オークス優勝・リバティアイランドの口取り、左から川田将雅騎手、中内田充正調教師、片山助手、松崎助手=東京競馬場 先週のオークスでは取材を担当させてもらっている中内田充正厩舎の管理馬リバティアイランドが見事、牝馬2冠を達成。昨年暮れの阪神ジュベナイルフィリーズも制しており、これでGI・3連勝。前走の桜花賞から800メートルの距離延長を無難にこなして同世代ナンバーワンのポテンシャルを再認識させるに十分なパフォーマンスだった。
思い起こせばちょうど1年前、同厩舎の片山助手に「今年の2歳で楽しみにしている馬」を聞いたときに出てきた名前がこの馬。〝牧場でも評判になっているみたいよ〟と教えてもらい、ギャロップの臨時増刊の「丸ごとPOG」のドラフトで指名させてもらった。そして衝撃のデビュー戦。ペースが遅かったとはいえ、初の実戦でJRA史上最速タイとなる上がり31秒4をマーク。とんでもない馬が出てきたな、と衝撃を受けたことを昨日のことのように思い出す。
続くアルテミスSで土がついたが、ここは勝ち負けよりも馬混みに入れて折り合いをつける、というテーマを一番に置いてのもので、結果的にはここで教え込んだものがのちのGIで生きた。もちろん、今回のオークスのために調教方法を変えたり、桜花賞の後に馬に気が入ったことで、追い切り日を少し遅らせて微調整したりと、厩舎サイドの細かな工夫や気配り、献身的なケアなどがあってのものだということを忘れてはならない。
調整役の片山助手にオークス後に話を聞いてみた。「桜花賞を使って気が入ってきていたし、オークスまでのスパンが短く、暑い時期の輸送もあるので、中間のケアには気を使いました。2週間ほど短期放牧に出していたのですが、牧場サイドがうまく調整してくれたことで、再入厩後の調整がやりやすかったですし、レース2週前、1週前、当週と、馬の状態に合わせて、現状でできうる最善の調整を尽くしたつもり。1週前のコースでの調教が軽いのでは、と言われたりしましたけど、頭がいい子で、やると瞬時にスイッチが入ってしまうので、あえて1週前はソフトにしたんです。そして当週はジョッキーを乗せてきっちりスイッチが入ってきた。牝馬で輸送もあるので、1週前に攻めて当週はサラッと、というケースが多いのですが、馬一頭、一頭に個性がありますし、馬によっては調整方法も変わってくる。この馬は今回の調整でよかったと思っています」とコメント。道中の位置取りもおおよそ想定していたところだったそう。
それにしてもとても届かないような位置から他馬をまとめて差し切った桜花賞、中団の少し前で折り合い、余力十分に抜け出したオークスと、走るたびに強さとすごみが増している印象すら。無事に歩みを進められれば牝馬3冠の可能性は極めて高そう。これだけの馬を間近で取材できる喜びをかみしめつつ、秋もいい情報を読者に届けられるよう、精進していきたい。(関西エイト西尾)