2018.1.21 11:00

【50歳オッサン記者 新人猟師日記(6)】猪は驚くほど速く鋭い…「気取(けど)られたら負け」

【50歳オッサン記者 新人猟師日記(6)】

猪は驚くほど速く鋭い…「気取(けど)られたら負け」

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新人猟師日記
手前の猪がグループの今季初の獲物。たっぷり脂肪をたくわえた雌だった

手前の猪がグループの今季初の獲物。たっぷり脂肪をたくわえた雌だった【拡大】

 先日、サンケイスポーツ(東京版)にヤクルトの新人合同自主トレの話題が掲載された。ドラフト4位・塩見外野手(JX-ENEOS)が帝京大時代に野球部の練習場が神奈川・相模原市内の山間部にあり、「昼休みに野生の猪を追い回していた」というもので、いかに足が速いのかを伝える記事だった。ただ「卒業までに捕まえることはできなかった…」というオチはつくのだが、当然だ。

 猪は驚くほど速い。先日、100キロ級の猪を逃した話を書いたが、その逃げ足は想像を絶する。ベテランのIさんも「走ってる獣なんか、そうそう狙ってあたるもんじゃないよ」という。

 われわれのグループは今季、まだ猪を捕獲できていなかった。1月14日、いつもの山から少し外れたポイント。ほどなくして、無線にOさんの声が飛び込んできた。

 「狙ったんだけどよ、横っ飛びで走り去っていきやがった」

 「血のり(血痕)はねえか?」

 「多少あるみたい、ちょっと追いかけてみる」

 鹿は体のどこかに当たれば、大抵は倒れる。しかし猪は固い皮に覆われ、その下には分厚い脂肪をたくわえている。前足を貫通しても走り去ったヤツもいると聞く。

 数分後、別のハンターの声で「こっちに倒れていますよ」と連絡が入る。射撃地点から数十メートル離れた地点で息絶えていた。腹部に1発くらっているが、射手の前から走り去ったほどの生命力を改めて感じる。

 40キロほどの雌、これが今季グループの猟で獲れた最初の猪だった。この日は雄鹿と1頭ずつ。しかし、新人猟師は残念ながら、また捕らえられなかった。

 「動物ってのは人間とは比べものにならないくらい鋭いんだよ。“いた”と思って首を回したらもう“気取(けど)られる”んだ。そうなったら負け。力んで構えて“いただいた”と思うときほど逃げられる。ボーッと待っているときの方が獲れる確率は高いかな」

 Hさんの経験談は、いつも勉強になる。確かに…。これまで何度か獣に出くわし、目があったが逃げられる。銃を構えたとたんに走り出す。

 「撃ちたい…」。多分、新人猟師はそんなオーラを出しまくっているのかもしれない。それじゃ、獣に“気取られる”わけだ。(不定期掲載)

芳賀 宏(はが・ひろし)

 1991年入社。オウム事件、警視庁捜査一課からプロ野球のベイスターズ、ヤクルト、NPB、2003年ラグビーW杯、06年サッカーW杯を担当した“何でも屋”。サンスポ、夕刊フジ、産経新聞で運動部デスクを務め、2016年夏から振り出しに戻って、一兵卒。同年に第1種狩猟免許取得。

  • 獣を待つ山の中で滝を発見。地図に出てない景色に出会うことも
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