2歳戦のGIレースには、多くの1勝馬が参戦する。年によっては、かなりの〝狭き門〟となることも少なくない。2007年の阪神ジュベナイルフィリーズは、まさにこのケースだった。出馬投票を行った馬のうち、12頭が6頭分の出走枠を巡って抽選。この関門をクリアした中に、トールポピーも含まれていた。
7月の新馬戦では、のちに宝塚記念勝ち馬となるアーネストリーに2馬身差で完敗。3カ月半の休養を経て臨んだ未勝利戦をハナ差で制したものの、続く黄菊賞でヤマニンキングリーにクビ差屈したことから、阪神JFでは抽選対象に甘んじた。それでも、前述したように出走枠に滑り込むと、3番人気の支持を受ける。レースではややエンジンのかかりが悪いような場面もあったが、勢いがついてからは力強い末脚を発揮。追い込んできたレーヴダムールをクビ差退けて、2歳女王の座に就いた。
翌年にはオークスも制して2度目のGI制覇を果たしたが、その後は不振続き。失意のうちに引退すると、繁殖入りして2年目の12年6月22日に腸ねん転のため早世する悲運に見舞われた。まだ7歳の若さだった。この世に送り出した産駒はキングカメハメハとの間に生まれたオリエンタルポピー1頭のみ。同馬は4戦0勝で引退したが、2番子のシャーレイポピーがオープン入りを果たし、祖母の優れた血を証明した。ジャパンC勝ち馬ヴェラアズールも名を連ねる名門一族は、トールポピーから1本の細い糸がしっかりとつながれて、また新たな歴史が紡がれようとしている。(記事初出は2022年12月)
■トールポピー 父ジャングルポケット、母アドマイヤサンデー、母の父サンデーサイレンス。2005年1月30日生まれ。北海道早来町(現・安平町)・ノーザンファーム生産。現役時の所属は栗東・角居勝彦厩舎。通算14戦3勝。
この記事をシェアする