ボートレースクラシックで女子初のSG制覇を成し遂げた遠藤エミ 歴史を動かした! 優勝戦が21日の第12Rで争われ、1号艇の遠藤エミ(34)=滋賀=がインからコンマ07のスタートで逃げて快勝。女子レーサー史上初となるSG(スペシャルグレード)制覇を飾り、賞金3900万円を獲得。当地で行われる年末のSGグランプリ(12月13日~18日)出場もしっかり見えてきた。
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1952年、初めて長崎県・大村でボートレースが開催されてから70年。その発祥の地で、新たな歴史が刻まれた。女子選手が最高峰のSG競走を初制覇。前日の準優勝戦を勝ち、優勝戦で最も有利と言われる1号艇を手にした遠藤エミが、好スタートから堂々と逃げ切り完勝。偉業を達成した。
「めちゃくちゃうれしいです…」。喜びを切り出した遠藤の目から涙があふれ出た。前夜はプレッシャーで、眠ることができなかったという。
「きつかったです。普通にしようと思っても、すごく緊張して、感じたことがない感情がやってきました。スタートもターンも失敗したと思うけれど、エンジンが(優勝へ)連れていってくれました」
そう謙虚に振り返ったが、ライバルの5人を最後まで寄せ付けない見事な内容でのVだった。
男子52キロ、女子47キロの最低体重が設けられているが、それを除けば男女がノーハンデでぶつかり合う競技。だがボートレーサー1586人中で、女子は240人と数が少なく、今大会にも女子は遠藤、平高奈菜、守屋美穂の3人しか出場していない。SGの優勝戦には過去に寺田千恵(岡山)と横西奏恵(引退)の2人が進出しただけで、女子GⅠ、GⅡで通算6度優勝の実績がある遠藤にとっても高い壁だった。ここ数年は「上の舞台で結果を残せるようになりたい」と口にし、学生時代にソフトボールで鍛えた肉体に、イメージトレーニング、体幹トレーニングを積み重ねてきた。人一倍の向上心で実力を身につけた34歳が、自身28度目のSG挑戦で、ついに頂点に上り詰めた。
「自分にSGを取ると言える覚悟が足りないと思った。覚悟を持って取り組んでいこうと思っていたところ。数年前ならば、たぶん無理だった」
優勝戦前日には「歴史に名を刻みたい。冷静に勝ちにいきたい」と〝勝利宣言〟。強い気持ちを最後まで貫いた。
今回の優勝で、次回のSG、オールスター(宮島ボートレース場、5月24日開幕)の出場権とともに、賞金3900万円を獲得。今年の獲得賞金4833万6000円で男女を通じ首位に立ち、大村で行われる年末のグランプリ(賞金ランク18位までが出場)進出が、はっきり見えてきた。
「まだまだうまくない。強い選手になりたい」
女子レーサー初のグランプリ制覇&賞金王へ―。遠藤エミの〝夢の大冒険〟は続いていく。(加納空樹)
◆遠藤の師匠・深井利寿(滋賀)「おめでとう。歴史に残る、すごいことを成し遂げましたね。デビュー当初からスピードがあって、レースもうまかった。センスを感じていたし、このまま成長したらいいレーサーになるんじゃないかと思っていました。今後はもっとSGを獲ってほしいし、やっぱり期待するのは女子初のグランプリ制覇。これからも〝初物づくし〟でいってほしいですね」
★水上の格闘技…その激しさから「水上の格闘技」ともいわれるボートレースの大きな特徴の一つが、女子が男子と同じ土俵で戦うこと。志望動機を「男子選手と対等に戦えるから」と話す女子選手も少なくない。ただ最低体重制限が男子52キロに対して、女子47キロと5キロの差があり、この点は女子有利といわれているがSG優勝はなかった。1952年4月、今回の舞台である大村ボートで最初のボートレースが行われた。同年5月には、則次千恵子(引退)が女子として最初に選手登録された。1586人の現役ボートレーサーのうち、約15%にあたる240人が女子。全レーサー最年少17歳の神里琴音も女子だ。
★SG(スペシャルグレード)…ボートレースには5つのグレード(SG、GⅠ、GⅡ、GⅢ、一般)があり、その最高峰。ボートレースクラシック(3月)、ボートレースオールスター(5月)、グランドチャンピオン(6月)、オーシャンカップ(7月)、ボートレースメモリアル(8月)、ボートレースダービー(10月)、チャレンジカップ(11月)、グランプリ、同シリーズ(12月)の8開催(9レース)。
【遠藤エミ・アラカルト】
★プロフィル 1988(昭和63)年2月19日生まれ、34歳。滋賀県出身
★スポーツ歴 八幡商高時代はソフトボールで県大会4強
★ボートレーサーを目指したきっかけ 姉・ゆみ(元選手)に試験を一緒に受けようと誘われて
★デビュー 2008年5月6日、びわこでデビュー(6着)
★戦歴 12年11月、鳴門で初優勝。GⅠは17年12月、大村クイーンズクライマックスで初優勝。通算優勝37回(うちGⅠ2回、SG1回)
★ボートレースの魅力 音、迫力、最後までどうなるか分からないところ
★目標 強い選手になること
★常日頃心掛けていること イメージトレーニング
★愛読書 イチロー選手の本
★好きな食べ物 焼き肉
★休日の過ごし方 ショッピング、旅行
★好きな言葉 克己(己に克つ)
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