【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】苦しむ阪神に劇薬なし…衝撃的事件など歯車狂うチーム再建には金本監督が初心貫くしかない - SANSPO.COM(サンスポ)

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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】苦しむ阪神に劇薬なし…衝撃的事件など歯車狂うチーム再建には金本監督が初心貫くしかない

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苦しい戦いが続く金本監督  苦しむ虎に劇薬はありません。阪神・金本知憲監督(50)が成すべきことは初志貫徹。2015年10月19日の監督就任会見で自らが語った指針を貫くことです。阪神は交流戦突入後も4勝9敗で11位、セ・リーグでは5位に転落(14日現在)です。若手野手の伸び悩みに加え、投手陣も崩れてきました。さらに12日には球団スコアラーが仙台市内で盗撮で現行犯逮捕されるという衝撃的な事件まで…。全てに歯車が狂い始めたチームを立て直すには初心を貫くことしか道はありません。そうでないと金本阪神を誕生させた意義すら見失いますね。

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 全ての歯車が狂い始めています。交流戦に突入後もチームは浮上する気配がなく、あと5試合(楽天3連戦、雨流れのロッテ1試合、オリックス1試合)を残した段階で4勝9敗。12球団中11位です。つまり最後の交流戦の3連戦である楽天戦(楽天生命パーク)は“最下位決定戦”という妙な緊張感が漂う試合となってしまったのです。

 交流戦に入ってチーム打率は・262と上向いてきました。その前のリーグ戦よりも安打は出るようになったのです。

 しかし、チーム得点49は楽天の34につぐ11位。要するにチャンスでタイムリーが出ない。本塁打数6本も12位で、ソフトバンク、西武の20本とは大きな差です。チャンスに打てず、長打力も乏しい…となれば得点能力も上がってきません。

 加えて深刻なのは、これまでチームを支えてきた投手陣に疲労の色が見え始めたことですね。防御率4・19は12球団中6位で、そこまで3点台だった数字を大きく落としています。シーズン60試合近くを消化し、打てない打線を必死でカバーしてきた投手陣に綻びが出始めているのです。

 13日には守護神ドリスが体調不良を訴え、14日に1軍登録を抹消。すでにマテオも登録を抹消されていて、抑えの2枚がブルペンから消えました。

 チームが苦境に陥っているときに残念な事件も起きました。12日に山脇光治スコアラー(55)が仙台市内で女性のスカートの中を盗撮したとして、現行犯逮捕されました。14日に宮城県迷惑行為防止条例違反(盗撮)の罪で略式起訴。仙台簡易裁判所は罰金50万円の略式命令を出し、釈放されました。13日に行われた阪急阪神HDの株主総会では冒頭に角CEOが謝罪に追い込まれるという最悪のタイミングでしたね。

 まさにこれでもか、これでもか…という悪循環ですが、今のチームに打開策はあるのでしょうか…。不振で2軍落ちしたウィリン・ロサリオ内野手(29)の状態は上がってこず、1軍首脳陣から早期復帰を求める声も聞こえてきません。球団は新外国人選手としてエフレン・ナバーロ内野手(32)を獲得しました。果たして救世主となるのか。

 ある球界関係者はナバーロについてこう話しています。

 「左打ちのアベレージヒッターですね。阪神でいうなら糸原とか鳥谷タイプ。破壊力のある打撃とは言えません。それに阪神が継続的に調査していた外国人ではなく、代理人の紹介に飛びついた感じ。成功するかな…」

 なんとなく前途が見えてくるニュアンスではないでしょうか。つまり今の金本阪神に効く劇薬はどこを探しても見当たらないのです。では、どうする? もうこれは初志貫徹しか道はありません。2015年10月19日、大阪市内のホテルで行われた金本監督の就任会見で自らが語っていた“鉄人の指針”に立ち戻ることしかないですね。

