2021.1.25 12:00

【ベテラン記者コラム(99)】フランスラグビー、胸躍る「essai」の響き

【ベテラン記者コラム(99)】

フランスラグビー、胸躍る「essai」の響き

特集:
記者コラム
ベテラン記者コラム
クレルモンの松島(左)(共同)

クレルモンの松島(左)(共同)【拡大】

 ラグビーのフランスリーグ「トップ14」のクレルモンに松島幸太朗が移籍したおかげで、フランス語のラグビー中継に接する機会ができた。試合中に、コメンテーターが絶叫する言葉の一つが「エセー」だ。これはつまり、トライのこと。

 「essai」とつづる。意味は「試みる」。つまり英語の「try」と同じことになる。

 そもそもラグビーのトライをなぜトライというか、コアなファンならお分かりだろうが、ラグビーの創成期、トライはゴールを蹴るチャンスを手に入れるためだけのもので、得点は与えられなかった。「ゴールキックにトライする」ということで、このあたり、ラグビーがフットボールであることを如実に感じさせる。1886年にトライには1点が与えられ(ただし、その後のゴールが決まれば2点。これは今でも変わらない)、さらに2点になり、1893年に3点、1971年に4点と、だんだん価値が上がった。現行の5点になったのは1992年のことだ。

 フランスのラグビーは1870年代初めに、英国人によって持ち込まれた。1892年に行われたラシン-スタッド・フランセ(ともにトップ14でクレルモンのライバル)のレフェリーを、近代五輪の創始者であるピエール・ド・クーベルタン男爵が務めたという記録もある。

 さて、「essai」だ。筆者がこの単語を初めて耳にしたのは、高校生から大学生にかけてのあたりだったと思う。英国に赴任していた親類が帰国したとき、いわゆる「トライ名場面集」のようなVHSビデオをお土産に持ってきてくれたのだ。その中に、フランス語の実況も入っていた。フランス語は今でもちんぷんかんぷんだが、華麗なトライシーンとともに響く「essai!」の声は印象的で、ああトライのことなんだなと、すぐ分かった。

 2023年W杯はフランスで開催される。フランスのラグビー用語はほぼ全てフランス語なのだが、essaiのように英語をそのまま訳したものも多い。この機会にフランス語に親しむのも、一興かもしれない。(田中浩)