2020.12.3 12:00

【ベテラン記者コラム(77)】バンカーで苦戦の渋野日向子で思い出したレジェンド

【ベテラン記者コラム(77)】

バンカーで苦戦の渋野日向子で思い出したレジェンド

特集:
記者コラム
ベテラン記者コラム
渋野日向子

渋野日向子【拡大】

 コロナ禍に揺れた2020年のゴルフの国内女子ツアーは「JLPGAツアー選手権リコー杯」で年内の日程を終えた。約4カ月遅れの開幕となった6月の「アース・モンダミン杯」から11月最終週の「リコー杯」まで14試合。8月からの2カ月間の海外遠征で6試合の出場にとどまった渋野日向子(22)=サントリー=は「リコー杯」の3位が最高だった。

 「リコー杯」の4日間で渋野はグリーンサイドのバンカーに5度つかまり、サンドセーブ率(グリーンサイドのバンカーに入ってから2打かそれより少ない打数でカップインする率)は0%。優勝した原英莉花(21)=日本通運=とは4打差だったのだから、5度のバンカーショットをパーもしくはバーディーにつなげていれば、優勝したことになる。

 “たられば”は実に意味のないことだが、バンカーに苦戦する渋野を見ていて思い出したことがある。2010年「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」の会場だったグランデージGC(奈良)で、当時日本女子プロゴルフ協会会長の樋口久子プロとラウンドする機会に恵まれた。

 国内ツアー4勝、海外メジャー1勝の渋野と一緒にするのは大変申し訳ないが、あのときの自分もバンカーで悪戦苦闘した。やたらバンカーに入り、出ない。人に教えることが大好きな樋口さんのレッスン開始である。最初は身ぶり手ぶり。それでも出ない。業を煮やした世界ゴルフ殿堂入りのレジェンドがバンカーに入り、ラウンドレッスンが始まった。

 珍しくパーオンしたホールだったが、バーディーパットは後回し。ありがたい直々のレッスンのおかげで、その後は“砂遊び”がなくなった。ホールアウト後、その話をすると樋口さんをよく知るベテラン記者に「樋口さんがバンカーのレッスン?! ありえない話だよ」と驚かれた。

 正確無比なショットを武器に国内69勝、海外3勝(うちメジャー1勝)を挙げた樋口さんは、ほとんどバンカーに入れたことがないという。真偽のほどは定かではないが、だからバンカーの練習はしないという伝説まで生まれた。後日、その話を樋口さんにすると「私だってバンカーに入れるわよ」と笑っておられたが、とにかくぜいたくで貴重な経験だったことだけは間違いない。

 樋口さんに次いで日本人2人目の海外メジャー覇者となった渋野。22歳のゴルファーがレジェンドの域の年齢に達したときに、どんな伝説を残しているのか今から楽しみだ。(臼杵孝志)