2020.7.15 12:00

【ラグビーコラム】「50:22キック」のもたらす妙味とデメリット

【ラグビーコラム】

「50:22キック」のもたらす妙味とデメリット

特集:
ノーサイドの精神

 【ノーサイドの精神】スーパーラグビー(SR)がニュージーランドとオーストラリアで再開した。J SPORTSで生の試合を堪能しているファンも多いと思うが、ちょっと面白い試験的なルールがいろいろ採用されている。

 その中で、戦略が変わりそうなものが、タッチキックに関する「50:22キック」と呼ばれるルールだ。自陣22メートル内から蹴ったボールが敵陣に入りバウンドしてタッチに出た場合、あるいは自陣から蹴ったボールが敵陣22メートル内に入りバウンドして出た場合、次のラインアウトはともに蹴った側のボールで始まるというもの。22メートルラインとハーフウエーライン(つまり50メートル)の2本の線をはさむため、この名がつけられた。

 国際統括団体のワールドラグビーは、このルール提案の目的を「ディフェンスラインから相手の選手を下がらせなければならない場面をつくり、攻撃のスペースをつくり出す」としている。これまでのところ各チームとも手探りのような状態で、適用されるシーンは1試合に1、2度程度だが、特に相手22メートルライン内に入ってマイボールのラインアウトになれば、大きなトライチャンスを迎えられる。

 ラグビーでは、キックは「もろ刃の剣」といわれてきた。それは、自分たちのボールを1度手放してしまい、相手ボールになる確率がかなり高くなるためだ。それがほぼ確実に自分たちのボールになるのなら、今後は意図的にこのキックを蹴る状況をつくろうとするチームも必ず出てくる。キックの重要性が大きく上がり、ディフェンスのシステムも変わってくるだろう。さらに、ラインアウトモールの攻め方、守り方の精度も向上するはずだ。

 これは試験実施ルールのため、試合で採用するかしないかは、それぞれの協会の判断に委ねられる。日本協会でも近く、どう対応するかが決まるはずだが、さて、どうなるか。このルールのそもそもの考えは、外側にスペースをつくり、そこにボールを動かすことができればラグビーがよりスペクタクルになるというもの。相手22メートル内に蹴ってマイボールになるシーンが増えるほど“安直”という印象が増すデメリットも考えられるが、日本も含めた各国はどう動くのか、それとも動かないのか。

田中 浩(たなか・ひろし)

「田中 浩」イメージ画像 1983年入社。ラグビーブーム全盛期に担当を約10年、その後デジタルメディア、ボクシング担当、アマ野球担当などを経て2008年から運動部一般スポーツ担当デスクを務め、14年秋に二十数年ぶりにラグビー取材の現場に復帰。秩父宮ラグビー場でトライ(高校都大会決勝)と東京ドームでヒット(スポーツ紙対抗野球)の両方を経験したのがプチ自慢の59歳。