第244回目の英国ダービー(3歳牡牝、芝・左2410メートル、優勝賞金85万650ポンド=約1億4795万円)が3日、エプソム競馬場で14頭によって争われ、ライアン・ムーア騎手とコンビを組んだオーギュストロダン(アイルランド=エイダン・オブライエン厩舎、牡)が中団の後ろから直線で力強く伸び、粘るキングオブスティールをかわして優勝。ディープインパクト産駒最終世代屈指の良血馬が本場のダービー馬に輝いた。勝ちタイムは2分33秒88(良)。
レースはサンアントニオ、アデレードリバーが先行し、人気の一角を占めたアレストが3番手の外。オーギュストロダンは9番手からの競馬となった。直線に向いてもアレストは伸びが今ひとつで、伏兵キングオブスティールが先頭に立って粘り込みを図ったが、オーギュストロダンが外から1頭だけ肉薄。1完歩ずつ差を詰めて最後はきっちりとかわし、1/2馬身差で3歳馬の頂点に立った。2着はブービー人気(単勝67倍)のキングオブスティールで、さらに4馬身3/4差の3着がホワイトバーチ。アレストは10着に終わった。
勝ったオーギュストロダンは、日本の7冠馬ディープインパクトが残した最終世代の一頭。母は英仏でGI計3勝を挙げたロードデンドロン(その父ガリレオ)という血統馬で、英国クラシック1冠目の2000ギニーでは人気に推されながら12着と大敗していたが、この大一番で見事に巻き返した。通算成績は6戦4勝。GIは2歳時のフューチュリティトロフィー(イギリス)に次いで2勝目となった。
この勝利によって、欧州のブックメーカー各社は凱旋門賞(10月1日、フランス・パリロンシャン競馬場、GI、芝2400メートル)のオッズを大きく修正。レース前まで26倍前後だったオーギュストロダンのオッズは6~7倍と軒並み1番人気に支持されている。
ディープインパクト産駒による英ダービー制覇は初めて。イギリスのクラシックレースでは、サクソンウォリアー(2000ギニー)、スノーフォール(オークス)に次いで同産駒3頭目のVとなった。
ディープインパクトは2019年にこの世を去ったが、同年は種付けシーズンの早い時期に体調を崩したことから最終世代の産駒はJRAで6頭しか登録されていない。そんな中で、ディープと配合されて受胎したロードデンドロンがアイルランドに渡って出産したのがオーギュストロダン。この良血馬が昨年のフューチュリティーTを勝ったことで、ディープは全13世代からGI馬を送り出す快挙を達成した。さらにそのオーギュストロダンが近代競馬発祥の地でダービー馬に輝いたことによって、ディープインパクトの世界における存在感は死してなお高まったといえる。
世界屈指の名トレーナーとして知られるエイダン・オブライエン調教師にとっては、2001年ガリレオ、02年ハイシャパラル、12年キャメロット、13年ルーラーオブザワールド、14年オーストラリア、17年ウイングスオブイーグルス、19年アンソニーヴァンダイク、20年サーペンタインに次いで9度目の英ダービー制覇。5月28日のタタソールズゴールドCでGI・400勝の金字塔を打ち立てた名伯楽が、英ダービー歴代最多の勝利記録をさらに更新した。日本でもおなじみのライアン・ムーア騎手は10年ワークフォース、13年ルーラーオブザワールドに次いで3度目の英ダービーV。