どんな強い相手にも、挑み続けなければ勝つことはない。ヌーヴォレコルトの道のりを振り返ると、トライすることの意義が改めて感じられる。
新馬戦こそ4着に敗れるが、未勝利戦、こうやまき賞を強い内容で連勝。満を持して臨んだチューリップ賞に、ライバルのハープスターが立ちはだかった。有無を言わせぬ末脚の前に、2馬身半差の完敗。続く桜花賞では2歳女王レッドリヴェールにも後塵を拝し、3着に終わった。だが、長距離輸送のないオークスでは、持ち前の自在性を生かしてリベンジに成功。2番人気ながら単勝9.8倍というオッズが示すように、ハープスター断然の前評判を〝三度目の正直〟で打ち破った。
そのライバルが凱旋門賞挑戦を打ち出し、逆に他馬を迎え撃つ立場で迎えたのが秋初戦のローズS。1番人気こそレッドリヴェールに譲ったが、好位追走から抜け出す盤石の取り口でオークス馬の貫禄を示す完勝劇を演じる。ライバル不在の舞台で負けるわけにはいかなかった。この秋は秋華賞、エリザベス女王杯とも2着に敗れるが、勝ったのは強豪牡馬相手の重賞勝ちを果たすショウナンパンドラとラキシスだったことを思えば、戦歴に泥を塗るものではない。事実、4歳になって初戦の中山記念では2頭の皐月賞馬(ロゴタイプ、イスラボニータ)を破って勝利を収めている。
陣営はその後、海外に目を向けた。4歳暮れの香港カップでは、勝ったエイシンヒカリに食い下がって日本馬ワンツーを実現。5歳秋には米国への遠征を敢行し、GⅢレッドカーペットHを制した。強烈なライバルにも未知の外国にも諦めずにチャレンジを続けた3年半の競走生活。引退後は英国での繁殖生活という新たな挑戦が始まり、初子のドンナセレーノが3勝を挙げると、3番子のイングランドアイズはクイーンCとサンスポ賞フローラSでともに4着と素質を示した。終わることのないヌーヴォレコルトのチャレンジは、まだまだ続いている。(記事初出は2023年9月)
■ヌーヴォレコルト 父ハーツクライ、母オメガスピリット、母の父スピニングワールド。2011年2月25日生まれ。北海道千歳市・社台ファーム生産。現役時の所属は美浦・斎藤誠厩舎。通算23戦6勝(うち海外5戦1勝)。