2018.3.5 16:02

【山田将史の鉄道コラム】「山田将史の出発進行!」第16回「大雪と鉄道」

【山田将史の鉄道コラム】

「山田将史の出発進行!」第16回「大雪と鉄道」

1月22日、首都圏の各線は雪に見舞われての運行となった。

1月22日、首都圏の各線は雪に見舞われての運行となった。【拡大】

 3月になりましたが、まだまだ寒い日が続きますね。この冬、新潟、東京、福井、そして北海道と全国的に例年以上の大雪に見舞われました。

 ■列車が立ち往生した信越本線

 豪雪の本場・新潟ですが、12月に信越本線で列車が立ち往生したことが話題となりました。もともと雪への対策はなされている路線ではありますが、それでも追いつかないほどだったといいます。

 信越本線や上越線といえば、全国的に大雪となった昭和38年豪雪が有名です。新潟駅を出発した急行列車「越路」号が途中雪で立ち往生し、その後も開通の目途が立たず全国から除雪要員がかき集められ、乗客は一時旅館に宿泊するという事態になりました。終点の上野駅に到着したときにはなんと106時間もの遅れを抱えていたといいます。今であれば走らせ続けずに運休にしてしまうことが多いでしょうから、この記録が塗り替えられることはそうそうないでしょう。

 「雪で立ち往生する」という光景にあまり実感がわかないかもしれませんが、ちょっとした吹きだまりにぶつかってなんとか進もうと押し引きしていると、そうこうしているうちに前後に雪の壁が出来上がってしまい身動きがとれなくなるという事態になります。私もかつて島根の三江線に乗っていた際、直接雪の影響を受けたわけではないですが雪の重みで倒れた竹が線路をふさいでしまい、列車で押しても進めなくなり途中の線路で降ろされたことがありました。車両の力はとても強いですが、それでも時として自然にかなわないことがあります。

 ■除雪能力に乏しい首都圏の鉄道網

 通常雪に見舞われることの少ない首都圏では、1月の大雪により各線で運休を余儀なくされました。前回の大雪は2014年でしたから4年ぶりとなります。その2014年と聞いて思い出すのが、東急東横線での列車衝突事故です。車輪とブレーキを制御する装置の間に雪が固まってしまい制動がほとんどきかず、元住吉駅で先に停車していた車両に衝突した事故です。事故車両は耐雪ブレーキを備えていたのですが、にも関わらず止まりきることができませんでした。

 そのようなこともあり、今回も早々に運転取りやめを決める路線が多く外出を避けるよう呼び掛けていました。今回の首都圏に降った程度の雪であれば、北海道や本州の日本海側ではなんのこともなく運行を続けています。しかしそんなことができるのは、普段の除雪があるからにほかなりません。首都圏にはそれほどの除雪設備はありませんが、かといって何年に一度あるか分からない大雪への対策は投資に見合ったものになるとはいえないでしょう。前もってわかっている状況であれば、できるだけ移動しないことが最善の対策です。

 ■雪に強い新幹線

 北陸地方が大雪に見舞われた際、一時期福井や金沢といった町は陸の孤島と化していました。大阪方面、名古屋方面、そして東京方面に向かう交通網が、鉄道や飛行機はもちろん道路も全てストップしてしまったのです。コンビニや飲食店から商品が尽きた話は報道で知った人も多いと思います。

 そんな中、唯一動き続けたのが北陸新幹線でした。まもなく金沢開業から3年を迎えますが、その除雪能力の高さをいかんなく発揮した形です。北陸地域から大阪・名古屋方面へ移動する人は、北陸新幹線で迂回(うかい)して長野・東京経由での振り替えをされたほどです。

 新幹線が高い耐雪能力を備えているのは過去の教訓によるものが大きいです。最初に開業した東海道新幹線では当初雪の影響はさほど問題視されていませんでした。ところがいざ開業してみると、岐阜県関ヶ原付近の雪に悩まされることになり今でも毎年冬になるとこの区間で数分から数十分程度の遅れが頻発しています。バラスト軌道という砂利を敷いた軌道を用いており、除雪能力に乏しかったことが大きいです。

 その反省を踏まえ後に開業した上越新幹線や東北新幹線では、スラブ軌道というコンクリート軌道を採用しておりスプリンクラーで常時融雪を行うという対策をとっています。通常雪に水をかけて溶かしてしまうと冷えて固まってしまいかえって危険なのですが、常にお湯を流し続けることによって固まらないようにしています。

 北陸新幹線のJR西日本区間では開業にあたり除雪作業車を23両配備し、夜間に除雪を行っています。またスプリンクラーのほかシェルターで覆われている区間もあり、高架橋や高架下に雪をためたり捨てたりするスペースを確保しています。そういった対策のかいあって、大雪でも運行を続けることができたのです。

 残念ながら新幹線は貨物輸送を行っていないので物資の供給という面では役には立ちませんでしたが、それでもほかの手段がみな寸断されるなかで走り続けたのは非常に心強いものがあったでしょう。この影響を受けて、新幹線建設中の福井県ではますます新幹線に期待する声が高まったといいます。

 ■長らく運休していた廃止予定の三江線

 あと1カ月ほどで廃線となる、島根の江津と広島の三次を結ぶJR西日本の三江線。もう残すところわずかですが、三江線も大雪の被害を受けていた路線でした。日本海側を走る路線でもともと雪の影響を受けやすい地域ではあったのですが、長期間運休に至るほどの大雪になったのは珍しいことでした。

 同じく島根県を走るローカル線に木次(きすき)線というのがあります。こちらもかつてはスキー客向け臨時列車が走るほど雪の降る地域ですが、最近は冬期になると積雪による長期間運休が常態化しています。木次線の中でも南側は1日3往復しか走らない過疎地域なのですが、12月あるいは1月に大雪が降ると、もうその後は除雪せずに3月末に雪が解けるまで一部区間は完全に運休してしまうのです。

 今年も三江線も、例年の木次線と同じような状況で雪解けまで運休が続いてもおかしくない状態でした。しかし、違ったのはまもなく廃止となる路線であるということ。このまま雪を被り続けて廃止になってしまうことも懸念されるほどだったのですが、JR西日本の職員のみなさんが時間をかけて除雪をされたおかげで、なんとか運転再開にこぎつけることができました。そのおかげで、最後のときを味わう旅行者もまた足を運び始めているようです。

山田将史(やまだ・まさふみ)

「山田将史」イメージ画像1993年4月18日生。大阪府大阪市出身。中学1年生で鉄道旅行をはじめ、高校3年生でJR線乗車率99%達成。以降ヨーロッパを中心に海外の鉄道にも乗り始める。鉄道旅行歴10年を経た2016年、初の著書となる鉄道同人写真集「北海道の廃駅2016」を出版。10年後には世界的に有名な鉄道旅行家になることを目指して活動中

  • 北陸新幹線は大雪の中でも走り続けた。
  • 大雪のため長らく運休していた三江線。