競馬に携わる関係者に迫る夏競馬企画『You旬な人』がスタート。第1回はルーキーの今村聖奈騎手(18)=栗東・寺島良厩舎=だ。JRA新人女性騎手の最多勝記録を2カ月半で塗り替えたニューヒロイン。勝利を積み重ねられるようになった要因やプライベートの過ごし方などを聞いた。【聞き手・長田良三】
──デビューから約4カ月。16勝を挙げた上半期を振り返って
「デビュー当初は気負うことはなく、冷静に乗れていると思っていましたが、客観視してみるとそうではなくて…。道中、他のジョッキーと違ってレース慣れしていないぶん、浮いているところもありました。いい馬に乗せていただき、馬にいろいろ教えてもらい、たくさんの人が支えがあって、だいぶ周りも見られるようになってきたのかなと思います」
──女性騎手では最長の7週連続勝利を達成。何かきっかけはあった?
「模擬レースを勝ったことがなくて、レースを勝つってことが分からなかったなかで、(デビュー2週目の3月13日の阪神8Rを)ブラビオで初めて勝たせていただいたことは自信につながりました。一番の転機は新潟開催で腰を据えて乗れたことですね」
――第1回の新潟開催(5月7~29日)では4週で8勝を挙げた
「4月の阪神(開催)で1カ月間勝てなかったので、何が良くなったのか、何ができていないのか、を見極める時期でした。それ以上にたくさんの方々が多く乗せてあげようという気持ちが伝わってきたので、ありがたいなと思いました。(5月14日の5R・ブロンドケリーで)芝の長いところ(2400メートル)で勝てたのは自信につながりました」
--2着回数の差で逃したが、リーディング争いをした
「チャンスのある馬に乗せていただき、取りこぼしたレースも多かったのですが、以前より冷静に乗れていたぶん、馬に対しても気後れせず、レースに向かえたのではないかと思います」
──オフの過ごし方は
「同期の大半が北海道(開催)に行ってしまったのですが、いるときは遊んでいます。買い物に行ったり、ご飯を食べに行ったり。あとは朝起きて気分で決めます」
──SNSでは愛犬との写真をアップしている
「ミニチュア・ピンシャーで、名前はリーベです。デビューしてから飼いました。まだ10カ月ぐらいです。人懐っこいし、パッと顔を見て品があるなあと思ったので決めました」
──今週からは小倉を中心に騎乗する
「乗ったことはありませんが、父(栗東・飯田祐厩舎の今村康成助手)がジョッキーだったので、滞在していたときに行っていました。思い入れのある競馬場なのは間違いないです」
──コースの印象は
「開幕週はすごくきれいな馬場で、夏は牝馬が強いイメージがあります。小回りの競馬場ということもあり、コーナリングや道中のレースの運び方とかは重点的に意識していきたいです」
──今後の目標は
「目の前のチャンスを自分のものにするだけです。いい馬に乗せてもらって軌道に乗っていますけど、旬(だけ)の人にならないように。常に同じリズムでできるように頑張りたいです」
──同期では(同じく父・晃一氏が騎手=現調教師=だった)角田大河騎手とは仲がいい
「彼は乗るのがうまいし、競馬学校のときから常に私の上にいて超えられなかった存在ですからね。努力をすごくしてきたのも分かっていますし、私には何が足りないのかなと思ってずっとやってきました。いつか抜かしてやるぞ、という気持ちでした」
──新人で自身(16勝)に次ぐ2位の10勝を挙げている
「私が(第3場の)新潟で乗せてもらっていたときも、彼は本場でずっと頑張っていたので。同期の中で唯一、レースの話をする関係ですね。日曜の競馬終わりにご飯を食べに行っても、その週のレースを見て『このレースは、こうやってんけどなあ』という話をします。私の性格、すごく負けず嫌いで何が嫌だとかを分かってくれていますからね。幼なじみであり、戦友であり、いい仲間だなと思います」
―─トレーニングで意識していることは
「下半身が甘いので、トレーナーさんをつけて毎週トレーニングしています。レースでは想像をはるかに超えて肉体的なダメージが大きいので、マッサージなどのアフターケアもしています」
──調教の合間には福永騎手や川田騎手にアドバイスをもらっている
「プロスポーツジョッキーとしての考え方ですね。私は引き出しがないので教えていただいて、こうなのかな? というのをすり合わせしています」
──競馬場ではパトロールビデオを見ながらよく話をしている
