2020.9.30 12:00

【ラグビーコラム】「公立校ラグビー部の灯を消すな」元高校教師の挑戦

【ラグビーコラム】

「公立校ラグビー部の灯を消すな」元高校教師の挑戦

特集:
ノーサイドの精神
「ノーサイドアール」の田中伸明理事長

「ノーサイドアール」の田中伸明理事長【拡大】

 【ノーサイドの精神】高校ラグビー界最古とされる大阪府屈指の伝統校同士の定期戦、北野-天王寺が9月20日、花園ラグビー場で行われた。24-12で快勝し、通算成績を66勝2分け29敗とした天王寺、敗れた北野とも積極的にボールを動かす好ゲームだった。

 そんな高校生たちのハツラツとしたプレーを目を細めて見つめる男性がいた。元高校教諭で、現在は公立校ラグビー部の支援を目的に自身が設立したNPO法人「ノーサイドアール」(大阪市)の理事長、田中伸明さん(63)だ。

 東海大大阪仰星や常翔学園、大阪桐蔭など全国トップ級の私学強豪がひしめく大阪で、かつては公立校全盛の時代があった。1959年度の第38回大会までの大阪代表はすべて公立校で、それ以降も常に大阪府予選では上位に食い込んできた。戦後まもない時期まで遡れば、天王寺が2度、北野が1度の全国優勝を成し遂げ、四条畷も準優勝1度の実績を持つ。

 だが、私学の強化が進むにつれ、立場は逆転。公立校の存在感は薄くなり、花園出場は四半世紀前の96年度の島本が最後。現在では、部員不足で部の存続さえ危うくなっている学校も多い。

 天王寺や北野など伝統校で長く教鞭をとり、ラグビー部を指導してきた田中さんはそんな状況に歯がゆさを感じ、2016年3月、定年を1年早めて退職。「勉学とラグビーの両立を頑張る公立校の伝統の灯を消したらあかん」と翌17年2月に同法人を立ち上げた。

 以来、ときには身銭を切りながら両校を中心に公立校の部員を引き連れ、本場ニュージーランド(NZ)での1週間程度の短期留学を体験させたり、公立の伝統校同士の交流試合を開催するなどの活動を続けている。

 こうした支援の成果もあるのだろう。15人そろえるのも困難だった北野の現在の部員数は25人、天王寺も29人(いずれも女子マネジャーを除く)と活気は戻りつつある。

 とはいえ、今の大阪で公立校が花園の切符を勝ち取るのは至難の業だ。だが、本気でラグビーと勉強の両立に挑んでこそ得られるものがあるはず。北野OBの元日本代表主将、広瀬俊朗氏(38)の存在がそのことを証明している。(月僧正弥)