2020.8.21 07:30

【飯島七段の目】わらしべ長者のような攻撃で回復不能な大差 常識外の封じ手△8七同飛成/将棋

【飯島七段の目】

わらしべ長者のような攻撃で回復不能な大差 常識外の封じ手△8七同飛成/将棋

特集:
藤井聡太棋聖
飯島栄治七段

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 将棋 第61期王位戦第4局第2日(20日、福岡市・大濠公園能楽堂)高校生プロで後手の藤井聡太棋聖(18)が、先手の木村一基王位(47)を80手で破り、4連勝でタイトルを奪取した。タイトル2期獲得の規定により、最高の九段に次ぐ八段に昇段した。藤井二冠は18歳1カ月で、1992年に羽生善治九段(49)が作った21歳11カ月の年少2冠保持、58年に加藤一二三・九段(80)が作った18歳3カ月の年少八段昇段を、それぞれ更新した。

 これほど一方的な展開は予想していなかった。この日の藤井棋聖はあまりに強すぎた。完勝で最年少2冠が誕生した。

 最大の勝因は封じ手の△8七同飛成。銀を奪う代わりに、最強駒の飛車を失う一手には、戦闘開始の号砲をいきなり鳴らすリスクもあった。だが藤井棋聖は、この常識外の手を選んだ。

 木村王位の意表を突いた封じ手から始まった戦いは、ハイスピードで進んだ。藤井棋聖をさらに勝利に近づけたのが、歩による攻め。52手目で打った△8八歩は、敵陣で成って相手の香車を取り、この香が木村王位の飛車を失わせた。まるでわらしべ長者のような攻撃で回復不能な大差をつけた。

 あまりの展開の速さに、木村王位は相手の攻撃を受け続けて逆にペースをつかむ、自身の得意な形に持ち込めず、持ち時間を30分以上も余して投了に追い込まれた。調子を上げて本局に臨んでいただけに、4連敗のショックは大きいと思う。だが、木村さんの好きな言葉「百折不撓」(ひゃくせつふとう=何度失敗しても、くじけず立ち上がること)に期待したい。

 藤井棋聖は二冠となり、羽生善治九段が歩んだ全冠制覇の道に立った。コロナ禍で閉塞(へいそく)感が漂う日本に、立て続けに明るい知らせをもたらし、全国を元気づけている。将棋界に「藤井時代」を開こうとしている18歳は、時代に導かれたヒーローなのかもしれない。(飯島栄治七段)

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