2021.5.20 14:55

夏川草介さん、医師としてのコロナ治療現場をもとにした新刊「臨床の砦」に「静かに頑張っている人たちがいる」

夏川草介さん、医師としてのコロナ治療現場をもとにした新刊「臨床の砦」に「静かに頑張っている人たちがいる」

「臨床の砦」を出版した小説家で医師の夏川草介さん

「臨床の砦」を出版した小説家で医師の夏川草介さん【拡大】

その他の写真(1/2枚)

 小説家で消化器内科医の夏川草介さんが、新型コロナウイルスの医療現場での出来事をもとにした小説「臨床の砦」(小学館)を4月に出版し、話題を呼んでいる。

 ベストセラー小説「神様のカルテ」で知られる夏川さんは長野県の病院でコロナ治療に従事。小説では架空の感染症指定医療機関を舞台に、医師歴18年目の消化器内科医の視点で、第3波が到来した2021年1月3日から2月1日までの約1カ月間が描かれる。

 オンライン取材に応じた夏川さんは、第3波の医療現場に衝撃を受けたことが作品化の理由と説明。「普通なら本を書く感情にはならないが、それを上回る信じられない光景を見た。医療現場では何が起きているのかを伝えたいという思いもあった」と明かした。

 満床による入院拒否、院内感染など医療体制の逼迫、追い詰められる医師たち-。第3波の最中、勤務後の1、2時間を使い、2週間で完成した作品について「フィクションとして書いたが、嘘は書いていない。コロナでは人の怒りばかりが取り上げられがちだが、静かに耐えて頑張っている人たちがいることが伝われば」と力を込める。

 コロナに端を発した偏見や誹謗中傷は後を絶たないが、夏川さんも例外ではなく、地域医療従事者として苦慮してきたという。都市圏と比べてコミュニティーが狭い地方は、1人の感染が判明すると周囲の人に情報が広まりやすく、「命の危険もそうだが、社会的に立場が危険にさらされてしまう。意味合いが違う怖さがあります」と指摘した。

 収束の気配が見えない中、数カ月前の医療現場での出来事をもとにした作品の出版には当初、迷いもあったというが「コロナに関しては、病院の中と外では(認識の)ギャップが非常に大きい。ドクターの思いを代弁したという思いもあります」。これからも小説を通して医療従事者の“声”を伝えていく。