【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】阪神首脳は6・13株主総会以降に決断迫られる 金本育成路線継続か勝利至上主義への大転換かー - SANSPO.COM(サンスポ)

試合
速報

【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】阪神首脳は6・13株主総会以降に決断迫られる 金本育成路線継続か勝利至上主義への大転換かー

更新

阪神・金本監督  金本育成路線の継続か勝利至上主義への大転換かー。注目の6・13阪急阪神HD株主総会以降に阪神首脳は重要な決断を迫られます。金本知憲監督(50)が率いる阪神は交流戦突入後も2勝6敗(7日現在)。セ・リーグでは2位(25勝27敗)ですが肝心要の若手育成は進んでいません。しかし、勝利を追求する1軍で若手育成も求める現在の球団方針はそれ自体が難解ですね。阪急阪神HD9人の役員が再任され、タイガース首脳の選任も決まれば、球団の進むべき道を再確認しなければならないでしょう。

<< 下に続く >>

 金本阪神が交流戦突入以降も苦しんでいます。3カード(ソフトバンク、西武、オリックス)の8試合を終えた段階で2勝6敗。チーム防御率3・34は12球団中4位の成績ですが、チーム打率・238は10位。本塁打2本は12位、つまり最下位です。通常のリーグ戦と同様に投手陣は踏ん張っているものの、打線が湿ったままですね。

 さらに今季の4番を担うと期待されたウィリン・ロサリオ内野手(29)が3日に1軍登録を抹消されました。今季の1軍成績は48試合に出場し、打率・230、本塁打4本、打点22。韓国ハンファで2年連続の打率3割、本塁打30本以上、打点100以上という成績をひっさげて来日した年俸3億4000万円の大砲はその面影もないままに2軍落ちしました。

 2軍落ちの際には金本監督から「3日間、バットを持つな。頭を空っぽにして欲しい」と異例の注文まで出されました。日本バッテリーの配球、特に外角へのスライダーに対応できず、頭の中が混乱していると見た指揮官の指令です。

 しかし、長い間、プロ野球を取材していますが、外国人選手に「バットを持つな」と指示した監督も、それを律義に守った外国人選手も初めて見ましたね。

 「普通、打撃不振ならバットを振って、振って振りまくって頭を空っぽにする…というのが普通だよな。米国で、もしバットを振るな、と言われたら選手側から訴訟が起きる可能性だってあった。だって練習するな、ということやろ」とは阪神OBの言葉です。一連の出来事は年俸3億4000万円なのにコレか…というチーム内外の落胆を示すような珍事ですね。

 こうした現場の状況が流れていく中で、注目の阪急阪神HDの株主総会が6月13日の水曜日、午前10時から大阪市内で開催されます。

 阪急阪神HD・角和夫CEOを筆頭とする9人の取締役が再任(社外取締役2人)されます。阪神電鉄出身となると秦雅夫HD副社長(阪神電鉄社長)、藤原崇起HD取締役(阪神電鉄会長)が再任されますね。役員比率でも明らかですが、社外取締役を除くと旧阪急側が5人、旧阪神側が2人の役員構成です。本社側の趨勢(すうせい)は明らかですね。

 阪神タイガースの位置付けはエンタティンメント・コミュニケーション事業の主要コンテンツですね。今期の決算でいうなら、昨季はシーズン終盤まで優勝争いを演じ、CSにも進出。2000本安打を達成した鳥谷のグッズなど関連商品が好評でした。

 ステージ事業の宝塚歌劇とともに収益を押し上げ、営業収益は前期に比べ、58億8400万円増加。1210億7800万円の収益で営業利益は前期に比べ、20億9400万円の増加。177億5000万円になっています。つまり、昨季は優勝を逃し、CSのファーストステージで敗退したものの、大いに儲かり、HDの利益に大きく貢献した、ということですね。

 しかし、ここから先のタイガースの展望はどうでしょうか。6・13株主総会で本社側の体制が固まり、その後、坂井信也オーナー(阪神電鉄取締役相談役)らタイガース首脳も選任されるでしょうが、ここで立ち止まって考えなければならないのは今後のチームの進むべき道です。具体的に言うなら、現状の金本育成路線をそのまま継続するのか、勝利至上主義への大転換に針を戻すのかーですね。

 3年前にスタートした金本監督の「骨太のチーム造り」は、生え抜きの若手選手を鍛え上げ、チャンスを与え、競い合いながらチーム力をアップして優勝に導く…。簡単に言えばコンセプトはコレでした。

 そこまでの真弓、和田体制では大物外国人選手やFA補強、城島、福留、西岡らのメジャー帰りの選手をかき集め、若手選手との噛み合わせの中でまずは優勝を勝ち取る…というコンセプトでしたね。それでも後一歩、優勝に手が届きませんでした。阪神電鉄本社首脳の「費用対効果に問題あり」という球団不信の声も追い風となって、現状の「骨太路線」に舵を切ったわけです。

 ところが、3年が経過した現状で若手野手は育っているでしょうか。ドラフト1位の高山、大山に中谷や江越、北條らはとてもレギュラー級の選手とは言えません。投手ではエースと嘱望された藤浪が今季は未勝利。

 「ロサリオが大誤算」と言いますが、そもそも野手外国人1人という構成がロサリオの孤立を招いた面も大いにあるでしょう。若手起用のためにポジションを空ける、という理由で野手外国人2人制を敷かなかった編成方針の“死角”がロサリオを、いや金本監督を直撃したとも言えますね。

 そもそもプロ野球の1軍は何を目指すのでしょうか。確かに生え抜きの若手選手がスクスクと計画通りに育ち、優勝争いをすればもう満点です。でも、この世界はそう甘くないことを現状の若手の伸び悩みが如実に示しています。1軍はあくまでも勝利を追求し、優勝を願うファンのニーズに応えていく。そして、2軍は勝利を求める1軍に選手を供給し、将来戦力を養う。1軍は勝利、2軍は育成ー。このシンプルな編成方針こそがプロ野球界のスタンダードであり、1軍で勝利も育成も叶えるなどとは少々、いやかなり欲張り過ぎではないでしょうか。

 もし、昨季のオフから1軍は勝利至上主義となっていたならば、FA補強で中田翔(日本ハム)を獲得し、巨人から戦力外通告を受けた村田(独立リーグ栃木)も獲っていたかもしれません。現在のセ・リーグでどこを走っていたでしょうか。

 ただ、経営方針を決めるのは阪急阪神HDであり、阪神タイガースの首脳であります。あくまでも若手育成路線を堅持するならそれもひとつの選択です。広島カープは地道に育成を貫いた結果、20年以上の歳月を要して現在のチームを育てました。広島型のチーム造りを貫くなら、それも重大決断です。尊い決断と言えるかもしれません。

 しかし、球団を取り巻く環境は阪神と広島では大いに違います。阪神には日本一うるさいマスコミやファンがいます。観客動員は昨季も300万人超え。ファンは勝利を求め、六甲おろしを歌いたいのです。育成という名の我慢を強いるのなら、金本監督ら現体制を必死で外圧から守らねばなりません。勝たなければ批判が渦巻くのがこの世界です。6月13日の株主総会以降、阪急阪神HDや阪神電鉄首脳がどんな決断を下すのか。大いに注目したいと思いますね。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として、阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月曜日~金曜日、午後9時からの「NEWS TONIGHT いいおとな」、土曜日午後6時半からの「ニュース・ハイブリッド」に出演中。

ランキング

PR