名馬が必ずしもデビュー前から期待をされていたわけではない。セレクトセールでの落札価格が1680万円で、新馬戦も5番人気の評価に甘んじていたアドマイヤムーンは、そうしたケースに当てはまる一頭だろう。しかし、デビューから6戦5勝で重賞3勝を挙げ、皐月賞で1番人気(4着)に推される活躍を見せた。
さらに札幌記念で並み居る古馬を打ち破ると、天皇賞・秋3着、香港カップでもフランスの名牝プライドにハナ差2着まで迫るなど、非凡な資質を発揮。満を持して、4歳初戦に選んだのが京都記念だった。ポップロック、トウショウナイトとの三つどもえという図式で、別定59キロの負担重量が懸念されて2番人気の評価。レースも実際に人気の3頭で決着したが、アドマイヤムーンはポップロックとの末脚比べをクビ差制して、見事な勝利を飾った。
この一戦をステップにドバイデューティフリーを勝ち、その後も宝塚記念、ジャパンCを制して2007年のJRA賞年度代表馬を受賞。種牡馬としてはファインニードル、セイウンコウセイという2頭のスプリントGI馬だけでなく、オースミムーンやラヴアンドポップ、マーニといった障害重賞ウイナーも送り出している。また、母の父としては23年のアメリカジョッキークラブカップを制したノースブリッジが出ており、その血は今後も広まっていきそうだ。(記事初出は2023年2月)
■アドマイヤムーン 父エンドスウィープ、母マイケイティーズ、母の父サンデーサイレンス。2003年2月23日生まれ。北海道早来町(現安平町)・ノーザンファーム生産。現役時の所属は栗東・松田博資厩舎。通算17戦10勝(うち海外3戦1勝)。
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