大けがを乗り越えて、成長曲線は着実に上向いている。2020年5月のデビュー(とこなめ)から切磋琢磨してきた高井雄基(27)=愛知・126期=に3期目が終わろうとしていた21年10月の戸田一般戦で悪夢が襲う。
「期末でしたね。前節の優勝エンジンを引いて張り切っていたこともありますが、初日のレース中に転覆して右手を大けがして…。手術を2回しました」
治療に専念するため4期目を丸々休むことになったが、この休養が功を奏す。 「けがをする前は54、55キロで走っていましたが、長い治療生活で体を動かさなくなると食欲がなくなって…。そうすると自然と痩せて51キロくらいまで体重が落ちました。復帰したときにいきなり51キロで走ったので出足とかエンジンの出方がよくなった気がしました」
文字通り〝けがの功名〟だった。復帰して最初の5期目の勝率は4・56。それまでの最高勝率が3・29だから予期せぬ〝減量効果〟が結果にも表れたのだ。弟の駿弥(129期・愛知)もボートレーサーだが「特に意識したり、お互いに情報交換したりすることもないですね」。さらに師匠もおらず、一人で黙々と仕事をこなすタイプなのだ。
「ペラ調整のやり方などは先輩方に聞いたりした方がいいのでしょうが、いまは旋回技術の基本が大事と思っているので、そっちを重視しています」
自分の課題をしっかりと把握し、その目的の達成のために時間を費やす。まさに現代社会の若者を投影した〝令和版ボートレーサー〟といってもいいだろう。この先、壁に当たる日がきても「そのときがきたら、そのときに考えます。いまは基本であるターンの技術を磨きたいです」ときっぱりと言い切る芯の強さも好感が持てる。
落ち着いた受け答えをするようにレースでも冷静さとクレバーさが光る。孤高の道をいく27歳は黙々と一歩ずつ地力を蓄えてスター選手を目指していく。(貝原貴志)