エプソムCを勝ったノースブリッジ。一昨年12月の葉牡丹賞を勝った後は一度も放牧に出ずに美浦に在厩している うだるような暑さの美浦トレセンで、一頭の実力馬が調整を続けている。6月のエプソムCで重賞初制覇を飾ったノースブリッジ(美浦・奥村武厩舎、牡4歳)は前走後も放牧に出ず、美浦に居残っている。いや、正確に言えば一昨年12月の葉牡丹賞を勝った後は一度も放牧に出ていないのだ。すでに在厩期間は1年半を超えており、〝美浦の主〟と言っていいだろう。「こんなにトレセンにいるのはアパパネ以来じゃないですか」と、自身が調教助手時代に携わった3冠牝馬を引き合いに出して奥村武調教師は笑った。
きっかけとなったのは葉牡丹賞後に患った右前脚のトラブルだ。蹄の中に空洞ができて蹄葉炎になりかねなかったことから、厩舎に置いて獣医師、装蹄師を交えながら慎重にケアを続けていった。すると「トレセンの居心地がいいのか、何だか雰囲気がいいんですよね。自分のウチみたいな感じで。だから今もそのまま残っているんです」とトレーナーは明かした。
現在はレースに出走したあとは放牧に出して、馬房を回転させるのが主流。そうでなければ、多くの預託馬を効率よく出走させることが難しいからだ。しかし、奥村武師は「オーナーの理解とトレセンの環境、調整に耐えられる能力があって初めてできること」と前置きしたうえで、「自分たちの手でやるというのは大事なことだと思うんです。アパパネのときにその効果も見ていますから。今は結果が全てみたいな言い方をされることも多いけど、そこまでの過程も大事にしたい。もう引退まで放牧に出すつもりはありません」と信念を語った。
前走後はさすがに激走の疲れが大きく、現在は慎重に立ち上げのタイミングを見計らっている段階。次走は未定だが、札幌記念(8月21日、札幌、芝2000メートル)や産経賞オールカマー(9月25日、中山、芝2200メートル)、毎日王冠(10月9日、東京、芝1800メートル)といったGⅡが視野に入ってきそうだ。その先にはGⅠのひのき舞台も待っていることだろう。指揮官のこだわりがさらに大きな実を結ぶ日を、楽しみに待ちたい。(東京サンスポ・漆山貴禎)
この記事をシェアする