子馬時代のファントムシーフ(手前)と、母のルパンⅡ(谷川牧場・谷川貴英代表取締役提供) 今年で創業111年を迎える北海道浦河町・谷川牧場。かつて5冠馬シンザンを種牡馬として繋養した老舗が、有力馬ファントムシーフを送り出す。
「当歳の頃はトモ(後肢)が小さかったけど、厳冬期でも夜間放牧をしていたら1歳になって馬が変わりました。前後のバランスが良くなって、乗っている人も『乗り味も背中もすごくいい』と。うちのこの世代ではナンバーワンでした」
谷川貴英代表取締役が子馬時代を振り返る。母ルパンⅡは谷川氏自らイギリス・ニューマーケットの繁殖牝馬セールで購入。ハービンジャーを配合し、デインヒルの3×3という野心的なインブリードを選択した。「このクロスがスピードの源。スタートしてすぐ前につけられるのは血統のおかげですね」と狙い通りの武器を手に入れ、同牧場としては2019年5着ニシノデイジー以来となるひのき舞台へ駒を進めた。
かつては先代の父・弘一郎氏が牧場を率いて、1973年の日本ダービーをタケホープでV。それからちょうど半世紀が経過した。今度は息子が夢をかなえる番だ。
「やっぱりダービーが生産者にとって一番の目標。それにおやじが88歳で、今の牧場があるのは父のおかげ。最後に夢を見せてあげたいなと思っています」
〝生涯一度の夢舞台〟で親子の夢物語を完成させる。(綿越亮介)