ラグビーの魅力を広める“接点”改革 必要なのは「良い意味での衝撃」

池田純 S-Businessの法則

 プロ野球DeNAの初代球団社長で、現在はスポーツ庁参与、日本ラグビー協会特任理事、スーパーラグビーの日本チーム・サンウルブズのCBO(最高ブランド責任者)などを務める池田純氏(42)のコラムがスタート。DeNAを屈指の人気球団へと変えた同氏が、スポーツビジネスの観点から“経営の法則”を紹介する。 (随時掲載)

 Jリーグが開幕し、プロ野球の開幕も迫っています。CBOを務めるスーパーラグビーのサンウルブズは、2月24日に秩父宮で開幕戦(対ブランビーズ)を迎えました。

 開幕までの流れを見ると「野球はすごい」と実感します。1月に新人が入り、2月にキャンプイン、3月にオープン戦が本格化と、徐々に機運が高まる仕組みができています。サンウルブズにはプレシーズンマッチの仕組みもなく、ニュースを自ら作り出す意識が、まだまだ希薄です。

 その中で、一歩を踏み出せた部分もあります。昨年11月、秩父宮を「でっかいパブ」に見立て、「行ってみたい」と思える空間にする「青山ラグビーパーク化構想」をCGによるイメージ図とともに発表しました。

 開幕戦では飲食の拡充、郷ひろみさんのハーフタイムショーを実施。入場口をチームカラー「AOYAMA RED」で彩るなど構想の一部が現実になりました。

 ただ、残念な“事件”もありました。ドラマ「スクール・ウォーズ」の上映見送りです。入場口に設置した大型ビジョンで名場面集を流す予定だったのですが、過度な“忖度(そんたく)”が内部で起こり、知らないところで試合当日に中止が決定されたのです。

 物語の一部には現代では考えられない激しい指導風景も出てきますが、あくまでフィクション。改革を期待されて呼ばれたはずが、内向きな姿勢に一時は絶望を感じました。

 思い出したのは、DeNAの球団社長に就いた1年目、2012年のことです。満足度に応じてチケット代の最大全額を返金する企画を実施した際にも「野球を冒涜(ぼうとく)している」などとたたかれました。

 「良い意味での衝撃」は、競技自体になじみの薄い人々に関心を抱かせる“接点”として不可欠です。「スクール・ウォーズ」の件もネットで話題となり、上映が実現した3日の第2戦(対レベルズ)では、1万枚いくかどうかだったチケット販売が1800枚ほど動いたと聞きます。

 スーパーラグビーで戦うサンウルブズは、野球でいえば米大リーグに日本の球団が参加しているようなもの。ラグビーの魅力が広まる大きな“接点”になり得ます。ただ、その価値を知らせる努力を積極的にしてきませんでした。働く人間の目が組織の内側を向いているうちは、競技の魅力は広まりません。魅力が広まらなければお金が入らず、選手やチームの強化もできません。

 野球以上に壁は高そうです。改革を進めようとする私をクビにしたい人もいるかもしれません。しかし、信念とビジョンを示し、夢を見せられるリーダーが組織には必要なのです。

池田 純(いけだ・じゅん)

 1976(昭和51)年1月23日生まれ、42歳。横浜市出身。早大商学部を卒業後、住友商事、博報堂などを経て2007年からDeNAに執行役員として参画。11年12月にプロ野球DeNAの初代球団社長に就任し、24億円あった赤字を約10億円の黒字へと転換させるなどした。16年10月に同社長を退任。現在はスポーツ庁参与、日本ラグビー協会特任理事、サンウルブズCBO、明大学長特任補佐などを務める。

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