白く輝く馬体が、軽やかに、伸びやかに急勾配を駆け上がる。GⅠ3勝目を狙うアイドルホースのソダシが、栗東坂路で躍動。エスコートした吉田隼騎手が好感触を口にした。
「前の馬をみて、折り合いを確認しながら、最後の1ハロンの馬の反応をみましたが、よかったと思います。いい動きをしていました」
僚馬ショウナンナダル(未勝利)の1、2馬身後ろで、落ち着きを払いながら、リズムよく駆け上がっていく。ラスト100メートル付近でスッと加速し、クビ差先着。時計は4ハロン54秒1-12秒3と控えめだが、4日には栗東CWコースでこの日最速のラスト1ハロン10秒9(6ハロン84秒2)を計時するなど、出走態勢は万全だ。
ジョッキーは「(芝のマイル戦で)ペースも流れるでしょうし、東京マイルを前々から押し切ることは難しい。馬群の中での競馬もできるようにしたかった」と追い切りの意図を説明する。近走の最終追いは単走で行うことが多かったが、実戦を想定した併せ馬を消化。ダートの近2走は逃げ、2番手からの競馬だったが、久しぶりの芝の実戦へ向けて我慢を覚えさせた。「レースにいってどうなるかはやってみないと」と前置きをしながらも「やりたいことはやれました」とうなずいた。
昨秋は気性的なモロさを露呈し、秋華賞10着、チャンピオンズC12着と惨敗。前走のフェブラリーSは3着と復調を示したが、この中間も精神面の安定が大きなポイントだった。引き運動の際には、「完歩が大きくて、すぐに前との距離が詰まる」(今浪厩務員)ため、前に馬がいない状況で伸び伸び歩かせるなど、気分を損ねないようにケア。メンタルを重視した調整が、最終追い切りの落ち着いた走りにもつながっている。
今回は阪神JF、桜花賞とGⅠ2勝を含む3戦3勝の芝1600メートル戦。東京マイルでは、2歳時にGⅢアルテミスS勝ちもあり、舞台設定は文句ない。吉田隼騎手は「集中力といった面ではワンターンの東京マイルは合っています」と適性を認める。東京競馬場周辺は、週末にかけて天気予報が下り坂。道悪馬場の可能性もあるが、須貝調教師は「芝、ダートを問わずに頑張ってくれる馬。ドロドロになって、白い馬体が真っ黒になって帰ってくるかもしれないですが、そうなってもソダシはソダシなので。道悪の経験はないけど、対応してくれると思う」と期待を込めて送り出す。
最強牝馬決定戦にふさわしい好メンバーが集まった春の女王決定戦。強敵を蹴散らし、まばゆいほどの輝きを取り戻す。 (山口大輝)
★須貝師TALK
――最終追い切りは
須貝師「あまり調教でストレスをかけないことに重点を置いて、うまくいったと思います。落ち着いて伸び伸び走れていました」
--フェブラリーSは3着
「決してダートが走らないとは思っていなかったので、マイルのそこを使いました。強豪相手によく頑張りました」
--成長を感じる部分
「馬体的にはそう目立った感じではないですが、やはり精神的にどっしりしてきたかな、と。年齢重ねるうちに、そうなってきたんじゃないかなと思いますね」
--改めて長所は
「とにかく走っている姿をみるとシャープできれいですよね」
--意気込みを
「GⅠ馬のお姉さんがいっぱいいるので、胸を借りるつもりで頑張ってほしいです」
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桜花賞馬は同距離のヴィクトリアマイルと相性が良く、延べ16頭が出走し5勝、2着1回、3着1回。近2年は、桜花賞馬アーモンドアイ、グランアレグリアが勝利している。また、フェブラリーS1~3着馬が、のちに芝のJRA・GⅠで連対した例は3回。今回ソダシが勝てば、牝馬としてはトゥザヴィクトリー以来2頭目となる。