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【特命記者】岩村が見た独立リーグの現実 平均月給15万円、オフはバイト生活

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【特命記者】岩村が見た独立リーグの現実 平均月給15万円、オフはバイト生活

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スーツ姿の岩村は、真剣な表情でパソコンの画面に見入る。三刀流の多忙な日々だ (撮影・土谷創造)  プロ野球独立リーグのルートインBCリーグに今年誕生した福島ホープスで球界史上初の“三刀流”に挑んでいるのが、ヤクルトや米大リーグのレイズなどで活躍した岩村明憲(36)だ。今季は選手兼任監督として活躍したが、11月には「球団代表」の肩書も加わった。東日本大震災の被災地、福島にチーム名のとおり希望の光を灯そうと奮闘する姿にスポットを当て、独立リーグの実態に迫った。 (敬称略、取材構成・塚沢健太郎)

 ソフトバンクの2年連続日本一で、今年のプロ野球(NPB)は幕を閉じた。契約交渉では、オリックス・金子がこのオフ最高額(14日現在)の5億円で更改し、米大リーグ入りを目指す広島・前田は、譲渡金を含め総額100億円超の契約が見込まれる。

 その一方、同じプロ野球ながら数十万円の月給で、華やかな舞台を夢見て日々汗を流している選手らがいる。独立リーグ。全国に15チームあり、近年はNPBにも優秀な選手を送り込んでいることで注目度は上がってきているものの、金銭的にも人員的にもNPBには遠く及ばない。今季、ルートインBCリーグに新規参入した福島で球団代表、監督、選手の一人三役をこなす岩村が内情を明かした。

★監督として

 3つの中で一番大変な役割だという。NPBでは8人程度いるコーチが、福島をはじめBCリーグは各チームとも2、3人。打撃投手を務め、ノックを打つのも監督だ。選手指導については「気持ちのフォローもしないといけない。自分が打席に入る方が、はるかに楽」と気苦労を明かす。

★球団代表として

 チームの運営資金を集めるため、スポンサーや福島県内の自治体へのあいさつに自ら足を運ぶ。「福島の経験があったからこそNPBに行けたという選手をみんなで作りませんか、と声をかけている」と行く先々で支援を訴える。

 またチームのスケジュール管理も岩村の仕事だ。本拠地はなく、福島市(県営あづま球場)やいわき市(いわきグリーンスタジアム)など県内12球場で試合を行っており、その調整もする。学校や企業への講演にも出向く。チーム編成や契約更改の交渉役も初めての経験。年俸総額は決まっていて、予算内に収めなければいけない。

 チームの運営費は、リーグ内のどの球団も大差はなく「NPBと比べたら規模は100分の1ぐらい。スター選手1人分の年俸、1億2000万円でまかなえる」という。ヤクルト・館山や、中日・山井らの来季年俸が1億2000万円。選手の報酬は4-9月までの6カ月で、月額は最低保証の10万円から上限の40万円の間で平均は15万円。富山に入団した元巨人のタフィー・ローズ外野手でも40万円だった。

 「言いたくないことも、本人のために言わなければいけないこともある」。契約交渉では、時には心を鬼にして選手と向き合っている。

 今季は10試合の出場にとどまり、打率・556(18打数10安打)、1本塁打、7打点。自分の練習は、全体練習の開始前に行っている。

 「打って当たり前の目で見られていたから意地もあったけど、俺が目立ってもしようがない。上(NPB)を目指して命をかけてプレーしている選手に申し訳ないと思ってしまう」。監督として「選手・岩村」を積極的に起用できなかった。

 来季も選手兼任は続けるが「シーズンが終わってから、まったく練習ができていない」と多忙のため、練習時間も取れない状況が続いている。

 東京都内の自宅に戻れるのは月に1度程度。「大震災から立ち上がろうという福島県民が、応援するものを作ろうとこのチームは誕生した。福島の現状を知るほどに、ここで野球をやりたいと思う」と使命感を支えにしている。

 「1人でも多くの選手をNPBに送り込むのが目標。将来的にはNPBの傘下になれればいい。それが野球界発展のためになると思う」

 三刀流という難業にも「何事にも苦しむことが礎となる」という座右の銘「何苦楚魂」を胸に、挑み続ける。

★BCリーグの入場料は1500円

 BCリーグの入場料は1500円(こども700円)、前売りは1000円(こども500円)で全チーム同じ。入場者数は1位の新潟で1試合平均約950人で、福島は約550人。岩村監督は「まだ入場料に見合ったプレーができないのだから、絶対に手を抜かず全力プレーをしろ」とナインを鼓舞している。

★独立リーグ

 2005年、野球界の底辺拡大と選手の育成を目的に四国アイランドリーグが設立。07年には北信越ベースボール・チャレンジ・リーグ(通称・BCリーグ)が誕生し、2014年にホテルの「ルートイン」が命名権を取得した。前後期制で、秋には両リーグの覇者が3勝先取のグランドチャンピオンシップで日本一を争う。NPBを目指す若手、米国、ベネズエラ出身選手のほか、近年ではチェコ、ジンバブエなど野球後進国出身の選手も所属。他には関西のBASEBALL FIRST LEAGUE(3チーム)がある。

★福島ホープス

 今季から独立リーグのルートインBCリーグに参入した新球団。参入初年度の今季は東地区で前期は4位、後期は優勝。マスコットは県鳥の「キビタキ」がモデル。球団社長は郡山市に本社をおく中古車販売業「扇」の社長・扇谷富幸氏。

★旅館、スキー場など様々

 1チームの登録選手は約30人。平均月給は15万円ほどだが、シーズン中のアルバイトが禁止されているため、ギリギリの生活の中、練習に励んでいる。またオフの間は給料が出ないため、アルバイト生活を強いられる。チームのスポンサー企業などのほか、ルートインBCリーグでは雇用支援策として「キャリアサポート制度」を設け、提携している人材派遣会社からオフの就業先を斡旋(あっせん)。旅館、スキー場、食品加工業、酒造業などで働く。

岩村 明憲(いわむら・あきのり)

 1979(昭和54)年2月9日生まれ、36歳。愛媛県出身。宇和島東高から97年ドラフト2位でヤクルト入団。06年オフに旧ポスティングシステムでデビルレイズ(現レイズ)へ移籍。08年はチーム初のリーグ優勝に貢献した。10年にパイレーツにトレードされ、10年途中にアスレチックス入り。11年からは楽天。13年にヤクルトに復帰し、今季から福島で選手兼任監督を務める。06年、09年のWBC日本代表。1メートル75、92キロ。右投げ左打ち。既婚。

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