2018.12.5 11:31

【ラグビーコラム】早明戦の「変えてはいけないもの」

【ラグビーコラム】

早明戦の「変えてはいけないもの」

特集:
ノーサイドの精神
早明戦で前半に突進し、トライを決める早大・河瀬諒介

早明戦で前半に突進し、トライを決める早大・河瀬諒介【拡大】

 【ノーサイドの精神】31-27で早大が勝った12月2日の早明戦。ファンやOBからは「往年の早明戦のようで面白かった」という声が多かった。強力スクラムを軸にFWを前面に押し立てながらBKが縦に走り込む明大に、それをかわしながらBKで大きく振るアタックを繰り返す早大。トライの取り方も互いの持ち味が出て、確かに「縦のメイジ、横のワセダ」といわれたかつての早明戦を思わせる試合だった。

 秩父宮のスタンドは今季最多の2万2256人の観衆で埋まり、雰囲気も最高潮。家路につくファンの顔には、熱闘を見届けた満足感が強く漂っていたような気がする。

 前半3分に先制トライを奪った早大のルーキーFB河瀬諒介は、11月23日の早慶戦で右足首を痛め、出場が微妙な状況だったが、試合2日前のメンバー発表時には15番に名前があった。試合前日、相良南海夫監督に尋ねると、「もちろん80分間いかせます」という。

 「早明戦は、先を見るような試合ではない」

 今季就任した指揮官はきっぱりと言い切った。大学選手権のことを考えれば河瀬を温存すれば、と無責任な外野は考えるかもしれない。しかし、早明戦というのは、相手をリスペクトし、全力を傾けてこの一戦に向き合うものというのが、早明両校の矜持(きょうじ)なのだ。

 早明戦が国立競技場で6万観衆をのみこんだ時代、1991年度の早大主将だった相良監督は、その矜持をしっかり持っている男だ。30年近い昔と今ではラグビーの競技そのものの質は大きく変わったが、変わらないところ、変えてはいけないところを今に伝えようとするのは、明大・田中澄憲監督も同じだろう。それを感じさせるからこそ、人々は早明戦を楽しめるのだと思う。

 最後にちょっとした挿話を。相良監督は試合当日、次男の早実高NO・8昌彦に、脚の故障で欠場する明大FB山沢京平(もちろんこちらも温存ではない)に代わって先発する1年生の雲山弘貴について尋ねた。「どんな選手?」の問いに、「結構(足が)速いよ」の答え。父子とも異口同音に「家ではお互い、あまりしゃべらない」と話すが、筆者は2人を以前から知っていることもあり、何やらほほえましかった。

田中 浩(たなか・ひろし)

「田中 浩」イメージ画像 1983年入社。ラグビーブーム全盛期に担当を約10年、その後デジタルメディア、ボクシング担当、アマ野球担当などを経て2008年から運動部一般スポーツ担当デスクを務め、14年秋に二十数年ぶりにラグビー取材の現場に復帰。秩父宮ラグビー場でトライ(高校都大会決勝)と東京ドームでヒット(スポーツ紙対抗野球)の両方を経験したのがプチ自慢の57歳。

  • 選手を労う早大・相良南海夫監督
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