが別にお好み焼きを2人だけで食いにいったわけでもない。なのに丸選手はアノさわやかな顔であいさつをしてくれたのだ。

 「僕は思わず、自分の後ろに誰か広島の選手か関係者がいて、その人物に声をかけたのか…と思いました。ところが誰もいない。あきらかに僕に笑顔でそんな感じの声をかけてくれたんですョ。なんか“広島の強さの一端”を垣間見た気がしました…」

 感激屋の竹村はこの日、41歳で引退を決意して「記者会見」をした新井貴浩内野手についても「FAで新井さんが阪神を選んだとき、中学2年生でした。それ以来ズッとあの練習漬けのまじめさにも憧れてましたよ…」と付け加えた。

 赤ヘル担当の柏村翔は「たしかに新井さんは今のチームを支える若い選手がほとんど手本として、同時に尊敬してますョ。このチームの雰囲気が強さの原点なんです」とサラリといっていた。

 何が言いたいのか? といえば、ウチの若い連中はカープを語るときにその“心のありよう”をそんな風に表現する。今、まさに旬の味がする赤ヘルの若さ。彼らが新井との絆をとても大切にしていることを柏村記者は強調してきた。

 勝ち進んでいるから良く見えるのか。がんばっているから「まとまりがある」のか? は卵が先か、ニワトリが先か…というようなものだ。今のカープの強さは時間はかかるが背広組とユニホーム組の見事なハーモニーの旋律を感じさせる。

 と、同時に他チームの番記者ではあるが、とにかく常によく取材で走り回っているメディアの記者にも、本人が驚くぐらいのハキハキしたあいさつを自然にしてくれた丸佳浩選手にも“その強さ”が漂っている。

 試合は立ち上がりがいつもフラつく九里がいきなり3連続四球…大山の3ランも出て一回に一挙4点。その裏すぐ広島は鈴木誠也の2ランで接戦にもちこんだ粘着野球はさすがだが、この「あきらめないガッツ」で思い出す投手がいる。

 小林繁-。39年前の1979年のこの9月5日甲子園での対巨人戦で鬼神のごとき“粘投”でこのシーズン巨人に無キズの8連勝した。

 「同情されたくない…」として突然の野球人生の流転…江川卓との交換トレードで阪神に移籍して22勝というドラマを演じた小林繁が、その男の意地をみせた日だ。

 阪神打線のその夜は13点の猛打で援護した。

 実は小林はヘビースモーカーと言えた。しかし彼は「タバコを吸っているところは撮らないでくれ…」とこだわった。それほど常に緊張し、巨人戦のあとはプレスルームで震える指で火をつけたが…トラ番記者だった筆者には、明らかに自らの緊張感の限界をこえたマウンドを続けていたのだった。

 巨人で6年、阪神で5年…でも実は小林繁はその5年間自分の命を削って“男の意地”を貫いたのだ。その無理が響いたのか。わずか31歳で「燃え尽きた…」とポツリと言って突然引退し…やがて日本ハムで投手コーチだった2010年1月、突然に倒れて帰らぬ人となった。享年57。

 「一度ゴルフに行こう」と約束していたのに…ついに果たせなかった。

 新井と小林…それぞれの『男の引き際』の美学…強い広島に挑む若虎の戦いがダブって見えた。

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