2020.12.14 12:00

【ベテラン記者コラム(82)】“茨城ダービー”試合後に思い出させてくれたラグビーマンシップ

【ベテラン記者コラム(82)】

“茨城ダービー”試合後に思い出させてくれたラグビーマンシップ

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 ラグビーの大学選手権は13日、関東対抗戦、同リーグ戦、関西の主要校も登場して3回戦が行われ、大学日本一を目指す戦いも本格化した。

 秩父宮での“茨城ダービー”、流通経大-筑波大は19-19の激闘の末に引き分け。両チームとも3トライ2ゴールとスコアの取り方も同じだったため、大会規定で4大会ぶり3度目の抽選となった。

 その結果「次回出場権あり」を引いたのが流通経大。FL坂本侑翼(ゆうすけ)主将は、予備抽選の順番を決めるじゃんけんに負け、予備抽選でも、先に引いた筑波大に本抽選先引きを引かれ、本抽選では残された封筒に幸運が宿っていた。まさに残り物に福だった。

 無情の結果でも筑波大は悪びれなかった。相手の強烈なタックルを食らい、後半途中退場となったCTB岡崎航大主将はSO山田雅也副将に抽選を託した。「山田は筑波大の陣地の側を引いた。僕も同じ方を引いたと思う」とおもんぱかった。

 嶋崎達也監督はオンライン会見の最後、「一言よろしいですか」と話をつなぎ、流通経大への謝意を述べた。

 「流通経大さんに2回もグラウンドと体(コンタクトプレーができる環境)を貸していただき、チームをスタートさせることができた。それがなければこの場にも立っていられたか分からない。感謝とともに、正々堂々と(試合を)やれた」

 新型コロナウイルスの影響で、筑波大は4月から活動を自粛。大学内の施設には入れず、グラウンドで練習を再開できたのが8月に入ってからだった。今でも、他校を呼んでの練習試合は感染予防の観点から行えない。そんなときに手をさしのべたのが流通経大だ。

 流通経大のある龍ケ崎市はコロナの影響が比較的少なかった地域で、練習も時間短縮や人数の制限などはあったが、グラウンドでの活動はほぼ問題なくできた。そこで8月に筑波大との試合形式の練習を2度、行ったのだ。

 「同じ茨城県の仲間ということもあって、以前から筑波大とは協力しようという関係でいる。困っているときなら、なおさら。それがラグビーだと思っている」

 内山達二監督は、さも当然という様子でさらりと話した。実は、監督がロッカールームへ引き揚げる間に抽選は終了していたのだが、それを知らずにロッカーに入ると、選手たちに「さあ、抽選だな」と声をかけたという。「監督、抽選は終わりました」。選手から準々決勝進出を知らされると、ポカンとした。ロッカールームではしゃぐものは誰もおらず、いつも通りの静かな試合後の風景だったからだ。

 坂本主将は関西リーグ5連覇の天理大と当たる準々決勝へ「筑波大の思いも背負い、茨城県の代表として戦いたい」と述べた。

 昨年のW杯で、一般にも浸透した、ラグビーの「リスペクト」の文化。この日の試合後の両校が思い出させてくれた、まさにこれがラグビーマンシップなのだ。(田中浩)