「(同じ馬に)以前乗っていた騎手には『私はこういう風に感じたのでこう乗ったんですが、どうですか?』と。乗っていないジョッキーには客観的に見てもらって『こうだったんですけど、こういうときはどう思いますか?』という感じで聞いています」
──好みの馬は
「馬は全部好きですけど、顔で決めます。目つきとか表情を見ますね。乗ったらどの馬も乗り味が違うし、特殊な乗り味をしているなという馬もおもしろいです。答えがない世界なので勉強させてもらっています。馬は小さな頃からずっと横にいる存在でしたし、天職だと思っています。馬と一緒にいろんな花を咲かせたいなと思います」
──5月14日の新潟4Rでは、父・康成助手が稽古をつけるモズミツボシで勝利した
「はっきり言って、うまく乗ったレースではなかったです。モズミツボシと厩舎の方の力に助けられました」
──父とはどんな話をしたのか
「競馬が終わってすぐ電話をしました。親子なので情報交換もすごく細かかったので。『いい仕上がりだよ』と背中を押してもらっていたので、自信を持って乗ろうという気持ちでした。久々で返し馬では気負っていて、向こう正面でかみつづけていました。逃げていた馬の手応えがなかったので、早めに動いて押し切る形になりました。(父には)『馬の力で勝たせてもらったし、次に生かせるレースができなかった』とはっきり言いました」
──同日の5Rではブロンドケリーで自身初めての連勝を飾った
「前走の阪神で4着で、この馬の能力をどう生かすかだけでした。馬は本当に完璧な状態で持って来てもらっていたので。馬群の中で我慢して最後の直線は外に出す形でいいレースができたし、うれしかったです。自厩舎で(初勝利の)ブラビオ以外に勝っていなかったので」
──長丁場だと折り合いが大事になってくる
「長い距離になればなるほど、冷静さを欠いてはいけないですし、馬とのリズムを大事にして、最後の直線でいい脚を使わせるという考え方で乗っているので。長距離で馬が頑張ってくれたのがうれしいです」
──調教や実戦で初めての馬にまたがるときに気を付けていることは
「馬乗りって感覚だと思うので、パッと見たときに馬のテンションを確認して、返し馬でのフィーリングで乗るようにしています。血統背景を確認したり、前走で乗っていたジョッキーに話を聞いたりもしているんですけど、意外とむきになるなと思ったら触らないようにしたり、気がないなと思ったら気持ちを続かせるようにもっていたり。トップジョッキーに及ぶような対応はないので、試行錯誤をしながら頑張っているところです」
──現在16勝を挙げていて、芝で4勝、ダートで12勝を挙げている
「ダートのレースに乗っているほうが多いですし、ダートのほうが減量も利くので。取りこぼした2着も多いですし、そういう馬で一発回答を出すにはどうすればいいか、しっかり考えなければならないと思います」
──16勝のうち14勝を1600メートル以上で挙げている
「長い距離のほうが向こう正面に入ってから一度、頭の中で整理がつく感じがします。自分の考えていたレースプランも含め、手応えがいいけど、ペースが速いなあとか。その中ではまっている感じもあります。短距離はスピード決着になりますし、冷静に乗れていないわけではないんですけど、長い距離のほうが馬のリズムを感じられているんだと思います。短い距離でも結果を出したいなと思っています」
──デビューして4カ月がたった今のストロングポイントは
「デビューした当初はフレッシュな楽しみがあったんですけど、どれだけこの世界が厳しいかを痛感しましたし、上には上がいるので。少しでも上の人にかみつけるようにという気持ちで乗っています。温かく見守ってほしいなと思います」
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今村騎手は今週行われるCBC賞(7月3日、小倉、GⅢ、芝1200メートル)に出走するテイエムスパーダ(栗・五十嵐、牝3)で、初めて重賞レースに騎乗する予定だ。
今村 聖奈(いまむら・せいな) 2003(平成15)年11月28日生まれ、18歳。滋賀県出身。22年3月に栗東・寺島良厩舎所属で騎手デビューし、同13日阪神8Rのブラビオで初勝利。5月22日新潟3Rのタマモエイトビートで10勝目を挙げ女性騎手のデビュー年最多勝記録を更新した。27日現在JRA通算182戦16勝。父は現調教助手の康成元騎手。