2019.3.1 18:19

覚醒剤に溺れた青年と家族を描く「まっ白の闇」 実話だからこそ分かる薬物依存症の終わりなき苦悩と更生/週末エンタメ

覚醒剤に溺れた青年と家族を描く「まっ白の闇」 実話だからこそ分かる薬物依存症の終わりなき苦悩と更生/週末エンタメ

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週末エンタメ芸能記者コラム
映画「まっ白の闇」で主人公の弟を演じる百瀬朔(右)と兄役の小澤亮太

映画「まっ白の闇」で主人公の弟を演じる百瀬朔(右)と兄役の小澤亮太【拡大】

 世間を騒がす芸能記事のひとつに薬物事件がある。人気タレントが覚醒剤、大麻など違法薬物の使用・所持で逮捕されるたび、薬物依存症の詳細や民間リハビリ施設のダルクなどについて報じてきたが、「まっ白の闇」を鑑賞後、記事は知識にすぎないことを痛感させられた。

 同映画は、俳優、内谷正文(うちや・まさぶみ、49)が自身の実体験をもとに薬物依存症の恐ろしさを描いた衝撃作。

 内谷が2005年から上演する薬物依存の一人体験劇「ADDICTION 今日一日を生きる君」をベースに映画化し、マリファナを吸っていた兄の誘いをきっかけに薬物を始めた弟が、大麻所持で逮捕された後、覚醒剤の虜になり、もがき苦しむ姿に迫る。

 主人公の弟を若手俳優の百瀬朔(24)、内谷の“分身”である兄を小澤亮太(31)が熱演。主人公が更生のため入所する「茨城ダルク 今日一日ハウス」の代表を村田雄浩(58)が演じている。

 純粋で心優しい弟が薬物にハマり、家族が知らない間に“別人”に豹変していく様は地獄絵図としか言いようがない。

 覚醒剤という白い粉に翻弄され、心も体ものっとられていく…。たとえば報道では幻覚などと記されて終わる薬物依存の症状も、劇中では自分の元を去った恋人が“白い悪魔”の権化となって常につきまとい、「家族は敵だ」とささやき、主人公の恐怖心や猜疑心を極限まであおり続ける。常に誰かが自分を襲うという不安から逃れるために多幸感をもたらす薬を使うという繰り返しで、廃人と化していくのだ。

 何より心が痛むのは、依存症の弟やそれを助けようとする家族も、もがけばもがくほど底なし沼に沈んでいくことだ。

 主人公は両親にとっては子供、兄にとっては弟。彼らにとって生まれたときから守る存在であり、かわいくてたまらなかった“あの子”が壊れていく…。それを見続けなければならない心境を自分に重ね合わせると、ただただ胸がしめつけられる。

 観客も消耗してしまうシーンの連続に“転機”をもたらすのがダルクの存在だ。村田演じる薬物依存症だった元ヤクザの代表は「薬物依存症は一生治らない病気。家族も共依存だ」と断言する。そこから抜け出すためには、ダルクの施設名同様、本人がやるべきことは「今日一日を薬物なしで乗り切る」ことを一生繰り返すのみだと諭す。

それを死ぬまで続けるために、患者が甘えたり、八つ当たりできる家族は

、“愛ある突き放し”で本人の元を去らなければならないのだという。

 主人公はダルクに入り、同じ依存症の患者と薬物にハマったきっかけや再びクスリをやりたくなってしまう衝動や不安をざっくばらんに話し合い、“今日一日”を薬物なしで綱渡りのように過ごしていく。

 家族もまた依存症になった身内を抱える苦しさやその道から救えなかった後悔を家族会で吐露し合い、病気となった彼らに翻弄されるうち共依存になっていた自身に気づかされ、再び人生を見つめ直していく。

 文字だけでは知り得ない、覚醒剤に関わった人の“本当の姿”が「まっ白の闇」では克明に描かれている。

 2017年に製作され、同年12月に日本芸術センターの「第9回映像グランプリ賞」を受賞した同作は、昨年11月に東京で劇場公開された。そのムーブメントは地方にも広がり、今年1月に名古屋でも上映。そして3月9日から22日まで大阪シアターセブン、同23日から4月5日まで横浜ジャック&ベティで公開される。

 覚醒剤の恐怖、どうにもならない現実への虚無感、大切な人が奪われる悲しみ…。ヘビーな連続の末に、ひとすじの希望も感じられる作品。見た人に確実に伝わる“物語”だから上映規模も広がっている。とにかく一度見てほしい、という映画だ。(文化報道・大塚美奈)

  • 映画「まっ白の闇」でダルクの代表を熱演する村田雄浩
  • 映画「まっ白の闇」で薬物依存症の主人公を演じる百瀬朔
  • 映画「まっ白の闇」で幻覚に悩まされ、暴れる主人公を熱演する百瀬朔(左)
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