 では、何を金本監督は語っていたのか。抜粋します。

 「とにかく1回(チームを)壊してでも立て直したい」

 「見ていて面白い、わくわくするようなチームづくりを。監督、コーチや選手、1軍も2軍も、フロントも全部がひとつになって結束して、結束力のある戦う集団、チームを作っていきたい」

 「ひとつのプレー、ひとつの塁。それがすごく大事になるような。そこをちゃんとクリアできる。そして勝つ。そういう試合をやりたい」

 「(過去のチームは)気持ちといいますか。やる気、試合に挑む気。何がなんでも勝つんだという気持ち。そこらへんが少し欠けていた」

 「もう練習ですね。練習と意識です。選手の意識を変えて練習する。そこだけじゃないですか」

 「(コーチを含めて)みんなで目的意識をはっきり持った練習をたくさん、やらせたい」

 あの監督就任会見から18年6月14日で1000日近くが過ぎ去りました。出来ていることもあれば、かけ声倒れに終わっていることもありますね。チームの周辺からは辛辣な声が聞こえてきます。

 「チームを1回壊す、というのはある意味できたと思うよ。ただ、1回壊した後に作り直すというのが前提にあったはずだけど、今のチームは作り直していない。壊したままで終わりそうな感じなのが怖い。今や作り直す策も見えていないように思えてならない」とは阪神OBの言葉です。

 「結束力のあるチーム」というのも首をかしげざるを得ません。今回の先乗りスコアラーの事件もそうです。犯行時間は本来なら楽天の練習を球場で調査していなければならない時間帯でした。職務に就いていないで仙台駅前をブラブラしていたことになります。「フロントも全部がひとつになって結束して…」という金本監督の気持ちを裏切る行為でしょう。

 また、金本監督自身の統治にも問題はあるでしょう。昨季限りで掛布雅之2軍監督が退任しました。背景にあるのは金本監督との育成方針を巡る食い違いでした。1軍と2軍がひとつになれなかった、と言われても仕方がないですね。

 過去2年間の若手育成の障害になっていたはずです。今季から金本監督の右腕ともいわれる矢野2軍監督が就任。1軍と2軍のパイプは正常化したようですが…。

 そして、肝心要なのは「練習と意識」の部分です。ここが目算通りに進んでいないから、若手が育たず、成績も上がらないのでしょう。

 選手の意識を変えて練習する…という方針がなぜうまく進んでいないのか。すぐに中身を分析しなければならないですね。選手の意識はなぜ変わっていないのか? そもそも意識を変えるつもりがないのか? 逆に意識を変えることが選手目線で言うなら成績アップと逆行すると思っているのか。または選手の意識は変わったが、結果が出ないから変わっているように見えないのか…。

 さらに練習をたくさんやらせているのに成果が出ないのであれば、練習の方法、つまり指導方法が間違っているとなります。逆の見方をするなら、そもそも今の若手選手に能力がないのか…。

 または最悪ですが、どちらにも問題があるのかもしれません。とにかく、なにが金本イズムを妨げているのかを見つけないと現状は変わりません。

 ただ、金本監督は就任2年を終えた昨年オフに新たに3年を基本とする長期契約を締結しました。阪神としても他に監督候補も見当たらず、当面は金本監督にチームを委ねる方針です。そこは少々では揺らがないでしょう。ならば、15年10月19日の初心を貫き、そして貫ける環境を整備するしか残された道はありません。

 繰り返しますが、今の苦境を抜け出すための劇薬はありません。そもそも金本監督は何をしたくて、どうしたかったか、そして、それをどうすれば実行できるのか…。

 迷ったら原点に戻る。そこから方法論を見直し、問題点を削除する。そうでないと苦境からは脱出できないでしょう。阪神電鉄本社ー球団ー金本監督が三位一体になって取り組まなければならないと思います。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として、阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月曜日~金曜日、午後9時からの「NEWS TONIGHT いいおとな」、土曜日午後6時半からの「ニュース・ハイブリッド」に出演中。

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