2021.4.20 04:00

東出昌大、なぜ彼は走り続けたのか…映画「草の響き」で天才作家の軌跡

東出昌大、なぜ彼は走り続けたのか…映画「草の響き」で天才作家の軌跡

3年ぶりに映画主演する東出。夭折の作家・佐藤さんが自身の経験を投影した主人公を演じる(c) HAKODATE CINEMA IRIS

3年ぶりに映画主演する東出。夭折の作家・佐藤さんが自身の経験を投影した主人公を演じる(c) HAKODATE CINEMA IRIS【拡大】

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 俳優、東出昌大(33)が、今秋公開の映画「草の響き」(斎藤久志監督)に主演することが19日、分かった。41歳の若さで亡くなった作家、佐藤泰志さんの文壇デビュー作で、故人の故郷である北海道・函館を舞台にした自伝的ヒューマンストーリー。約3年ぶりの映画主演で、精神病の治療のために函館の街を走り続ける男を熱演する東出は「羽毛のように柔らかい函館の西陽を受けながら、皆で作った映画です」と渾身作をアピールした。

■函館を舞台に

 世界三大夜景にも数えられる函館を舞台に、東出が夭折した天才作家の“軌跡”をなぞる。

 「草の響き」は、故郷の函館を舞台にした作品を多く書き、人々の苦しみや悲しみを描き出してきた作家・佐藤泰志さんの本格的な文壇デビュー作の初映画化。芥川賞候補にもなった「きみの鳥はうたえる」に収録された短編小説が原作だ。

 精神科に通いながら、治療のために函館の街を走り続ける男が路上で出会った学生たちと心を通わせる物語で、自律神経失調症を患い、函館に戻った佐藤さんの体験を主人公に投影している。

 41歳で自ら命を絶った故人の作品は、死後絶版となったが、カナダ・モントリオール世界映画祭の監督賞に輝いた2014年公開の「そこのみにて光輝く」などこれまで計4作が映画化。再び注目を集める中、昨年に没後30年の節目を迎え、原点でもある「草の響き」の映画化も決まった。

■3年ぶり映画主演

 今作で佐藤さん自身ともいえる主人公に抜てきされた東出は、2013年後期のNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」でヒロインの夫を好演してブレーク。映画主演は18年公開の「寝ても覚めても」以来3年ぶり。16年の映画「聖の青春」では将棋の羽生善治九段(50)をリアルに演じて話題になり、今回の繊細な役にも期待が高まる。

 菅原和博プロデューサーは「若かりし頃の佐藤泰志の分身のような男が、函館の街を一人黙々と走る。そのイメージを考えたとき、主演は東出昌大さん以外に思いつかなかった」と絶賛する。

■柔らかい西陽の中

 熱い思いを担う東出は、風変わりでストイックな主人公を演じるにあたり、「心を病んだ男がそれでも毎日走る理由は、きっと『良くなりたい』からだと思います。羽毛のように柔らかい函館の西陽を受けながら、皆で作った映画です。楽しみに待っていてください」と呼びかけた。

 フランス・カンヌ国際映画祭に出品された「寝ても-」やイタリア・ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を獲得した「スパイの妻」に出演するなど“国際派”だけに、今作も海を越えるかもしれない。

映画「草の響き」

精神に失調をきたした失業中の主人公・工藤和雄(東出)は、妻の純子とともに故郷の函館に戻る。働くことができず、精神科に通いながら雨の日も晴れの日も治療のために街を走り続ける。そんな和雄が、路上で出会った若者たちと心を通わすようになり、何かが変わり始める…。和雄と周囲の人々が織りなす人間模様を描く。