競走馬が輝きを放つ場面は、たとえGI馬でも決して多くない。勝ったときの記憶は鮮やかでも、連戦連勝の活躍ができるのは一流馬でもごく一部だ。マツリダゴッホにとって、競走生活のハイライトは間違いなく大波乱を呼んだ2007年の有馬記念Vだが、6度の重賞勝ちを飾ったのは全て中山競馬場。幾度となくスポットライトを浴びた。
2歳夏、札幌で7馬身差のデビューVを飾ると、札幌2歳Sの敗戦を機に休養。3歳春の復帰戦で初めて中山に姿を見せ、きっちりと勝ち星を手にした。しかし、春のクラシック参戦はかなわず、セントライト記念では不利を受けて落馬競走中止の憂き目を見る。後から振り返ってみれば、中山芝2200メートルで勝てなかったのはこの一戦だけ。4歳初戦のアメリカジョッキークラブCで重賞初Vを飾り、トップホースの仲間入りを果たした。
同年の秋に産経賞オールカマーで2度目の重賞勝ち。天皇賞・秋で15着と惨敗したことで人気が急落していた有馬記念では、ダイワスカーレット以下を寄せ付けない完勝でファンを驚かせた。5歳時にも春の日経賞、秋の産経賞オールカマーと中山で2つのGⅡを制覇。現役を続行した6歳時にはさらなるタイトルの上積みを狙ったが、鼻出血の発症などで歯車がかみ合わず、3連覇を狙って参戦した産経賞オールカマーは3番人気に甘んじた。しかし、ここでマツリダゴッホはよみがえる。デビュー25戦目にして初めての逃走策。横山典弘騎手による絶妙なペース配分が功を奏し、まんまと2馬身差をつけて同一重賞3連覇の快挙を成し遂げた。
グレード制導入後、同一競馬場で重賞6勝を挙げたのはウオツカ、アーモンドアイ(ともに東京)、ゴールドシップ(阪神)と並ぶ最多記録。まさに、中山の〝鬼〟というべき強さだった。種牡馬としては、重賞3勝のロードクエストを筆頭に、2度の単勝万馬券Vがあるロイヤルパールスなど個性的な産駒を送り出している。2023年の種付けを終えたところで、種牡馬生活を引退。功労馬として余生を過ごしつつ、産駒の活躍を見守っている。(記事初出は2023年9月)
■マツリダゴッホ 父サンデーサイレンス、母ペイパーレイン、母の父ベルボライド。2003年3月15日生まれ。北海道静内町(現新ひだか町)・岡田スタツド生産。現役時の所属は美浦・国枝栄厩舎。通算27戦10勝(うち海外1戦0勝)。