会心の勝利を収めたレーベンスティールの鞍上で、ジョアン・モレイラ騎手はしてやったりのサムズアップ=中山競馬場(撮影・菅原和彦) (セントライト記念、2023年9月18日 15:45、GII、中山11R、芝・右外2200m)
ジョアン・モレイラ騎手(39)=ブラジル=とコンビを組んだ2番人気のレーベンスティールが、直線で抜け出して重賞初制覇。昨年11月の新馬戦でクビ差敗れた皐月賞馬ソールオリエンスに1馬身3/4差をつける完勝で、因縁の相手に見事なリベンジを果たした。3着シャザーンまでが菊花賞(10月22日、京都、GⅠ、芝3000メートル)の優先出走権を獲得した。
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新馬戦で敗れた宿敵に、秋の中山でリベンジを果たした。直線で先に抜け出したレーベンスティールが、追いすがるソールオリエンスを振り切って重賞初V。モレイラ騎手は両手でサムズアップを作って引き揚げてきた。
「とてもいい勝ち方を見せてくれました。特別な馬になる可能性が非常に高い。GⅠ馬になるチャンスがありますね」
道中は中団のインを追走。4コーナーでは抜群の手応えで外に持ち出し、デビューから6戦連続でメンバー最速となる上がり3ハロン33秒9を繰り出して1馬身3/4差の完勝だ。田中博康調教師は「2ハロンの距離延長が課題でしたが、折り合いもついていましたし、非常にリズムのいい走りでした」と目を細めた。
火花は10カ月前から散っていた。昨年11月13日、東京芝1800メートルの新馬戦でソールオリエンスと激突。一騎打ちに持ち込んだが、激しい追い比べの末にクビ差敗れた。その後、ソールは無敗で皐月賞を制し、日本ダービーでも2着と世代の中心に。一方のレーベンはクラシックに駒を進められず、前走のラジオNIKKEI賞でも3着にとどまった。
是が非でも賞金を加算したかった今回。「この馬の過去の調整からいってもきっちり仕上げた」と必勝を期して臨んだ。そのかいあって、ソールとの再戦で見事にリベンジ。「あれから1年近くたって成長していますし、こちらの意図したメニューによく耐えてくれました」と指揮官は愛馬にねぎらいの言葉をかけた。
次走は馬の状態を見て決められるが、権利を得た菊花賞についても「選択肢の一つには入ります」とトレーナーはうなずく。父リアルスティールは菊花賞で2着と涙をのみ、母の父トウカイテイオーは無傷で春2冠を達成しながら、骨折により菊に出走することはかなわなかった。因縁の3冠目をレーベンが取りに行くのか。逆襲を開始した素質馬から目が離せない。(綿越亮介)
■レーベンスティール 父リアルスティール、母トウカイライフ、母の父トウカイテイオー。鹿毛の牡3歳。美浦・田中博康厩舎所属。北海道日高町・広富牧場生産。馬主は(有)キャロットファーム。戦績6戦3勝。獲得賞金8405万9000円。重賞初勝利。セントライト記念はジョアン・モレイラ騎手、田中博康調教師とも初勝利。馬名は「生き様(独)。父名、母名より連想。生きざまで魅了する馬になるように」。
【アラカルト】
★ジョアン・モレイラ騎手…JRA重賞は2018年の京都2歳S(クラージュゲリエ)以来で通算5勝目。
★リアルスティール産駒…JRA重賞は昨年のデイリー杯2歳S(オールパルフェ)に次いで2勝目。
★母の父トウカイテイオー…JRA平地重賞はヴィーヴァヴォドカ(2009年フラワーC)、ブレイブスマッシュ(15年サウジアラビアロイヤルC)に次いで3勝目。ブレイブスマッシュは豪州移籍後にGIを2勝した。他にシングンマイケルが19年中山大障害などJRA障害重賞を3勝している。
★勝ち馬と菊花賞…セントライト記念勝ち馬による菊花賞制覇は、過去に10頭。グレード制導入後では1984年シンボリルドルフと2015年キタサンブラックの2頭がいる。