【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】藤浪は終わってしまうのか…2年前の“お仕置き続投”から潮目変わったとしても、はい上がれ! - SANSPO.COM(サンスポ)

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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】藤浪は終わってしまうのか…2年前の“お仕置き続投”から潮目変わったとしても、はい上がれ!

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20日の巨人戦。マウンドでうつむく藤浪  藤浪は終わってしまうのでしょうか。阪神・藤浪晋太郎投手(24)は20日の巨人戦(甲子園)に先発。150キロを連発して10三振を奪う一方で1暴投6四球、5回9安打6失点KOという惨劇でした。昨季5月4日のヤクルト戦(神宮)以来、約1年も勝ち星なし。メンタルトレ導入で“アーチェリーポーズ”を行った成果もなく、深い迷路から抜け出せません。プロ入り3年で35勝。ところが、16年7月8日の広島戦(甲子園)での161球“お仕置き続投”から潮目が変わった、という関係者がいます。這い上がれ藤浪…。復活への階段はどこかにあるはずです。

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 見ている側が辛くなる投球内容でした。今季初の甲子園球場での伝統の一戦。同じ12年ドラフト1位同士の菅野との投げ合いはまさに明暗クッキリでした。無四球2失点で完投勝利を飾った菅野の安定感あふれる投球に比べ、藤浪がスコアボードに刻んだのは惨劇そのものでした。

 一回から2イニング連続で先頭打者を四球で出すと、二回には8番・小林に先制タイムリーを浴びて四回にはもっと酷い内容。無死一塁から送りバントの構えを見せる菅野の顔面付近に暴投。さらに歩かせると、ここから3連打で3失点。五回にも四球絡みで2失点。5イニングで120球も要して被安打9の6四球、6失点でマウンドを降りました。これで昨季の5月4日のヤクルト戦(神宮)以来、約1年間も勝ち星なしです。

 試合後の金本監督は厳しい表情で「悪いところが出た。見ての通りですよ」とバッサリ。味方野手の守備が乱れた点についても「あれだけボール、ボールやったら、やっぱり野手も緩む。ブルペンも大変ですよ。毎回(肩を)作らないといけないし。(今後の起用法は)どうだろうね。今から考えます」と続けました。翌21日に1軍登録を抹消。再調整を命じました。

 失意の藤浪も「初回の先頭から、いい感じで投げられていなかった。クイックに関しては良かったんですけど…。足を上げた時にちょっとあまりにも(感覚が)合わなかったのが、初回、二回と先頭を出してしまったり、リズムを悪くした要因かなと思います」と声を絞り出しました。

 1試合前のヤクルト戦(13日の甲子園)からマウンド上で採り入れたのが“アーチェリー・ポーズ”でした。投げる前にグラブをはめた左手を真っすぐホームベース方向に指し、右手はまるでアーチェリーの弦を引くように後頭部に上げる。前回のマウンドではこのルーティーンが功を奏したのか、7回を6被安打2四球で1失点の内容でしたね。

 チーム内の情報を集約すると、今季からチームに関係するメンタルトレーニングの荒木香織コンサルタントのアドバイスもあったそうです。荒木香織さんは16年にイングランドで行われたラグビーW杯で日本代表チームのメンタルコーチを務めました。

 大活躍した五郎丸歩選手のポーズ(ルーティーン)を確立したことで有名ですね。そう、五郎丸選手がキックする前に両手を合わせて拝むようなあのポーズです。

 これをプレ・パフォーマンス・ルーティーンといいます。

 (1)何度も動作を練習することにより、それに続くプレーをスムーズに行うことができる

 (2)動作に集中することにより外的(歓声や相手の動き)及び内的(不安・心配)な障害を取り除くことができる

 (3)動作を行うことでストレスの軽減につながる

 (4)動作を通じて、それに続くプレーのリハーサルをするため、プレーの修正をすることができる 

 以上が主な効果だそうです。もし、藤浪のアーチェリー・ポーズの裏にこうした狙いがあったとすれば、現状打破に向けた必死の思いが伝わってきませんか。

 しかし、20日の巨人戦でもマウンド上で何度もアーチェリーポーズを繰り返していたにもかかわらず、プレーはスムーズに行かず、外的や内的の障害も取り除けませんでした。パフォーマンスへの取り組み方が中途半端なのか、もっともっと根が深い問題なのか…。

 藤浪は12年10月25日に行われたドラフト会議で阪神、オリックス、ヤクルト、ロッテの4球団が競合。当時の和田豊監督が左手で当たりクジを引き当てました。大阪桐蔭高では3年時にエースとして春夏連覇を達成。春のセンバツでは全5試合で150キロを計測し、夏は準決勝、決勝と2試合連続で2安打完封勝利。準決勝、決勝の連続完封は20年ぶりの快挙でしたね。

 プロ入り後も順調そのもの。ルーキーイヤーの13年は10勝6敗、2年目は11勝8敗。そして3年目の15年は14勝7敗。わずか3年で35勝を積み上げたのです。

 潮目が変わったのは金本監督が監督に就任した16年からです。このシーズンも春先から3戦3勝と順調に滑り出したのですが、ここから6試合勝ちなしと急ブレーキ。なかでもポイントは7月8日の広島戦(甲子園)でした。立ち上がりから四球を絡めて失点し、そのまま崩れる投球を繰り返していた藤浪に対して161球を投げさせたのです。この“お仕置き続投”が「大きな節目になった」という阪神OBがいますね。

 「藤浪は高校時代も3年生の時から良くなったんだ。つまり周囲から持ち上げられ、遠慮する者がいない状況の方が力を発揮するタイプ。阪神に入団してからも3年間は上から押さえ付けられることがなかった。それがあの161球で上からの強烈な重圧を初めて感じたんだろう。そこから何かが変わったように思うね。これは采配や起用法への批判ではない。監督の立場として“自覚しろ”と続投させた意図も分かるしね。ただ、あの161球から藤浪は別人になった」

 これはあくまでも一人の阪神OBの見解です。現状とあの161球にどんな因果関係があるのかどうか…。今更、そんな2年前のマウンドのことをほじくり返しても意味はありません。

 ただ、問題なのは藤浪の今後ですね。深い迷路にはまった状況からどうやったら抜け出せるのでしょうか。メンタルトレーニングをさらに本格的に採り入れるのか、投球練習の内容を改めたり、体幹トレーニングで抜け出せるのか。

 もうこれは藤浪自身が自分で活路を切り開くしかないでしょう。プロ野球界は最終的には個人の責任です。誰も助けてくれませんね。

 ただし、阪神は重要な問題に直面しています。4球団が競合し、日本球界のエースと目された投手をダメにしたら、その育成能力は球界内で疑問視されるでしょう。場合によっては今後のスカウト活動にも支障をきたす恐れがありますね。

 「あの藤浪でさえ育てられなかったのか…そんな球団にウチの有望な子供を預けられない」とアマ球界の指導者達から言われますよ。きっと…。

 藤浪再生ー。藤浪自身にも阪神タイガースにも重大な問題です。まだ重い雲は立ちこめて、晴れ間は全く見えません。しかし、諦めてはいけませんね。

 再生は絶対に避けて通れない、成し遂げなければならない問題ですね。まさに無我夢中、必死で駆け上がる階段を見つけなければならないでしょう。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として、阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月曜日~金曜日、午後9時からの「NEWS TONIGHT いいおとな」、土曜日午後6時半からの「ニュース・ハイブリッド」に出演中。

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