2019.10.9 12:00

【ラグビーコラム】W杯で揺れる危険なプレーへの判定、そのうち「タックル」はなくなる!?

【ラグビーコラム】

W杯で揺れる危険なプレーへの判定、そのうち「タックル」はなくなる!?

特集:
ノーサイドの精神
激しいタックルはラグビーにつきものだが…。NZ-ナミビア戦で力強く前進するNZのレーナートブラウン(中央)

激しいタックルはラグビーにつきものだが…。NZ-ナミビア戦で力強く前進するNZのレーナートブラウン(中央)【拡大】

 W杯でのレフェリー批判が続いている。序盤は危険なプレーに対しての判断(ビデオ判定のTMO=テレビジョンマッチオフィシャル=を含め)が緩すぎるのではないかと。

 9月24日のサモア-ロシアで、サモアのHOマトゥウとCTBリーロが、ともに危険なタックルでイエローカードを受けた。その後、規律委員会に諮られ、そろって3試合の出場停止処分がくだされた。レッドカード相当である。

 大会前、国際統括団体のワールドラグビーは、「危険なプレー、特に相手の肩より上の部位に打撃を加えるような行為は厳しく対処する」と声明を出した。それに照らし合わせても、ピッチ上での判断は甘いのではないかというのだ。

 8日までに行われた1次リーグ29試合で、前半の15試合ではレッドカードが1枚だったのに対して、後半の14試合は5枚。基準が厳しくなったことの表れともいえるが、反動的だったかもしれない。今度は「厳しすぎるのでは」という声があがった。

 9月29日のオーストラリア-ウェールズで、オーストラリアCTBケレビが相手SOパッチェルに当たりにいった際、TMOのスキーン氏(ニュージーランド=NZ)から「ケレビの肘がパッチェルののどに入っていたのではないか」というチェックが入った。

 ポワト主審(フランス)らとの協議の末、反則ではあるがカードの対象ではないとの判断で、ウェールズにPKが与えられた。試合後、オーストラリアのチェイカ監督が反応した。

 「激しいプレーには見えたが、反則といえるものなのかどうか。さまざまなことを心配しすぎてオフィシャルがあまりに慎重になり過ぎているのではないか。こんな具合に試合をつくっていくことは、望ましいこととは思えない」

 暗にTMO(オーストラリアにとって宿命のライバルであるNZだ)の過剰な介入を批判した。確かに肉眼では何でもないプレーに見えた。

 6日のNZ-ナミビアでは、NZの控えPRトゥンガファシにイエローカードが出された。これもTMOのキット氏(イングランド)がガウゼル主審(フランス)に進言して出された。これなどは、ナミビアの選手が足元に突っ込んできたのを受け止めた際に、たまたま右腕が相手の首の付近にかかってしまったように見えた。肉眼での判定なら「おとがめなし」だろう。

 安全面への考慮はラグビーという競技における最大のマターだが、やはり限度というものもあるだろう。こんなことが進んでいけば、そのうちラグビーからタックルという行為がなくなる時代がくるに違いない。

 1次リーグが最終盤にさしかかり、強豪国の監督からレフェリーを批判するコメントが相次いだ。W杯がいかにポリティカルな場かが分かる興味深い発言だが、長くなりそうなので、それはまた次の機会に。

田中 浩(たなか・ひろし)

「田中 浩」イメージ画像  1983年入社。ラグビーブーム全盛期に担当を約10年、その後デジタルメディア、ボクシング担当、アマ野球担当などを経て2008年から運動部一般スポーツ担当デスクを務め、14年秋に二十数年ぶりにラグビー取材の現場に復帰。秩父宮ラグビー場でトライ(高校都大会決勝)と東京ドームでヒット(スポーツ紙対抗野球)の両方を経験したのがプチ自慢の58歳。