シャフリヤールの馬上で笑顔を見せる福永騎手。デビュー時と同じ北橋厩舎の厩舎服で国内最後の調教に臨んだ 今月いっぱいで引退して3月から調教師に転身する福永祐一騎手(46)=栗東・フリー=が16日、ジョッキーとしては最後となる滋賀県・栗東トレーニングセンターでの調教騎乗を終えた。来週末はサウジアラビア国際競走に参戦するため、国内での騎乗は今週末が最後となる。フェブラリーSでコンビを組むオーヴェルニュ(栗東・西村真幸厩舎、牡7)の最終追い切りには、所属していた北橋修二厩舎の厩舎服で騎乗。27年の騎手人生のすべてを懸けて〝ラストラン〟に臨む。
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初心に帰るかのように、若かりし頃の〝勝負服〟に袖を通した。白地に左袖は青で3つの白い星、右袖は赤で白の三本輪。栗東トレセンでの最後の調教騎乗となった福永騎手は、デビュー時に所属していた北橋厩舎の厩舎服で登場した。
「家の物を整理してきたら出てきました。ジョッキーとして、この調教服で始まった。最後はこの服で締めたいな、と思いました」
昨年12月にJRA新規調教師免許試験に合格。2月末で騎手を引退し、3月からは調教師として新たな道に進む。25日にサウジアラビアで行われるリヤドダートスプリント(GⅢ、ダ1200メートル)でリメイク、サウジダービー(GⅢ、ダ1600メートル)でエコロアレスに騎乗。18、19日が国内では最後の雄姿となる。
それに伴って、騎手として栗東トレセンでの調教はこの日が最後になった。さまざまな名馬の背中を知り、苦闘しながら汗を流し、技術向上に励んできた地。それでも感傷的になることはなく、晴れやかな表情で仕事をこなした。
朝一番のCWコースにオーヴェルニュとともに姿を現すと、人馬の息ぴったりの走りを披露。最後のGⅠとなるフェブラリーSで手綱を取る相棒の仕上がりに「余力がある、いい追い切りができました。状態に関しては言うことなしですね」と太鼓判を押した。
その後は取材攻勢となったが、再び調教場へ。今度は2021年に日本ダービー3勝目を挙げたシャフリヤールと栗東坂路を駆け上がった。3月25日のドバイシーマクラシックで連覇に挑む相棒とコンビを組むことはもうないが、「めっちゃいい。楽しみになる状態。相手は強いと思うけど、今の感じなら面白いよ」と声を弾ませた。
土曜は阪神、日曜は東京で計16頭に騎乗する。今年はここまで17勝を挙げて全国リーディング5位。ムチを置くことが決まっても、より高みを目指す姿勢は変わらない。
「27年、人と馬に恵まれた騎手人生でした。最後のGⅠも騎乗依頼をいただいて幸運でした。いただいた機会をいい結果に結びつけられるよう、全力を尽くしたい」
刻一刻と迫る引退の時。時計の針は止まらない。最後まで、騎手・福永祐一を全うする。(山口大輝)
◆厩舎服 調教時に主に騎乗者が着用する、厩舎ごとにデザインされたジャンパーなどのこと。遠くからでも分かりやすくするため、目立つデザインにするケースもある。福永騎手は1996年3月のデビューから、2006年2月の厩舎解散まで、北橋厩舎の厩舎服で調教に騎乗していた。
【陣営はドラマを期待】
15日の降雪の影響で追い切りを1日スライドしたオーヴェルニュは、栗東CWコース単走で軽やかな脚さばきを披露。馬なりで6ハロン83秒7-11秒7をマークした。担当の梅内助手は「すべてジョッキー(福永騎手)にお任せしていました。いい感じで走っていたと思います。ジョッキーもいいコメントをしてくれました」と笑顔。福永騎手にとって最後のGⅠ騎乗となる一戦に「祐一くんのラストなので、頑張って仕上げていきたい。ドラマが起きてくれると信じております」と結んだ。
【オンラインサロンをオープン】
福永騎手はこの日、オンラインサロン『競走馬研究所』を開設した。競馬や競走馬の魅力を伝えるため、ファンとよりマニアックな話をできる場を設けた。来年3月予定の厩舎開業までをめどにした期間限定で、来週のサウジアラビア遠征の様子などの動画配信も行う準備を進めている。「やりたいなと思っていたことがいろいろあるからね。ファンの方とも交流できる機会があればいいね」と楽しみにする。
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